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COVID-19ワクチンについて

現時点でのCOVID-19ワクチンについてのまとめを掲載します。日本感染症学会 ワクチン委員会のCOVID-19 ワクチンに関する提言(第 2 版)をもとに、他のデータや私の考えを加えました。わかりやすくするために、あえて詳細を省いたところもありますが(たとえば各ワクチンの詳しい原理や詳細、今承認待ちのワクチンの情報などは書いていません)、ご容赦ください。

まとめてみて実感したのですが、医師の観点からは接種しない理由がほとんど見当たりません。ゼロリスクはあり得ないし、漠然とした不安のある方も多いと思いますが、ぜひお読みください。そのうえで決めていただければいいと思います。ネットでは「遺伝子が改変される!」などトンデモ情報も飛び交っておりますのでご注意を。だれが、どんな資格で、どんなデータに基づいて記載しているか、確認することをおすすめします。

参考までに
COVID-19ワクチンに関する提言(第2版)

1 使用実績
現時点で、少なくとも 1 回の接種を受けた人は、世界で 1 億人を超えた

2 効果
・有効性は高い たとえば、ファイザーとモデルナの mRNA ワクチンでは、第Ⅲ相臨床試験で有効率 90%以上(発症リスクが10分の1以下)
参考:インフルエンザワクチンの65 歳未満の成人での有効率が 52.9%

・臨床試験でファイザー、アストラ、モデルナのワクチン接種群では重症者が少ない。減少は明確であると考えられる。

・ただし75 歳以上では臨床試験の対象者数が比較的少なく評価が不十分。高齢者ほど抗体産生が少ない可能性はある→現在多数の接種が行われているので、近々信頼できるデータがでてくるだろう

・アジア系の臨床試験対象者が比較的少なく、効果、副反応の人種差に関しては情報がなく、今後の観察が必要

・防御免疫が維持される期間に関してはまだ評価できていない

・2回接種で高い抗体価が誘導される(1回接種でもそれなりに抗体が産生される)。一回接種だけでよい製品も出てきている。

・臨床試験ではなく、real worldのデータでも、発症予防、重症化予防ともに効果があることが示されている(イスラエルの多数の解析データで、ワクチンを接種したグループで、発症が94%減少、重症化が98%減少)。

3 変異株について
・イギリスの変異株では、ファイザーのワクチンによる抗体の中和作用は若干減少するが、有効性に大きな影響はない

・ブラジルの変異株では、ファイザーのワクチン 2 回接種後に誘導される抗体の中和活性は、幾何平均で 3.4 倍劣るので、影響がある可能性はある

現行ワクチンが効かない変異株の出現はありえるので、要注意

・しかしながら、mRNAワクチンはその製造の原理上、変異株にすぐ対応できる(実際イギリス変異株などに対応するワクチンはすでに開発されている)。ただし、安全性は再度検証が必要

・変異は感染者が増えるほど(ウイルスが多数複製され、複製エラーが起こるほど)起きやすいので、今のうちに早くワクチンを可能な限り多数の人に接種することがすすめられる。

・接種が進んだとしても、引き続きマスク、Social distancingなどは必要。いきなり宴会ができるわけではない。

4 有害事象/副反応
・副反応で多いのは接種部の痛みだが、1~2日で消える

・肺炎球菌ワクチンと痛みの頻度は同等かやや多い

発熱や倦怠感の頻度は高い。たとえばファイザーでは二回目接種後に38度以上が10~17%(インフルエンザは1~4.2%)

重篤な有害事象はまれ。ファイザー、モデルナ、アストラのワクチンで対照群と差がない

・日本での試験でも副反応は同程度(ただし試験数が少ない)

・少なくともCOVID-19 で重症化するリスク>>ワクチンの副反応のリスクであり、接種は強く推奨される

アナフィラキシーについて
・アナフィラキシーの頻度は、ファイザーが 100 万接種あたり11.122、モデルナのワクチンで 2.523と少ないが、すべてのワクチンでの 平均値の1.3124に比べると少し高い(ただし抗生物質や湿布も含めた鎮痛剤でのアナフィラキシーは1000人に1人のレベルであり、ワクチンではけた違いに少ないといえる)

・アナフィラキシーの中でも重篤なアナフィラキシーショックは現時点では1例の報告のみ(今後報告が増える可能性はあるが、多くとも数例以下であろう)

・mRNAワクチン(ファイザー、モデルナ)によるアナフィラキシーは女性に多い。成分のPEGなどが薬剤や化粧品などにも入っているためで、化粧品などで強いアレルギーが出たことのある人は要注意

