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In Concert, Zurich, October 28, 1979 / Chick Corea & Gary Burton ビブラフォンの魅力

 かつてWashington D.C.の近くに住んでいたころ、GeorgetownにあるジャズクラブのBlues Alleyによく行ってました。McCoy Tyner、Elvin Jones、Wynton Marsalis、Eric Reedなどのライブをほんの数メートルのところで楽しむことができました。しかもテーブルチャージは高くても30ドル程度。日本では考えられないことですね。

 ある時、友人が一度ジャズクラブに行ってみたいと連絡してきました。「じゃあ、今日いこうか」って話になって早速電話しました。「どう、今日のライブあいてる? <--  一応その時は英語で」「ひとつだけ空いてるよ、キャンセルが出たんだ。おまえ、ラッキーだよ、今日はGiantsだからね」「えっ、誰?」「△×○さ」「何々?聞こえないよ」「だから◎▽□だって」。う~ん、まわりがうるさくてどうしても聞こえない。さて、期待しながら行ってみると・・・えっ、Chick Corea & Gary Burton!もう友人のことなんてすっかり忘れて、入り口まで走ってました。しかも、テーブルはステージのまん前!

 さあ、わくわくしながら待っていると・・・なんとGary Burtonがこちらに近づいてきて、気さくに話しかけてきました。「どっから来たんだい?」「えっと、Marylandから・・・」、僕はもうあがりまくって「日本から」って答えればいいのに、その時住んでいた場所を思わず答えてしまいました。

 そんなわけで、今日はChick Corea & Gary Burtonのデュオアルバム「In Concert」をご紹介します。Chick CoreaはReturn to Foreverで「フュージョン現象」の嚆矢ともなった有名なピアニストですが、その後もジャズの枠を超えて数々の名作を残しています。彼の超絶テクニックと個性的なフレーズに魅了された方も多いでしょう。Chickはいろんなミュージシャンと共演していますが、その中でもビブラフォン奏者のGary Burtonとのデュオの演奏は最高です。この二人の音の絡み合いといったら、どう表現したらいいのでしょうか。硬質ではあるけど、美しく澄んだ音の洪水に最初は圧倒されますが、だんだんと心が洗われて身をまかせてしまいます。スローテンポでもアップテンポでも隙がなく、二人の演奏が清流のように一体となって聴くものの心に到達します。In Concert は1979年チューリッヒでのライヴの録音で、以下の8曲が収録されていますが、どれもいいですよ。リンクした動画は、このアルバムのものではありませんが、いちばんお気に入りの曲、Bud Powellです。

Senor Mouse
Bud Powell
Crystal Silence
Tweak
Falling Grace
Mirror, Mirror
Song To Gayley 
Endless Trouble, Endless Pleasure

 さて、ライブの話に戻りましょう。CDで聴いている時は緊張感がありましたが、実際に目の前でみると・・・時折目を合わせて微笑みながら実に楽しそう。こちらも自然とリラックスして最高の夜を楽しむことができました。CDとはまた一味違います。やはりライブはいいですね。ライブが終わった後は、Chick Coreaがステージからおりてきて、話をすることができました。「僕はずっとあなたのファンなんですよ。」「そうかい!」。またまた緊張しまくっている僕にChickはニコニコしながら握手してくれました。いい思い出です。残念ながら、Chick Coreaは2021年2月9日に亡くなりました。もうライブを見に行けなくなってしまいましたね。

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