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本人たちも知らなかった「会社の個性」を見つけ、具現化したサイト【Insight Magazine】

こんにちは、シフトブレイン “Insight Magazine”です。

“Insight Magazine”とは、成果物のビジュアルや写真、動画だけでは伝えきれないプロジェクトの内側に焦点を当て、掘り下げていくマガジンです。

実際にクライアントやパートナーを招き、シフトブレインのメンバーとプロジェクトの紆余曲折やその後の効果・影響についてお話しいただきます。

今回は、コーチングプログラム『自己理解プログラム』を運営する株式会社ジコリカイ(以下敬称略:ジコリカイ)と共にプロジェクトを振り返ります。

株式会社ジコリカイ
3ヶ月10STEPで「やりたいこと探しを終わらせる」コーチングプログラム『自己理解プログラム』を提供。「すべての個性が調和した世界をつくる」をビジョンに、ロジカルな自己理解の手法を普及しています。


プロジェクト概要

『自己理解プログラム』の特徴をわかりやすく伝えるため、コーポレートサイトとロゴを一新しました。情報設計からワーディング、アートディレクションまでをトータルにサポートし、情緒に訴えかけながらも、明瞭に理解できるクリエイティブを目指しています。

「ジコリカイの個性を理解し、表現してくれる方々に依頼したい」と考えたうえで、シフトブレインを選んでくださった代表・八木 仁平さん。サイトリニューアルから一年が経ったいま、プロジェクトに込めた想いや進行時の思い出、その後の反響などを伺いました。

1. まずは「深く根を張る」ことから始まる

——ご依頼をいただく前、ジコリカイの現状にどのような課題を感じていらっしゃいましたか?

八木 仁平さん(以下、八木さん):まず、「自己理解プログラム」というものの価値が、お客さまにうまく伝わっていないと感じていました。プログラムのメソッドは私たちが持つ唯一無二の強みであるはずなのに、外から見たときに「他社と違いがわからない」といった感想を持たれてしまうことがあったんですね。心理のサービスであるがゆえに、怪しい感じに見えてしまうリスクもあり……本当の価値をきちんと伝えるためには、コーポレートサイトをしっかり整えてブランディングに力を入れなければ、と考えたのです。
また、会社自体も拡大期を迎えており、このあたりで一度しっかりとブランドイメージを定める必要がありました。そんなとき、とてもいいと感じたのが株式会社グッドパッチのWebサイト。「こんなにストーリーが伝わってくる、没入感のあるサイトはどうやってつくるんだろう」と感動していたところ、シフトブレインが制作していると知って、ぜひお願いしたいと思いました。

Client: 八木 仁平さん
(株式会社ジコリカイ 代表取締役)

浦川 航(以下、浦川):お問い合わせをいただいたあと、まずはアカウントのメンバーから、弊社がどういうプロセスで仕事を進めていくかご説明したんですよね。

浦川 航
(シフトブレイン Planner / Copywriter / Writer)

八木さん:そうです。初回お打ち合わせのとき、アカウントのダダさんがすでに僕の著書を読んでいてくださって……その前のめりな姿勢がとてもうれしかったです。これまでの経験上、僕の本をいいと思ってくれる方とは価値観が近いことが多いので、このプロジェクトもよいものになりそうな予感がしました。

——そこからプランナーの浦川さんが入って、プロジェクトはどのように進んでいったのでしょうか。

浦川:まずはジコリカイという会社がいまどんな状態なのか、サービスの強みは何か?といったプロジェクトの根幹となる部分を、社内のいろんな方にインタビューさせていただきました。八木さんだけでなく、多くのスタッフやコーチの方々が対象です。

八木さん:最初にクライアントのアイデンティティを探るところで、これほど時間をかけるんだなと驚きました。ただ、3ヶ月かけてじっくり自分に向き合う「自己理解プログラム」と一緒で、核をつかむにはそれくらいかかっちゃうんだろうな、という感覚もありつつ……こちらとしては「早く成果物がほしい」って悶々としたりもしつつ(笑)。

浦川:クライアントのみなさまには、しばしば「いつつくり始めるんですか?」といったお声をいただきます(笑)。実際、ただかっこいいだけのものなら、作り手の技量さえあれば別にサクッとできちゃうんですね。でも、クライアントへの深い理解に基づいたコンテンツやデザイン、モーションをつくり、しかもそれぞれがしっかりと接続されたクリエイティブを目指そうと思うと、まずは根を深く張っていくしかない。相手をきちんと理解して、多角的な検証を重ねる必要があるんです。その欠点が、前段が長く感じられてしまうということでして……。

八木さん:出来上がったサイトを見ると、その「深く根を張る」という作業の必要性がよくわかりました。ローンチから1年以上経つけれど、一切のブレがないし、これから10年以上長く使っていけると思えます。そういう本質的なものができたのは、やはり根っこの深い理解があったからこそなんでしょうね。

2. 価値を明確に伝え、お腹に響かせるには?

