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『マーケティングの6つの誤り』

Facebook Japan 執行役員の中村淳一さんが、「マーケティング・サイエンスと、マーケターとしてのキャリア形成」をテーマとしたセミナー内で、以下2つの本をオススメされていました。

セミナー内での中村さんのお話が、本質的で大変にシビれる内容ばかりであったこと。また、並んでご紹介いただいた「ファスト&スロー」は以前に既に読了済みで、かつ、自分の中で特に重要と考える書籍ランキングの殿堂入りをしていた良書だったことが重なりまして、迷わず心脳マーケティングを即ポチをしたのが、私です。

まず、この書籍のご紹介を森なりに端的に、ちょっとだけ強引にまとめます。ちなみにこの本が翻訳出版されたのは2005年で、英語版の原著が出版されたのは2003年とのことです。本の内容は、「ここ10~20年のうちに、消費者の生活や考え方って大きく変わったよね。一方で消費者をリサーチする方法って大きく変わってないし、従来のマーケティング手法に則り続けるには限界がきている。結果として企業は、消費者の考え方を十分に理解できないでいると思うんだ。特に従来のマーケティング手法の中でも深刻な問題になるのは、人間の「心・脳・身体・社会」といった重要な要素を、勝手に分断して捉えてしまってることなんですわ。」という内容の書籍です。どうですか。なんだかちょっとおもしろそうじゃあないですか。

示唆に富む内容ばかりで全編がおすすめなんですが、特に「ここだけは絶対にメモをしておく。これから先に繰り返し何度も読み返す。というかもはや暗記する。」と響いた部分がありまして。せっかくなので未来の自分宛てメモとして、ここに残します。以下は書籍の『(第1章)慣れ親しんだマーケティングからの脱却 > (2)マーケティングの6つの誤り』の項目で紹介されていた内容です。

(※ご注意ください※)原文はどうしても少し固めの文章になっているので、あくまで自分宛てのメモとするため、書籍の内容を森なりに意訳をして短くまとめています。以下の『』に括った部分には、僕の意訳が含まれています。もしかすると僕が誤った解釈をしている可能性もありますので、興味を持っていただけた方はぜひ、書籍を読んでください。

マーケティングの誤った理論ご紹介前に述べられていた、導入部分の意訳です。まずこちらをご覧ください↓

『「マーケターは自分たちの思考プロセスが消費者の思考プロセスとどのように影響しあうのか、理解しなければならない」。

この点は以前から指摘されていて、そう信じている人も多い。でも、実行に移されていない。

理由は、組織内に6つの誤った理論が存在していて、その理論によってマーケターの行動が制限されているためである。以下で紹介する誤った6つの理論から脱却し、将来にわたり、有効で新しい考えに心を開く契機として欲しい。』

(誤った理論1)消費者の思考プロセスは筋の通った合理的・直線的なものである

『消費者の意思決定は、合理的である場合もある。一方で実際の意思決定は実はかなり自動的だ。その人の習慣や無意識の作用にもとづいて、その人の社会的、物理的な背景に大きく影響を受けている。

また現実では、人の感情が合理的なプロセスと密接に関わってる。僕たちの脳は感情の処理と合理的な思考、その2つのシステムが相互に関連しあって行動に影響しているんだ。』

(誤った理論2)消費者は自らの思考プロセスと行動を容易に説明することができる

『僕たちの思考プロセスは、全体の95%が無意識のうちに起こると言われている。もっと言えば思考プロセスは混沌としている。記憶や感情、思考、その他の認識プロセスが混在してるものなんだ。マーケターは、消費者自身が簡単に自分の感情を把握して説明できると仮定している。けれども感情って本来は無意識のものなんだ。消費者側からすれば、思考プロセスや感情を自分で言語化して第三者に伝えることは、実はかなり難しい。

意識について補足をすると、「意識とは、行為がなされた後にその行動に意味を授けることである」と言われている。そう語ったのは、心理学を経済学に応用した研究の先駆者であるカーネギー・メロン大学、ジョージ・ローウェンシュタインさんという方だ。つまり僕たちが言語化している意識とは、実は後付けであるともいえるかもしれない。妥当性はあるかもしれないけど、不完全なものなんだ。』

(誤った理論3)消費者の心・脳・体、そして彼らを取り巻く文化や社会は、個々に独立した事象として調査することが可能である

『マーケターは、消費者の心の中で起こっていることや彼らの行動、彼らの周りで起こっている経験を、個別の「バケツ」の中にきちんと分類して理解できると信じてる。さらにマーケターは、それぞれのバケツの中で起こっていることが、その他のバケツの中で起こっていることとほとんど無関係である、と仮定してしまっている。

実際は消費者一人ひとりの中で、心⇔脳⇔体⇔社会の全てが流動的、かつダイナミックにお互いを形成し合っている。消費者を真に理解するには、これら1つずつに焦点を当てるのではなく、4つの要素間の相互作用にこそ目をむけるべきだよね。』

