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障がい児保護者支援啓発フォーラム2021【後編】

このnoteは、認定NPO法人ペアレント・サポートすてっぷさんが2021年3月28日に実施した「障がい児保護者支援啓発フォーラム」のアーカイブ動画のサマリーです。

前編noteはこちら

セッション2:法人スタッフが語る1年間の活動とこれからの活動紹介

このセッションでは、ペアレント・サポートすてっぷメンバーから1年間の活動報告とこれからの活動紹介を3部構成で行っています。

■高梁川流域障がい児保護者支援事業

①相談支援ファイル実施者養成講座
相談支援ファイル「かがやき手帳」の書き方講座を実施できる人を増やすことで、より多くの保護者と支援者が相談支援ファイルをうまく活用できるようにします。

②出前茶話会
笠岡市と新見市に出向いて、保護者同士のおしゃべりの時間を通して「1人じゃない」をつくります。

③オンライン草の根講座
コロナ禍でオンラインに切り替えた支援者向けの研修で、参加した職員さんの障がい児への理解や活動への意欲が向上する成果が出ています。

■保護者支援指標アンケート結果共有

ペアレント・サポートすてっぷが目指す5つの指標に関して定点観測するアンケートを実施。その結果を共有しています。

《5つの指標》
・子どもだけでなく自分のことも大切にできること
・子どもと向き合えていること
・自分の考えや意見を持てること
・自分の意見を他の人に伝えることができること
・子どもの障がいのことを周囲が理解していること

その他、利用者さんにとってうさぎカフェとはどんな存在か、5つの指標に対して各事業がどのように対応しているか、などについて整理されています。

■これからの活動について

今後は「かがやき手帳」のアプリ開発やハンドメイドオンラインショップ開設に取り組んでいかれます。

服のリフォームに関して、障がいをもつ子が使いやすいようなボタンの付け替えが必要で、その作業代行に付加価値があるという話は「なるほどなぁ」と思いました。


セッション3:竹端寛先生と理事長・安藤のトークセッション

このセッションでは、「子育てから自分育てへ-自分の軸を取り戻すために」というテーマで、竹端寛先生(兵庫県立大/無理しない地域づくりの学校校長)と安藤さんがクロストークします。

■親の価値観に押しつぶされる、子どもたち。

子どものことに関して発言権を一番持つべきは子どものはずなのに、”障がい”となった途端、特殊な子育てになって、専門性のある人の発言権が高くなってしまうそうです。

一方で、親が自分のできなかったことを子どもに託し過ぎる(押しつけてしまう)子育ては障がい有無関わらずよく見られます。この点から竹端先生は、

子育て支援において、障がいの有無はどこまで関係あるのか。

という問いを投げます。障がいの有無というより、親がそもそも真面目な性格で、「障がいをもつ子どもの育児」がその真面目さをより前面に、より自分を抑圧する要素として累積してしまっているのではないかと。

子どもは親の期待に応えようとしますが、(健常児と比べて)障がい児は自分のかたちを変えることが難しいので、それが負のスパイラルに陥ってしまう場合も。

■親もまた、他者の期待に応えようと生きる。

その親たちは何に雁字搦めになっているのでしょうか。そこには、

「人並み=世間並み」という同調圧力

があるのではないかとお二人は話します。ただでさえ、近代家族像にしかモチーフがない私たち。メディアがつくる(過去はそうだったかもしれない)理想像を目指してしまったり、社会で流布されているものに少なからず影響を受けています。

他者から期待された”人並みの成績”の評価対象とはすなわち、子どもの状態です。しかし、自分の成績が子どもという”コントロール不能な他者”によって決められてしまう構造的罠が、そこにはあります。その構造の中では、コントロール不能なものをコントロールしようと頑張り過ぎてしまいます。

■それでも、迷惑はかけられないと思ってしまう。

誰かに支えてもらいながら「あなたはここに居ていい」と承認されることと、迷惑かける/かけないは(本質的には)別の話であるにも関わらず、「迷惑をかけてはいけない」が先行してしまうことはままあります。人は迷惑をかける生き物であるはずなのに、迷惑をかけないように、悪目立ちしないように生きているのではないか、とお二人は指摘します。

そして、悪目立ちしないようにの”悪”とは、たまたま特徴的な子どもの性質が社会的に良いと仕分けされているもの(勉強や運動など)に「GOOD」、社会的にダメだと仕分けされたものに「BAD」を当てられているに過ぎないと竹端先生は付け加えます。

■社会のキャパシティが狭いと、発達障がいは増える。

子どもの特性に対してどのような言葉を当てるか、すなわち障がいとは何のかを決めているのは、社会のキャパシティが関連しています。

社会のキャパシティが広いと、それは「個性」と言われ、
キャパシティが狭いと、それは「障がい」と定義される。

と安藤は言います。お二人とも、社会の許容力の低下について、みんなが色んなことに許せなくなっていると言及します。そしてそれは、個人の問題ではなく、社会の側から追い込まれている結果として生まれていると。

情報が取得しやすくなったことで、個人と社会の基準が近くなったことも影響していると言えます。Twitterで発信された誰かの言葉が、まるで社会全体の様相を表しているように感じてしまいますよね。

■どうすれば、自由になれますか?

ここまで、親と子の関係性には、(親子関係の外にある)社会の側から追い込まれている要素が潜んでいることをまとめてきました。子育てにおいて、子どもが社会化していく要素はある一方で、

「社会を変えるではなく、自分が変わる」という目線が大切

だと竹端先生は言います。そのうえで、自分1人で変わるのは難しいので、誰かがそばにいる必要がありますし、ロールモデルが近くにあることも大事です。

■自分が変わる、自分自身の育ち直し。

自分が変わるとは「自分自身の育ち直し」であり、それは自分自身の育ちだけでなく、自分と他者(子どもや夫)との関係性を育ち直すという意味です。

竹端先生は「一見、子育て問題に見えるが、そこに夫婦問題も内包していることもある」と、子育てをするうえでのパートナーシップの在り方をもう一度考えてみることを提案されます。

子どもが生まれても母親という役割以外の自分をつくれるか、「母子密着の関係性から解放されて、自分自身として生きる」がキーポイントになりそうです。

■お母さんも、自分自身として生きる。

子育てだけに自分を捧げていると、ケアラーとしての自身の役割が子どもの自立ととも剥奪されて、結果的に自分がいなくなる状態になってしまうことも考えられます。それを回避し、親もまた自分自身として生きるためには、どうしたらよいのでしょうか。セッションの中で出たポイントは2点。

①まず、子どもを他者だと思えるか。
②自分が(上記のような)呪縛の中にあることを自覚する

ということでした。子育てをしながら親自身も、自分として成長していくことが、子どもの成長にもつながるということです。

何かを頑張るではなく、「子どもは子ども、自分は自分。」と意識することが重要。それが何かの糸口につながってくる。

そんな”じわじわとした体質改善”には、自分自身との対話・自分と子どもとの対話・自分と夫との対話が大事だと、お二人は話します。


クロージング:理事長より「新しいビジョンへ」

こちらは理事長の安藤さんからの言葉を聞くのがよいかなと思いますので、ぜひご視聴ください!(動画時間:約6分)


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サマリーは以上です!

アーカイブ動画の中にある”手触り感”が大切だなと思うので、ご関心に沿って、ぜひご覧くださいませ!

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