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こじらせ女が宅飲みをすると

こんにちは。Rinです。
かつてこじらせていた自分を忘れないためにnoteを書いています。
今日は大学時代の宅飲みで斜に構えた考え方をしていたかつてのこじらせ女(私)について書いていきます。

私は大学時代、バドミントンサークルに入っていました。
高校とは違い、男女の垣根のない大学生活に足を踏み入れますと、そこは夢ある桃源郷。古今東西を男女グループが埋め尽くします。
桃源郷に数ある男女グループのうちの一つに、私も入っておりました。
それがバドミントンサークル、通称バドサーです。

私たちの代は他の学年に比べ、男女の境目がほとんどなく、グラデーションとなっていると言っても過言ではありませんでした。男、女っぽい男、男っぽい女、女。
合言葉は『男女の友情が成立しない、わけがない』。
とても、仲良しでした。

安くて油っぽい匂いのする大学近くの居酒屋で飲むことはもちろん、お金があまりない大学生、宅飲みをすることも多かった。八人くらいで寂れたスーパーへ赴き、今考えれば面白くもない身内ネタでゲラゲラ笑いながら、カゴの中にポテトチップスをいれ、2Lの水をいれ、宝石のように輝く色とりどりのチューハイ缶を買いそろえ、お酒を買うことが出来るようになった高揚感にまずは酔いしれます。
今考えれば面白くもない身内ネタにまたもや花を咲かせ、もと来た道をゆったりと戻る。大学生の狭いアパートの部屋に腰を落ち着かせ、カンパーイ、と缶をお互いにぶつけあえば、宅飲みが始まります。

最初は楽しいんですよ、最初は。みんなで馬鹿みたいに騒いで、馬鹿みたいにどうでも良いことで阿呆みたいに笑い合う。下劣な笑い声も人口密度の高い狭いアパートで聞くと、春うららかな朝のうぐいすのさえずりのように聞こえるのだから本当に不思議です。
宅飲みがおかしくなるのはお酒が回ってきた2nd Round。開始から一時間半、ゴーンとゴングの鳴る音が聞こえると同時に、彼らはだんだんおかしくなってきます。
「俺らが恋愛関係になることは絶対無いよな~お前ら女じゃねえもんwwwwwwwww」
となぜか自慢げに吹聴していた男や、
「あんたらみたいな人を男として見れる訳がなくない?wwwwwww」
と男を見下していた女に、とても面白い変化が現れるのです。

感覚神経の鈍化、語彙力の著しい低下、理性の崩壊。
そして男女の境目が明確になる瞬間を、私は目にするのです。
オスの目をした男と、メスの目をした女。私たちは文字通り、生物に成り下がるわけです。
私はこの現象を、心の内で『スワンプマン現象』と呼んでいました。

スワンプマンとはなんぞや。
簡単に説明すればスワンプマンとは「『沼に落ちて死んだ自分と同じ姿かたち・思考・記憶を持った別の人間が沼(スワンプ)から這い上がってきたならば、それは自分の分身ではなく、自分自身だと呼べるのかどうか』という思考実験のこと」です。

この飲み会で繰り広げられる『スワンプマン現象』は、「飲み会のアルコールという沼に溺れた男女と同じ姿かたち・思考・記憶を持った男女が2nd Roundで姿を現す」という意味です。それは彼らの分身か、それとも彼ら自身か。

私は、スワンプマンという思考実験と飲み会の男女が似ていると思いました。どちらも沼に溺れて、新しい人間が顔を出す。その友人そのものではあるけれど、いつも私が見ている友人たちは死んでいる。はてさて、どうでしょう。

オスの顔を出した男と、メスの顔を出した女は、必ず恋愛の話を始めます。
好きなタイプがどうとか、付き合ったらこういうデートが理想とか、特に女は「私は全然割り勘でも大丈夫だしなんならサイゼでも満足ダヨ💛」とか言い出すし、特に男は「男が奢るのは常識だよな~💦俺は絶対に奢るタイプかも」とか言い出します。
マジどうでも良い。友達の恋愛傾向とかどうでも良い。興味ない……。
私は知っています。同族しかいない時にはかなり辛辣に異性を評価していることを。

