(番外編)ゼットと彼女

僕は現役自衛官の20歳シゲくん。

初めて僕が買った車はオレンジ色のフェアレディZ(以下、「ゼット」)。

中古だけどボタンを押すと屋根が開くタイプ。

最高にクールだ。

半年間のアメリカ留学(米軍基地での勉強)を終え、

帰国してすぐ僕はそのゼットと出会った。


~~


その半年前、



「半年間だけ行ってくるから待っていてくれよ」


出会ったばかりの年下の彼女に僕はそう言い残しアメリカへ発った。

僕の長期出張の告白を聞いた彼女は沢山泣いてくれた。

当時はラインもない時代、僕らの主な連絡手段はEメールと電話。

当然にお互いパカパカの携帯電話だった。


俺がいない間に他に良い男でも出来て連絡来なくなるんだろうな。

まだ若いし、かわいいし。


内心そう思っていた。


~~



半年間のアメリカでの勉強を終え、やっと日本に帰れる!

ウキウキしながら僕はテキサスからの14時間というフライトを飲みながら過ごした。


半ばべろべろになりながら、成田空港のゲートを意気揚々と出た。


そこに、彼女は立っていた。


髪の毛は染められ茶色になっていて、少しぎこちない感じだったけど、

まぎれもなくそこにいたのは、半年前僕の為に泣いてくれた彼女だった。


本当に半年間待っててくれたのだ。


「ナビないし途中で携帯の充電切れるし、もう大変だったんだからー」

と照れながら言う彼女。


嬉しくて、嬉しくて、言葉が出なかった。


僕はその日に彼女を抱いた。たくさん抱いた。



帰国し、僕はゼットと彼女をゲットした。

そんな満足感に浸りながらゼットの屋根をオープンにし、

風を感じながら最高にクールな車を走らせていた。


俺って最高にクールだ。




そして更に半年後、

僕らは結婚をした。

彼女のお腹には既に新たな命が宿っていた。



ゼット、お前2人乗りだよな。

ゼット、俺、赤ちゃんできたんや、

もうお前には乗ることはこれからできそうにないよ。


ゼットとの生活は短かったが沢山の思い出をくれた。


ゼット、何キロ出るか試したくて無理させたけどさ、

やっぱりちゃんと覆面には捕まるんだな(笑)


ゼット、罰金ってたっけーな(笑)


ゼット、やっぱり車内での〇ックスは狭いな(笑)


ゼットはまだ20歳そこそこのこんな若者を何も言わず包み込んでくれた。



なぁゼット、最後に俺と奥さんとお腹の赤ちゃん乗せて走ってくれよ。


こうして僕はゼットとお別れすることになった。



でもいいんだ。

その代わりに僕は、家族を手に入れたのだから。



ゼットありがとうな。

いつか俺の子供が大きくなったら、

俺、お前をもう1回探し出すからさ、

そしたら今度は、

俺とお前と俺の子供3人でドライブしようぜ。


心の中でそう呟き、

テールランプに手を振った。












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