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災害におけるアレルギー疾患の対応(その2)

アトピー性皮膚炎への対応

厚労科研小林班の研究プロダクト「災害におけるアレルギー疾患の対応」の解説記事その2です。 今日はまずアトピー性皮膚炎の災害時の対応について。

アトピー性皮膚炎への対応

避難所はきれいな環境とは言えませんし、肌を清潔に保つのは難しいかもしれません。可能であれば、毎日シャワーや入浴ができればいいですね。もし石鹸がなくても、水だけでも効果はあります。ただ、実際にはシャワーが使えない場合が少なくないでしょう。熱すぎないないお湯で濡らしたタオルで、優しく押しふきをしましょう。後でも出てきますが、ペットボトルを使ってシャワーを代用できるキャップも100〜200円で買えます(自作もできます)。

アレルギーをお持ちの方々へのアンケート調査では、災害が起きると心配なこととして、アトピー性皮膚炎の悪化を挙げた方は考えていたほど多くありませんでした。しかしながら、災害の経験がある方に実際に困ったことを尋ねると、皮膚症状の悪化を挙げる人が少なくありませんでした。平時には想定しにくいことなのかもしれませんね。そこで、行政向けの資料にはアトピー性皮膚炎を想定した対策の必要性を、患者さん向けパンフレットには、外用薬の備蓄などの自助を啓発する内容を記載しました。

市販のウェットティッシュは便利ですが、香料やアルコールなどの成分で肌が荒れる場合もあります。いつも使っているものがあればそれを使うといいと思います。そうでない場合は、肌の一部で試してから使用してください。

避難所では皮膚炎が悪くなりやすいということを認識しておいた方がいいです。災害時には、いつもの軟膏がない場合でも、とりあえずはあるものを使うという割り切りも必要かもしれません。顔面や陰部などはあまり強いステロイドは使ってはいけませんが、体の他の部分は多少強い軟膏でも短期間なら大丈夫です。いつもは腕にロコイド軟膏を使っている場合でも、一時的にはリンデロンで代用して構いません。たとえ強い軟膏を使ったとしても相当長期間使わない限り、副作用は心配いりません。保湿剤は市販のものでも問題のないことが多いです。災害時にはあるものを使用しましょう。ただし初めて使うときは一部の皮膚で試してください。

肌にあるかゆみを感じる神経は、温度が低くなると働きが鈍ります。かゆみがひどい時は、かゆい部分を冷たいタオルなどで冷やして、皮膚温を少し下げると良いでしょう(キンキンに冷やす必要はありません)。また、遊びや本、会話などで、かゆみから気をそらすことも大事です。避難所が寒い時は冷たいタオルを使用すると体が冷えすぎますので気をつけてください。

避難所では眠りが浅くなりますので、寝ている間に肌を掻いてしまうことが多くなるかもしれません。掻くと皮膚は悪化します。可能であれば爪を切るなどして、皮膚炎の悪化を防ぎましょう。また、抗ヒスタミン薬があれば、積極的に使って構わないと思います。

食物アレルギーへの対応

次は食物アレルギーへの対応です。避難所で誤食事故のないように、遠慮せず前もって担当者に伝えておきます。担当者が対応しやすいように、今回の資料の中にある行政担当者向けのパンフレットを、渡しておくと良いでしょう。また、今回の資料にあるそなえるブックの活用をおすすめします。

食物アレルギーへの対応

避難所では、提供される食品のアレルギー表示を必ず確認しましょう。鶏卵、乳、小麦、ピーナッツ、そば、エビ、カニは原材料に表示されますが、他の食品は必ずしも表示されないことに気をつけます。

炊き出しの場合は、必ずしもアレルギー表示はされていませんが、だんだんとアレルギーに対する知識が普及し、表示されるようになってきました。とはいえ確認することは大事です。今回の他の資料で、行政の方や医療従事者の方には、食物中のアレルゲンの表示に注目するように啓発しております。行政にはアレルギー表示のための資材も準備してほしいですね。今後、災害支援中のアレルギー表示がもっと充実することを期待しましょう。

他の方から食べ物をもらうことがありますが、なかなか断りにくい場合もあります。でもアレルギーがあることはしっかり伝えて、内容を確認しましょう。親切な方が、子どもにお菓子などを与えてくれることもありますが、子供には必ず親に確認してから食べるようにいつもから言っておきましょう。胸に食物アレルギーありと書いたシールを貼る、ゼッケンをつけるなどして、周囲に食物アレルギーがあることが伝わりやすいようにしておくと良いです。今回の資料には、ゼッケンもありますので、ぜひご活用ください。

もしアレルギーの原因食物を食べてしまった、あるいは食べてしまったかもしれない場合は、症状が軽かったら、アレルギーの症状を抑える薬をまず飲みましょう。症状が強い場合、あるいは以下のような症状が1つでもある場合は、スタッフに直ちに知らせ、救急車を呼び、エピペンを使います。エピペンを使うか迷ったら?迷ったら使ってください。

緊急性の高い症状
繰り返し吐き続ける
持続する強い(がまんできない)お腹の痛み
喉や胸が締め付けられる
声がかすれる
犬が吠えるような咳
持続する強い咳
ぜーぜーする呼吸
息が出にくい
唇や爪が青白い
脈を触れにくい、不規則
意識がもうろうとしている
ぐったりしている
尿や便を漏らす

食物アレルギーの症状がでたときは

エピペンをお持ちの方は、普段から主治医と相談し、どんな場合にエピペンを使うか、繰り返し話をしておくことが必要です。この13の症状が書いてあるパンフレットを印刷しておいて、非常持ち出し袋の中にいつも入れておくといいです。またエピペンをいつでも打てるように、普段から練習用のエピペンで、家族みんなで練習しておきましょう。

さて、次の「災害におけるアレルギー疾患の対応(その3)」は、「アレルギー疾患がある方が災害時にすべきこと」のポスター、さらに、その4、その5の 「アレルギー疾患のための災害への備えと対応」に続きます。

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