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東京都の新規陽性者数の動向 第7波? 今後注視すべきこと

 1/1~3/31の東京都の新規陽性者数の動向です。図の左は1/1~3/31の東京都の新規陽性者数の7日移動平均、右が年代別新規陽性者の移動平均(年代別人口で標準化)のグラフです。年初の増加よりはゆっくりですが、増加傾向が始まっています

 次のグラフで、ここ10日ほどの詳細を見てみましょう。グラフはここ11日間の年代別新規陽性者の変化です。高齢者の陽性者がまだ少ないので、右に0~50代のグラフと60代以降のグラフを分けて記載しました(こちらは片対数)。20代が突出して増加傾向にあるのがわかります。多かった10歳未満は春休みに入ったためか少し落ち着いてきているようにも見えますが、10歳未満も他の世代と同様に20代に数日遅れて、ゆっくりと増加に転じていると考えます。20代から始まって他の世代に広がるというのがいつもの傾向ですので、今後注意が必要です。大きな波にならないことを願っています。

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 増加の原因としては、①感染力のより強いBA.2への置き換わり(2週前に38.5%、今はおそらくく50%以上)、②行動抑制の解除、③年度末の様々なイベントが挙げられます。

 年始には急速に陽性者数が増加しただけではなく、高齢者を中心に重症者、そして死亡者が増えました。その一因には「高齢者へのワクチンの遅れ」があるのではと私は考えていますが、入院数、重症者数、そしてワクチン接種の現状はどうでしょうか。

 下に示す図表は東京都のホームページから取ったものです。検査の陽性率が31.9%と高いことは気になりますが、入院数、重症者数は今のところ横ばい~減少傾向です。ここが増えなければ、あるいは許容範囲内であれば、医療崩壊する可能性は低くなります。経済に悪影響を及ぼす強い行動抑制には反対ですが、高齢者の重症者を増やさないことは必要です。コストの少ないマスク着用などの基本的な感染防御策を続けて全体数を抑えることがまず大事ですが、重症化を防ぐワクチン接種ももうひとつの大きな柱となります。さて、下の表を見てください。三回目の接種率は70代、80代で80%を越えました。できれば50代、60代も80%を越えてほしいし、40代の低さも気になります。さらに若年世代の接種は?私は現実的には接種率の向上はなかなか難しいかなと思っています。オミクロン株に対する中和抗体で示されるワクチンの効果は低下し、感染予防効果は減少しているものの、重症化に関連するT細胞の反応は比較的保たれており、またreal worldのデータでも重症化予防効果に関しては明確に示されています。今後、重症者の感染者に対する割合が、高齢者のワクチン接種によって年初の波より低下するか、注目しています。

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 下記に前記事のリンクをお示しします。

 さて、オミクロン株では重症化しにくいとは言われていますが、心配していることがいくつかあります。
1 オミクロン株は重症化しにくい(肺炎を起こしにくい)が、若年者で、軽症でも後遺症があること。
 実際、私も外来で複数の患者さんを診ています(高学年の小学生で咳や味覚障害が1~2か月以上続いています)。
2 小児科の臨床の現場で、コロナにより発熱→熱性けいれんクループ症候群など一定の医療行為が必要な患者さんが増えていること
3 BA.2で小児の重症者が増えているという米国の報告がでてきたこと(査読前論文)
入院児の致死率:オミクロン株>他のSARS-CoV-2株、インフルエンザ、パラインフルエン
PICU入室率:オミクロン株>他のSARS-CoV-2株、インフルエンザ神経学的合併症:オミクロン株>インフルエンザ、パラインフルエンザ
クループ:オミクロン株>他のSARS-CoV-2株、インフルエンザ

 今後のデータの蓄積を待ちたいですが、それによっては小児におけるワクチンの必要性が変わってくるかもしれません。

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