——自己理解プログラム、ひいては株式会社ジコリカイの価値がうまく伝わり切っていないという課題に対して、シフトブレインからはどのような提案をしていったのでしょうか。

浦川:以前から八木さんの書籍では、人がやりたいことを見つけるには「大事×得意×好き」が必要だ、という公式を掲げていました。まずはこの大切な軸を、Webサイトの一番に目に入るトップへ持ってきています。社内外に対して、「この3つを、ここから深く探求していく」という姿勢が明確に伝わると考えたからです。

八木さん:元からあったものをWebに持ってきて際立たせてもらっただけなのに、これはとても効果がありました。社内でも「この3つに則った事業をこれから展開していくんだ」という意識が芽生えたんです。それに、「大事(緑)×得意(黄色)×好き(ピンク)」と色分けがされ、ぱきっと明るい色が重なっているビジュアルからも、一人ひとりの個性を大切にする姿勢がにじみ出ていると感じます。

浦川:ワイヤーフレームをつくるタイミングでは、上野駅前のシェアオフィスで6時間くらい膝を突き合わせて、みっちり話し合いもしましたね。リアルタイムで八木さんといろんなことをお話しながら、どんどん形にしてみるのが一番効率的だと思ったんです。もはや合宿のようでした。

八木さん:僕は、あの段階では「Webサイトに持たせる役割」について葛藤があったんですよね。ひとつは、プログラムを受けることによるわかりやすいメリット——たとえば「人生変わるよ」「仕事にも役立つよ」みたいなことを伝える役割。もうひとつは、自分たちのブランディングのためにも価値観をきちんと表現していく役割です。以前の僕は前者が強めのマーケティングをしてきていたのですが、長期的に会社を繁栄させるには、そろそろその方向性を変えていくべきだとも感じていました。でも、その2つをどう調和させて表現すればいいのかがわからないまま、サイト制作の依頼を進めていたんです。実際、メリットを前面に打ち出したワイヤーを仮組みしてもらったら、すぐに「これじゃない」と思って……。僕がこれまでイメージしていたのは“頭に響くようなサイト”で、浦川さんがつくろうとしてくれたのは“お腹に響くようなサイト”だった。その方向性を、しっかり時間をとって丁寧にすりあわせできたのはとてもよかったと思います。

浦川:“お腹に響くサイト”をつくるためには、伝えたいことを、相手が頬張りやすくて飲み込みやすいかたちに成形することが必要だと僕は考えているんですね。ユーザーの立場に立って「どの情報からどう渡していくべきなんだろう」とか「どんな状態でこのサイトを見に来ているんだろう」とかを考えながら、丁寧に設計していく。今回の場合は、サービスの具体的な説明に入る前に、「やりたいこと探しを終わらせる」という受け手に対してのエールからはじめ、公式を前面に出したのがポイントだったと思います。悩んでいる方がポジティブになれて、少し話を聞いてみようかなと思えるような情報設計を心がけました。

——そのほかのコンテンツの見せ方については、どのような工夫がありますか?

浦川:その先の構成要素として意識していたのは、やはりプログラムの詳細をわかりやすく伝えることです。ロジカルなメソッドを踏むことで自己理解が深まっていくというプログラムの特性上、そのプロセスで行われることも、ある程度は具体的に説明しなければなりません。このあたりのバランス感はとても苦労しましたね。コンテンツをつくっていて「ネタバレしすぎかな?」「こんなに説明しちゃっていいのかな?」と心配になる場面も多かったです。もちろん、蓄積されたナレッジとコーチのノウハウ、本人の頑張りがあって初めて成り立つプログラムだから、説明しすぎて困るようなことはないとも思っていましたが。

八木さん:もともとのサイトではプログラムの詳細をほとんど説明しておらず、営業の場で資料を見せるスタイルをとっていたため、浦川さんにそういったご心配をかけてしまったんだと思います。でも、これからはきちんと情報を出して、緻密に設計されていることを伝えていくタイミング。だから、新しいサイトでは詳しく説明するべきだと僕も考えていました。3ヶ月間10ステップのプログラムにおいて、何を伝えて何を削るのか、細かいところまでよくディスカッションしましたよね。おかげで、とても明快なコンテンツになりました。

3. インタビューで見えてきたキーワードを具現化

——デザインの面はいかがですか?