(誤った理論4)消費者の記憶には、彼らの経験が正確に表れる

『マーケターは消費者の脳を、記憶という写真を撮るカメラのような機械装置をみなしてる。さらに、消費者は彼らが見たものを正確にとらえていると思い込んでる。また、消費者自身が「覚えている」と言うことは時間が経過してもそのまま記憶として残り、今日思い出した買い物の経験は、これから数か月後に思い出すものと全く同じ経験だと信じきっている。でも実際の記憶は、僕たちが気づかないところで絶えず変化してる。』

(誤った理論5)消費者は言葉で考える

『マーケターは、消費者の思考がすべて言語化されていると信じてる。なので会話の中で消費者自身が使う言葉や、消費者が質問用紙に書いた言葉をそのまま解釈することで、消費者の思考プロセスを理解できる、と仮定する。でも実際は、それだけでは消費者の思考の全体像は分からない。人々は、言葉では考えない。

実は最近の脳研究や生理学研究によると、僕たちの脳細胞や神経は、僕らが自分自身の思考を言語化する脳の活動に"先立って"起こることが明らになってる。つまり僕たちが自分の思考を意識するのは、脳が、"何を言語化するか?"を決定した後にのみ起こり得るらしい。』

(誤った理論6)企業から消費者にメッセージを送りさえすれば、マーケターの思うままにこれらのメッセージを解釈してくれる

『マーケターは、企業のブランドや製品のポジショニングによって消費者の心に何でもメッセージを送ることができる、と信じきってしまう。消費者の心は何でも書き込める白紙のようなものだと思っている。広告の有効性はその広告をどの程度思い出せるか、その表示方法が好ましかったか、と尋ねることで判断できると考えている。

実際には消費者は、それらのメッセージを受動的に受け取ることをしない。消費者は、企業から発信される情報と、自身の記憶や受信の際の刺激、頭に浮かんだメタファーなどを混ぜ合わせることで、メッセージに自分なりの意味を付与するんだ。』

まとめ

以上が書籍で紹介されていた、「マーケティングの6つの誤り」でした。繰り返しとなりますが、上の6つの項目は、あくまで書籍の内容を参考とした意訳です。ご了承ください。個人的には施策を考える際、自分への戒めとして上の項目をチェックリスト的に使おうと思ってます。

僕はどちらかといえば感情と直感優位で生きている人間でして、消費者側の立場になりきって考えてみると、上の6つの思い込みが表す場面をとても具体的にイメージできます。仲の良い友人からはよく「おまえ、それ言うの5回目だよ」と言われるほどに記憶が曖昧だったりしますし(いつもお手数おかけしています本当にすみません)、僕はチョコミントアイスが好きなのですが、自分がチョコミントアイスを好きな理由を言語化することができません。ただ小さい頃から好きで、深い理由なく美味しいと思うからこそ、チョコミントアイスを食べたくなるのです。チョコミントアイスを買う度にいつも買う理由を言語化していたら、きっとチョコミントアイスが嫌いになります。

さいごに

書籍では6つの項目の解説に続いてこう述べられています。ここは書籍の文章をそのまま引用します。

我々は、時計の仕組みを知るため、もしくは修理をするためにその時計を分解してしまうが、マーケターは消費者を理解する、あるいは変化を与えようとして彼らを個々に分解してはならない。消費者はむしろ複雑な生命体であり、マスメディアにしばしば取り上げられるような意識的なマーケティング操作に単純に反応するのではない。

彼らは、意識と無意識が互いに作用し合う心の影響を受けて行動する。そうした相互作用を第三者が観察することや測定することは難解な作業であり、それを変化させようとすることはさらに困難である。

「分解すべき要素」と「分解できるが、すべきではない要素」の繋がりは、どんな仕事にも共通する重要な点なのだろうなと感じます。例えば整体業では、目に見える痛みや凝りだけではなく、日々の運動習慣や食生活をチェックすることも重要です。理由はすごくシンプルで、日々の運動習慣と体の外から取り入れる栄養素が、結果的にその日の身体を造るからです。

広告運用に置き換えると、広告管理画面の数字は重要な判断基準の1つですが、その数字はあくまで参考にすべき要素な1つにすぎません。大事なのはお客さんのビジネスが伸びているかであって、管理画面で成果を出すことが目的ではない。気を抜くとすぐに「CPAガー...」「1CVガー...」と数字をそのまま言いたくなる気持ちと向き合いながら、今日もインターネット広告と世界に向き合おうと思います。

ちなみに書籍内では消費者の無意識の思考や感情理解を進める方法の一つとして、ZMET調査という方法が紹介されています。こちらもとても興味深い調査方法でして、やっぱりこの本は連休のお供におすすめかもです。

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