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【本レビュー】ドライブ マイ カー 村上春樹

こんにちは、シフクです。
アクセサリーブランド、Faciata(ファシアータ)を運営しながらフリーランスでアパレルブランドをお手伝いしています!


きっかけ


映画化にもなった言わずと知れた有名作。映画になるんだと思い、そういえば読んでなかったなと思って本屋で買ったのだが、積読にも見事に入っており結局2冊買ってしまった、1冊。

内容は短編集になっていて6編からなっているのが、この話は巻頭一番最初の作品です。

実はこの本を読む前に映画を鑑賞済み。なので映画の内容と本の内容がどう違っているのかも含めて書いていきたいと思います。

ここからは自分が気になったところをいくつかピックアップして行きます。両方のネタバレがあるのでこれから見よう、読もうと思っている方は先を読まないでください。。


高槻について

個人的にはこの人が本でも映画でもキーパーソンになっているかと。
しかし、この人の描き方が映画と本では違ったんですよね。

この高槻って人は、妻の不倫相手。本ではイケメン役者だけれども、中身が空っぽの40代の人間として描かれていて、飲みに主人公の家福が誘い段々と仲が良くなる(話すシーンが多いのでそう感じるのか)。

対して映画だと30代の設定で若い。顔はイケメンてのは同じだけど、仲良くなるアプローチが反対で、高槻の方からのアプローチでした(家福の設定がイケてる演出家なので、役者としてラブコールという形だと思うが)

映画だとここから高槻の描写が結構細かくて。共演者と付き合ったり、刑事事件を起こしたりとなんかやりたい放題。かといって高槻はオラオラ系ではなく知的さを感じるイケメン、そのギャップもあるのだが、その描写が飄々と書かれてている。

何でだろうと考えていたのだが、映画を見ていて思ったのは、高槻というのは家福の願望の生写しなのではと。本にも書いてあった、中身が空っぽだと。空っぽだと熟慮などせず、思いつき、本能的に行動をする、よくも悪くも。

それが一番確信が持てたシーンが、配役だ。映画での高槻は家福が演出する舞台オーディションに受かるのだが、配役が役の年齢が実年齢よりも遥かに上のものだった。そのとき年齢は言っていなかったがおそらく配役の年齢は50代くらいだろう。

重要な役に採用し自分自身を彼に投影させることで、何か彼にしか見えなかった妻の残像を役を通して見たかったのだろうか、と勝手に推測してしまいました。


みさきについて

みさきは家福が乗っている車の運転手。本ではなぜ運転手を雇ったかの経緯は書かれていない(と思う)。ただ彼女にも色々な過去があり(母の死)それが足かせになっている。

人生の課題的には、主人公の家福と一緒(身内を亡くしてしまった)なのでそこをどのように乗り越えていくかというところは共通項としてあるが、本ではもちろんその内容は解決しない。平行線上だ。

しかし映画だと平行線から少し前に進む(具体的になっていく)。みさきは故郷を訪れそこに家がないことを知るのだ(燃えていたかもしれない)。とりあえず家は無くなった。1つ思い出が消えたということになる。

そこにはいい思い出も嫌な思い出もあったのかもしれない、その場所に執着はしていないのだが、何かシコリにように残ってしまい次に進めなくなってしまっていた。

そのつっかえがなくなり、いやが応にも前に進まないといけなくなった。その環境ができたことによって背中を押されるように半強制的に前に進めるようになったのだ。

これは環境が違えどあること。

1つの経験から抜け出せないときは、違うことをあえてやることで、ある時突然ボトルネックが出てくる。そして改善し抜けなかった泥沼から足を抜け出すことができるようになる。

ブレイクスルーではないけれども何かのきっかけで前に進むことはよくあるし、前に進まないと行けない、そんな後押しが見えました。


家福について


本の中では登場人物がほんと少なく、ここまで書いてきた4人の関係性で書かれている(あとサーブ)。彼は妻との関係性が壊れることを恐れていた。妻がいろんな人と不倫してるのは知っていた、しかし関係性が壊れてしまうことを避けたため話すことすらせず、ある日突然妻を亡くしてしまったことによって、時が止まってしまったのだ。

それが止まったまま平行線に流れているのが、本の内容なのだが、映画ではこの先があるように思えた。

高槻が警察沙汰になり、舞台に出れなくなった。自分の変わり身がいなくなったことで彼は舞台にでなければいけなくなった。けど出たくはない。なぜなら自分を彼自身に投影させていたから。人生からドロップしたことで、家福も途方に暮れてしまったのだ。

だがそこから再生していく、長いドライブの中で。小旅行をすることで自分の今までを振り返りそのことで少しづつ前に進んでいく力をつけていくように見えました。


まとめ


1つの出来事によって止まってしまった針をまた進める。そのためには荒療治が必要なのかもと思わされた一方で、問題を頭の中ですり替えてしまい、自分が都合のいい方、楽な方に考えてしまう、人間のクセというか、合理的な思考があるってことがわかる作品なのかなと思いました。

ここまで考えることは普通に読む限りはないのだが、深く読むとそんなことが見えてくる作品でした。


最後に告知

です。
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ここまで読んでいただきありがとうございました。




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