浦川:ジコリカイのお客さまは、サービスを通じてポジティブなものを獲得したり、モヤモヤをなくしたりすることができると思います。その晴れやかなイメージは、サイトを訪れたお客さまにもしっかり訴求しなければならないと考えていました。そのうえで、スタッフの方々にたくさんのインタビューをして集合知をとっていくと「ロジカル」「ベーシック」「ポジティブ」というキーワードが見えてきた。これは、ジコリカイという会社や扱うプログラム、スタッフの人柄など、全体の印象に通じる言葉です。この3つのワードに基づいて、さまざまなリファレンスを集め、最適なデザインを探っていきました。デザインをつくっていくときには、こうして言葉で定義することと、リファレンスで表現やグラフィックの例を示すことの両方が大切だと考えています。

八木さん:言葉だけの説明ではわからないし、イメージだけでもわからないから、それはありがたかったですね。ただ、「ロジカル」「ベーシック」「ポジティブ」のリファレンスは確かにそれぞれいい感じなんだけど、実際にその3要素が混ざったときどうなるかが想像できなくて、じつは結構不安でした(笑)。アートディレクターの藤吉さんからざっくりつくったものを見せてもらって「これだ!」って確信できるまでは、ドキドキしていたというか……。

浦川:そうですよね。あのとき、ようやく安心していただけたのはすごく感じました。要素のバランスなどもあるし、イメージをお伝えするのはなかなか難しいんですよね……。

八木さん:でも、結果的にすばらしいものをつくっていただきました。あのイラストもとても気に入っています!

浦川:イラストは明るくポジティブな空気をベースにしつつ、抽象的/論理的な説明のどちらにも違和感なくフィットするように仕上げてもらっています。

八木さん:抽象にも論理にも違和感がないイラストって、どういう条件があるんですか?

浦川:たとえば今回は、具体的な数字をあしらった説明カットがあれば、プログラムをこなしていくことで扉の先の宇宙にも手が届く……といった想像をふくらませるカットもあります。ある意味、これらのカットが果たしている役割は真逆。でも、プレーンな線で余白があり、色などを足しやすいテイストのイラストなら、さまざまな役割を包括的に担えるんです。

浦川:トップのビジュアルもいろいろと悩みましたが、最終的にシンプルな“顔”にフォーカスしました。隣にある「やりたいこと探しを終わらせる」というコピーと連動して、プログラムを通じて自己理解を達成していくプロセスを、表情の変化によって簡潔に表現しています。

八木さん:このイラスト、本当にかわいいですよね。僕の書籍にも通じるテイストなんですが、じつは藤吉さんから最初に「書籍のデザインと内容がフィットしていますね」と言われたときは、あまりピンときていなかったんです。むしろ、もっとロジカルな感じを押し出したほうがよかったんじゃないか、とさえ思っていて。でも、じつはジコリカイのアイデンティティは「ロジカル」だけでなく「ベーシック」であり「ポジティブ」だった。個性とはおでこにかけている眼鏡みたいなもので、意外と自分自身では見つけきれないものなんですよね。自分自身がクライアントに対して「どうして自分のすばらしいところに気づいてないの?」と思う場面はたくさんあるけれど、今回は同じことを、シフトブレインさんにやっていただいたと感じています。

八木さんの書籍
世界一やさしい「やりたいこと」の見つけ方
人生のモヤモヤから解放される自己理解メソッド

八木さん:出来上がったサイトは「これしかない」と納得できるものだし、自分たちだけではたどりつけないところまで連れて来てもらった感覚がある。ただ、全体を通じて僕は異様にこだわりが強いから、本当にお世話になりました……!テキストの単語一つひとつまで、とことん整えることに付き合っていただきましたね。

浦川:いえいえ! むしろ、そこまで突き詰めていける喜びのほうが大きかったです。

4. 事業の土台を支え、未来につながるものができた

——完成したWebサイトやビジュアルが世に出てから、最初に感じていた「自己理解プログラム」の価値が伝わらないという課題は、払拭されましたか?