女子会での女は最恐です。女の私でも怖い。女子会の女に怖いものなし、恐怖の底なし沼。男をこれでもかというくらい、こき下ろしています。(もちろん、すべての女子会がそうというわけではないです。が、基本的に女は結構辛辣☆です。)
「最近付き合った彼氏が、2500円”で”いいよ、とか言ってきてキモイ。普通に奢れよ」「彼氏がこのあいだあくびしててなんか冷めた。そんなマヌケな顔晒して良い相手って思われてるのが腹立つ」「プレゼントがデパコスじゃなくてドラッグストアに売ってるアイシャドウパレットだった。グーグルで調べるってこと知らないのかな?」「夜が下手くそ過ぎて無理。性欲持て余したチンパンジーかよって思った」
辛辣です。聞いているこっちが「まあまあ……」と男性援護に回るくらいには、辛辣です。
でもそれは、男も同じなのではないでしょうか。女には言えないどぎつい下ネタや妄想話で盛り上がったり、女の体を勝手に評価したり、抱いた女の乳首の色で笑いあったりしているはずです。

私はこじらせていましたから、そういうのが全く理解できなかった。
恋愛対象じゃない男に媚びうってどうすんの?
そういう態度が周りの女たちを敵にまわしちゃったらどうすんの?
「あいつ可愛くないし、サークルの奴らはみんな友達だから恋愛対象じゃないとか言うくせに、この間の飲み会でめっちゃ女出してたよね(笑)」そんなふうに言われるに決まってる。
私は絶対にできないし、しない。
でも実際、飲み会で女を出せる女はモテるし、男を出せる男もモテるのです。

私は25歳になって思います。
こじらせていない人たちってたぶん、可能性を考えているんでしょうね。口では無理と言いつつ、友達が恋人になる可能性。友達の友達に良い人がいる可能性。今は全く恋愛対象外だけれども、将来再会したときもしかしたらどうにかなるかも、という可能性。
こういう可能性を考えていた友達は、マッチングアプリで素敵な恋人に出会う可能性にも懸けられるし、合コンで良い人に巡り合える可能性にも懸けられるし、電車で目の前に座っている男性が恋人になってしまう可能性にも懸けられます。

実際、誰も言わないのです。
「アイツ女出してたよね」とか「アイツの目ぎらついてたよね」とか、言いません。だって、飲み会にいる七割、八割の男女が本能むき出しにしてるんだもん。飲み会中の女は無意識的に色っぽくなるし、飲み会中の男は無意識に女に優しくして気遣いを忘れないんだもん。
何より、「あの時酔ってたから覚えてない」って、お酒のせいにできるんだもん。

こじらせている女は、つまり私は、友人たちのように「女」を出したかったくせに、自分に自信がないがゆえに「女」を出せず、そのせいでモテないのに「あんなふうに分かりやすい女に引っかかるなんて男ってバカだよね」と俯瞰して、自分が傷つかないようにしていただけだった。本当はお酒のせいにして私も女を出したかったのに素直になれず、あんな女になりたくないと思わないと、もはや立っていられないほどこじらせていたのかもしれません。

同じ学年同士で付き合った友人がいます。もう聞き飽きたわ頭の良いオウムかよ、というくらいに、いつ何時でも「友達とは恋愛できないし~」とほざいていた二人でした。
付き合った後、「こいつムリ」とか「友達とは恋愛できない」とか言っていても、友達だからこそ良いところも悪いところもわかっているから案外一番いいかも、と言っていました。

こじらせる女(私)って、たぶん、俯瞰しちゃうんだと思います。飲み会の場にいるはずなのに、盛り上がっている飲み会を神の視点で頭上から見下ろしてしまうのだと思いました。
そういう視点ももちろん大切だし、物事を考える上では冷静な判断ができそうですが、恋愛にはあまり必要ないものかもしれません。

飲み会2nd Roundのゴングが鳴るとやってくる私のスワンプマンは、性格の悪いこじらせ女、だったのでしょう。
今ではそんな私のことも、なかなかひねくれていて可愛いなと思えます。

いつか、こじらせた女と男だけで宅飲みをしてみたら、なんていう映像をみてみたいです。巷の恋愛リアリティーショーよりも面白い複雑な心理戦が見られるんじゃないかと思います。




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