・副反応ではなく有害事象としての死亡報告はあるが、今のところ因果関係なし(たとえば、接種したあとにたまたま脳卒中になった場合、もともと重病がありその疾患のため亡くなったが、たまたま時期が重なっただけの場合なども有害事象として報告される。マスコミはここを間違えて、あるいは意図的?に「予防接種で」と報道する場合がある。かつてヒブワクチンなど複数ワクチンの同時接種時に偶然他疾患で死亡した件を某大手メディアが「予防接種で」と報道し混乱を招いたことがある。本当は「予防接種を行った後に」が正しく、多くが偶発的であり因果関係はない)

・長期的な有害事象の観察の必要性
新しく導入されたワクチンなので、数年にわたる長期的な有害事象の観察が必要

・ワクチン関連疾患増悪(vaccine-associated enhanced disease, VAED)、抗体依存性増強(antibody-dependent enhancement, ADE)に要注意だが、今のところ(1億人以上接種された現時点で)出現していない。動物実験でも否定的。ただし、長期の観察は必要。

参考:メディアなどでは有害事象、副反応、副作用などの言葉が混同されている。「有害事象」は接種後に起こった症状すべてを表すので、偶発的に(必ずしも接種しなくても)起こった症状も含まれる。心筋梗塞は毎日多数の人に起きているが、偶発的にワクチン接種のタイミングで起こることは確率的にあり得ることであり、因果関係を証明するものではない。因果関係が明白に疑われるもの、接種していない場合より統計学的に有意に高い頻度で起こっている場合に真の副作用である可能性が高くなる。たとえば、「10万人の人に接種して、その中の11人が心筋梗塞になった」と仮定して、同期間に接種していない10万人のうち10人が心筋梗塞になったのであれば、この二つの事象には統計学的有意差はなく、ワクチンとの因果関係は否定的となる。

5 優先接種対象者
ここは箇条書きです。
1. 医療従事者等への接種
2. 65 歳以上の高齢者
3. 高齢者以外で基礎疾患を有する者、および高齢者施設等(障害者施設等を含む)の従事者
ここはまだ検討の余地があると思います

優先接種の対象となる医療従事者
1. 病院、診療所において、COVID-19 患者に頻繁に接する機会のある医師その他の職員
2. 薬局において COVID-19 患者に頻繁に接する機会のある薬剤師その他の職員
3. COVID-19 患者を搬送する救急隊員等、海上保安庁職員、自衛隊職員
4. 自治体等の COVID-19 対策業務において COVID-19 患者に頻繁に接する業務を行う者

優先接種の対象となる基礎疾患
以下の病気や状態の方で、通院/入院している方
① 慢性の呼吸器の病気
② 慢性の心臓病(高血圧を含む)
③ 慢性の腎臓病
④ 慢性の肝臓病(肝硬変等)
⑤ インスリンや飲み薬で治療中の糖尿病または他の病気を併発している糖尿病
⑥ 血液の病気(ただし、鉄欠乏性貧血を除く)
⑦ 免疫の機能が低下する病気(治療中の悪性腫瘍を含む)
⑧ ステロイドなど、免疫の機能を低下させる治療を受けている
⑨ 免疫の異常に伴う神経疾患や神経筋疾患
⑩ 神経疾患や神経筋疾患が原因で身体の機能が衰えた状態(呼吸障害等)
⑪ 染色体異常
⑫ 重症心身障害(重度の肢体不自由と重度の知的障害が重複した状態)
⑬ 睡眠時無呼吸症候群

・基準(BMI 30 以上)を満たす肥満の方

他に、気管支喘息の中等度から重症の場合(ただし気管支喘息はリスクとはならないというデータもある)

6 接種部位と接種方法
一般的には成人では肩峰から約 5cm下(ここは文献により10~12㎝との記載もある)、標準的には 22~25G、長さ 25mm の注射針で、皮膚面に 90 度の角度で注射する。非利き腕が望ましい。mRNA はおもに筋肉細胞でタンパク質に翻訳されるため、筋肉内に確実に到達することが必須。針の長さはやせた人では 16mm、体重 70kg 以上では 32~38mmも使用できる。逆流は確認せず、また接種部位を揉まない。接種後は最低15分、アレルギーの既往者は30分、観察する。

発熱・疼痛の出現する前にあらかじめ解熱剤、鎮痛剤などを内服しておくことは望ましくない

ご参考までに。私はアナフィラキシー既往者(他の薬剤で)なので、念のため抗ヒスタミン薬を接種前に内服するつもりです。

以上です


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