八木さん:払拭されました!「大事×得意×好き」の3つを際立たせてもらったおかげで、強みがとても伝わりやすくなっているんです。それぞれの色分けは、資料やYouTube動画などにも活かしていて、何を説明しているかに合わせて背景の色を変えたりしています。世界観が統一されたおかげで、ユーザーの理解が深まりやすくなりました。かつ、心から気に入っているビジュアルだから、自分たちが使っていても楽しいんですよね。愛があるからこそ、そのイラストやフォントを使って社外に何かを伝えるときに、熱が入ります。

浦川:とってもうれしいです!

八木さん:じつは、4月3日に新著『世界一やさしい「才能」の見つけ方 一生ものの自信が手に入る自己理解メソッド』を上梓するのですが、これは「得意」の本なので、黄色を使ってもらいました。いずれ「大事」につながる価値観の本を緑色で、「好き」の本をピンクで出して、書店にジコリカイカラーを3色並べたいなと思っています。こうしたビジュアルの力って、本当にじわじわ効いてくるものですよね。世界中で「この3色の円といえばジコリカイ」と連想してもらえる未来になったらいいなと思うし、そのくらいの強度がある成果物だと感じます。

新著の装丁には「得意」につながる黄色が採用されています

——そのほか、採用などへの影響はいかがでしょうか。

八木さん:プログラムの価値を伝えたいと思って制作していただいたサイトですが、新しく採用する方に、会社の意識がより伝わりやすくなっているのも感じますね。いま応募してきてくださる方々は、誰もが「すべての個性が調和した世界をつくる」というビジョンに、しっかり共感してくれている印象です。それは、デザインの力によってジコリカイのアイデンティティが際立った結果だと思っています。

浦川:コーチのプロフィールページでは、それぞれの「大事×得意×好き」を紹介する提案もさせていただきました。それがまた、一人ひとりの個性を大切にしている会社の姿勢を伝えると思ったんです。

八木さんの本当にやりたいこと

八木さん:本当にそうです。新しい世界をつくっていくのは人の価値観で、スキルや知識はあとからいくらでも学べるけれど、価値観は変えられるものではありません。むしろ、変えるべきではないものです。だからこそ、採用においては価値観がちゃんとマッチしているかを見る必要がある。サイト制作をお願いしたときには25人ほどだったスタッフがいまは70人くらいいますが、価値観を定められたおかげで、まったくミスマッチが起きていません。事業の土台にしっかりとサイトやロゴが存在してくれているから、アクセルを踏んでも大丈夫だと思えるようになりました。

——ブランディングを経て、ジコリカイは今後、どのような取り組みをなさっていくのでしょうか。そしてそこに、今回制作したものたちはどのように関わっていきますか?

八木さん:目標はずっと変わらず、「国語・算数・理科・社会・ジコリカイ」と認識されるくらい、自己理解プログラムを普及していくことです。体系立てたプログラムによって「個性」を誰もが活用できるようになれば、お互いの理解が深まり、社会はよりよく変わっていくはず。そんな未来のためにも、まずは日本でより多くの方々にプログラムを伝えていかなければなりません。そうしてフィールドが広がっていくなかで、今回つくってもらったサイトやロゴが、いつでも立ち返れる“確かな核”になると感じています。最近では、YouTubeのサムネイル制作などでもお世話になっていますね。シフトブレインさんにお願いできて、本当によかったです。

浦川:こちらこそ、前段に長い時間がかかっても信じてくださって、ありがとうございます。

八木さん:ただ、サイトをローンチしてからはまだ一年ほどしか経っていないから……すべてこれからなんですよね。足場を固めることができて、ここからやっと遠くに行ける。だからこそ引き続き、末長く私たちに伴走していただけたらと思っています。

▼八木さんの新刊はこちら

制作物

コーポレートサイト
・ロゴ

【制作期間】
 約9ヶ月(2021年8月〜2022年4月)
【担当領域】
 ・全体企画 
 ・コピーライティング
 ・ロゴデザイン
 ・Webサイト制作

制作クレジット

Account Manager: Dada Okada
Planner, Copywriter, Writer: Wataru Urakawa
Art Director: Masashi Fujiyoshi
Project Manager: Chihiro Shigeta
Project Manager: Mana Ohtake
Front-end Developer: Junichi Nishiyama
Back-end Developer: Takaaki Sato
Designer: Nanako Kono
Photographer: Yosuke Sano
Illustrator: Yosuke Yamauchi
Writer: Sakura Sugawara


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Interview,Text: SUGAWARA Sakura
Photographer: TAKAGI Ari
Edit: SAKA Mihoko