自粛とマチの状況と違和感 【神戸の場合】
4月1日。人騒がせなデマが流れていたが、ひとまず緊急事態宣言は先延ばしになった。いずれにしても、覚悟と備えはしておいた方がいい。
この時勢、食品ロスは今に始まったことではない。JA全中「5000人に黒毛和牛を無料配布」の話題にアクセスが集中している。一応見たが、エントリーする気にはなれなかった。もらう側の殺到と反比例し、生産者や精肉業者の気持ちはいかほどのものかと考えてしまったのだ。風評にトイレットペーパーを買い占めた人の行為と同じに感じて怖かった。即行動に移した側と、静観視した側。これらは僕達の仕事にも言える表裏一体である。
人はイレギュラーな出来事が起こった際に分かれ、どういう対応をしどう動くのかを考え今何をすべきかと明確な答えがあれば、いかに普段にしていたことの蓄積が尊く、イレギュラーに立ち向かえるチカラだと知る。
それら鑑みて。この騒動、狭間にある違和感が気持ち悪い。
《 世界のニュースと日本とのギャップ 》
危機感には隔たりがある。元来、西洋と東洋という言い方からして国民性を分けているが、狩猟民族と農耕民族という言葉と共に、もうそんなことでは片付けられないほどに「日本の悪しき部分」が見えてくる。鶴の一声に信頼を感じられない国は恐ろしい。僕らは「確かなもの」を待っている。
《 首都圏、大都市と神戸とのギャップ 》
神戸にはまだまだ危機感がない。実際、僕は毎日店に立っている。流れていたデマ(4月1日発令とした)のような緊急事態だとはそれほど感じていない。無論無責任な行動は慎みながら「無いと困るルーティーンワーク」の一つとして店に立つわけだが、一人でも来てくれるお客に対し、対話から生まれる安堵と一生忘れないであろうその有り難み、瞬間を噛み締めている。
《 美談と無謀のギャップ 》
2月末から3月当初は気にならなかった店の来客数であったが、どこか客層も違っていて、他府県の方々が多いことに気づく。聞けば「宿泊や交通費をキャンセルするよりは、神戸の仲間に会いに来た」と言う。これはいい話だと思ってた。あくまで、” 迎え入れる側 ”の僕から見た都合である。
外出の自粛を要請した首都圏への旅行者がいる。花見に来る海外からの渡航者もある。「宿泊や交通費をキャンセルするより」旅を選んだ。若者は大丈夫らしいと不確実な情報を決断に変え、媒介者となる可能性には気づいていない。自分はそうならないという無責任。ここに老若男女は関係ない。
《 消費する側と迎え入れる側のギャップ 》
店によって準備はそれぞれ違う。もともとの内装ではなかった設備を増やすこと、座り心地がダメになった椅子の修理、お客に依存するのではなくイレギュラーが起きた時にこそ、レギュラー、通常の日々にどれだけの時間をかけたのか、確固たる信念があったのか、揺るぎない懐を持っているのか、そういうことが試されている。それが伴わない店にうだうだ言う資格は無い。
確かに今、マチの飲食業界は疲弊している。(ナンともない店もあるだろうけど)そんな中、見方を変えれば、僕ら店を営む側のエゴも見え隠れする。ただ「家賃を下げろ!」「マチに出ないようにって言うな!」「そう言うんなら保証、補償しろ!」と声を上げることは簡単だ。しかし補助や助成を受けるなら、税金をしっかり払いマイナンバーカードを拒否せずにまずは権利を得よう。そこからだ。自分のことを棚に上げて非難だけを繰り返しては、ただの悪知恵である。(最近のクレジットカード決済、キャッスレス対応しない店は信用されないという話は「売上隠し」のことを言っている)
マチを応援するために消費する。そういう奇特な方も有難い話だが、SNSでその消費ぶりを「自らアップ」する人が多いのは不思議だ。店とお客の関係性がフラットではないと言うか、一緒に頑張ろうという感覚よりも「ガンバレ」と上から言われているようにも映る。被災地ではない他からやって来る「なぜか自撮りを繰り返す一部のボランティア」への違和感にも近い。店主が、こんな方に来ていただけましたとアップするのなら解らないでもない。世に知らせるのはまさにその対象であり、支援する側ではないはずだ。
…
これら全てに言えるギャップ、違和感には、今こそ「相互に思いやりを持ち、身の丈を知り行動すること」が必要になってくる。以前書いた『過度な依存の後遺症はマチを不安にさせるが、本来の姿とはその場にいる人の根幹にある営みであり身の丈である』という本意、自分だけが悲劇の主人公に思うことは時に罪で「自分だけが苦しいわけではない」と考えれば、もっと神戸が、日本が、世界が乗り越えられる糸口をいつか見つけられるのだろう。
僕は教祖でも国会議員でもないが、足跡を残すことが誰かの助けになるのかもしれないと違和感の距離を縮め、目立たない部分に力を尽くしたい。
新型コロナの終息よりも先に息絶えないように、僕は神戸を諦めない。
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