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[こぼれ話5]藤森先生と乗った、人生初の恐ろしい乗り物!?

15年続いたこの企画で一番怖かった取材があります。

2010年くらいに、藤森先生から吉阪隆正さんの「黒沢池ヒュッテ」を取材したいとリクエストを受けました。
黒沢池ヒュッテは、新潟・妙高にある山荘です。

おそらく山荘案内か何かがネット検索でヒットしたんだと思います。
それで所有者の方に取材依頼の電話をすることはできました。
でも所有者のUさんは「来るなら雪がある時に見てほしい。それがこの山荘の本当の姿だから」というお返事で、その時にすぐ取材に行くことは断られました。
そして、春先なら山開きに備えて物資を山頂のこの小屋まで運ぶから、その時なら一緒に連れて行ってあげる、というお話。

藤森先生にそう言われたことをお伝えしたら、それならぜひその時にしようとご理解をいただき、2011年春に妙高へ向かうことにしました。

アクセスは、、、人生初のヘリコプター・・・・?

天候によってはいつ飛ぶかわからない、とも言われ、何日も裾野の拠点に泊まるつもりの準備をして現地に向かいましたが、ドキドキして待つこと数時間で、到着した1日目に飛んでくれることになりました。
天候的にはパーフェクトな状態ではなかったのですが、これくらいなら飛ぼうという判断が下されました。

何回かヘリコプターが山頂に飛んで、僕らを山頂に連れて行ってくれる順番が来ました。
藤森先生も下村さんも僕も多少はワクワクしていましたが、乗る前に「降りる時は絶対立たないでください。ローターで首切れちゃうから」と説明を受けると、僕は恐ろしくなって下村さんと目を合わせました。

ヘリコプターが僕らを乗せて飛び立つと、ものすごい不安定な挙動をしました。
パイロットの方は、浮力を得るために山肌に近づきます、と言って、山の壁面に近づいて飛び始めます。
それもまた、ものすごいフンワフンワして怖い。
上下動も相変わらず結構し続けます。
僕も下村さんも「落ちないでくれ〜怖い〜」という感情が溢れそうでしたが、前の席に座っている先生はなんと「イケイケ〜」という状態。
さすがでした。

藤森先生のこのシリーズの取材で、後にも先にもこんなに怖かった取材はありませんでした。

山頂で降りるときは搭乗するときに言われた通り、雪山にうっつぷしてヘリコプターから離れました。
死ぬ思いとはこのこと。

ちなみに妙高に向かう前に、渋谷かどこかでスノーシューを3人分レンタルして行きました。
おかげでヘリコプターから離れる時も雪に埋もれずにちゃんと移動できたのはよかったです笑。

先生以外は必死だった雪山山荘の取材。
「藤森照信の現代建築考」でもこの辺りのエピソードに触れられているので、ぜひお求めいただいて楽しんでいただければと思います。


左が藤森先生、右がパイロット。
山荘の入口も雪に埋まってて、雪かきして入れるようになったみたいでした。
このヘリコプターに乗って山頂に来ました。雪の上に赤いテープで「H」が描かれてました。



「藤森照信の現代建築考」表紙

藤森照信の現代建築考

文=藤森照信、撮影=下村純一 出版=鹿島出版会
2,600円(+税10%)
ISBN:9784306047013 体裁:A5・208頁 刊行:2023年8月

日本のプレ・モダニズムからモダニズムへの流れを、ライトから丹下健三、そして現代の第一線で活躍する建築家たちの作品を通して概観する。
明治初期に開拓した日本の建築という新しい領域にモダニズムが如何にして浸透してきたのか。日本の建築界は近代という激変の時代に、コルビュジエやバウハウスの影響を受けながらも対応してきた。時代を代表する建築家たちの45作品を通してその特質を考察する。

目次

まえがき:藤森照信

Group 1 モダニズムに共通する住まいの原型をつくり続けた建築家たち
ウィリアム・メレル・ヴォーリズ、フランク・ロイド・ライト、アントニン・レーモンド

Group 2 戦後の日本建築界をおおいに豊かにした建築家たち
本野精吾、村野藤吾、堀口捨己、今井兼次、白井晟一

Group 3 造形力、力動性と民族性、記念碑性を接合させたコルビュジエ派の建築家たち
前川國男、谷口吉郎、吉村順三、奥村昭雄、内田祥哉、丹下健三、片岡献、松村正恒、池辺陽、ジョージ・ナカシマ、吉阪隆正、浅田孝、ほか

Group 4 戦後モダニズムにおけるバウハウス派とコルビュジエ派の建築家たち
大高正人、菊竹清則、磯崎新、黒川紀章、仙田満、山崎泰孝、象設計集団、伊東豊雄、内藤廣、高松伸、藤森照信、ほか

取材後記 ─ あとがきにかえて:下村純一


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https://kajima-publishing.co.jp/books/architecture/v2t7-5ee3c/


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