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アートディレクターに教わる写真撮影 〜 Vol.1 自宅で物撮り(iPhone編)

こんにちは、シフトブレイン広報の坂です。

シフトブレインは、ブランディングとデジタル領域のクリエイティブを強みとする制作会社です。社内には、多様な強みを持ったクリエイターが在籍しています。

シフトブレインのCreative部(※通称 クリ部)には、アートディレクターやデザイナーが所属しています。クリ部は主にアートディレクションやデザイン業務を担っていますが、広報用の素材(写真や動画)の作成も担当しています。以前のシフトブレインのオフィスは一軒家で撮影環境もありましたが、現在はフルリモート体制。撮影は自宅で行っているにも関わらず、クリ部は変わらず品質の高い写真を撮影してくれます。

クリ部のメンバーに、自宅ではどのように写真撮影を行っているのか?を聞いてみたところ、状況に応じた撮影方法を教えてくれました。
教えてくれたのは、シフトブレインのnoteではお馴染みの藤吉さんです。

藤吉 匡(Art Director / Designer)
制作実績:みさとと。, Starbucks Coffee, Toyota Dream Car

プライベートでは作家活動をされていたり、外部で講師もされている大活躍の藤吉さん。直近では、世界最大級のWebデザインアワードAwwwardsの審査員にも選出されました。シフトブレインのサイドプロジェクトで「SOCIUS(ソキウス)」というエナジーバーブランドも作っています。

そんな藤吉さんに教えてもらった撮影方法をテーマごとにnoteにまとめ、みなさんにもご紹介していきたいと思います。


テーマ:iPhoneで物撮り

初回は超初級編!「iPhoneで物撮り」をテーマにお送りします。

今回はフラッシュは使用せず、シンプルに自然光を利用した撮影方法になります。物撮りは、部屋の中で撮影することが大半だとは思いますが、自然光を活用すれば外での撮影にも応用できます。
さて、iPhoneでは普段何気なく撮影することが多いですが、アートディレクターの視点ではどのように撮影しているのでしょうか?

ここからは実際に藤吉さんから撮影方法を紹介・説明してもらいましょう!


Step0 - リサーチ

今回はテーマに合わせて、僕の個人制作のオリジナル卓上カレンダーをiPhoneで物撮りしていきます。みなさんも撮影したいモチーフを用意して、読み進めてください。

・理想のアウトプットに近づくために
まずはじめに撮影をするモチーフに合わせて、どのような写真に仕上げるかリサーチを行います。
普段から大量の写真を見てインプットをし、理想のアウトプットを分類しておくことが大切です。写真のトーン、画像の切り取り方、モチーフとの向き合い方、見せ方など...注目するポイントは沢山あります。

✍️Step0 ポイント
・大量に写真を見て、理想のアウトプットを分類する。
 トーン、切り取り方、モチーフとの向き合い方、見せ方など。

●写真の収集・インプットにおすすめ
Pinterest
画像や動画検索に特化したサービス。デザイン業界で利用されている方も多く、普段からインプットを行うには最適なツールです。

藤吉さんのPinterest

Step1 - よく観察し、計画を立てる

・観察する
撮影の前に、モチーフ自体をよく観察することから始めます。モチーフのデザイン上の工夫やコンセプト、何がチャームポイントなのか?などをよく見てみましょう。
観察するうえで一番大事なのは“自分の心が動くポイントを探ること”です。写真映えするかという視点も必要ではありますが、自分が「かわいい!」と思える部分を探りましょう。

・計画を立てる
次に、観察して「いいな」と思ったポイントを書き出していきます。

僕の場合、自分で作ったカレンダーではありますが、改めていいなと感じた銅リングのアンティークな感じ、紙の質感、余白の多さなどをポイントとして書き出しました。そして、注目したのは10月のページ。イラストの煙突の上に、煙とコウモリが飛んでいるところがかわいいので、ディテールの代表的な部分にしようと思います。

藤吉さんの撮影カットメモ

制作物の記録としてアーカイブ然とした正面のカット、寄りと引き、斜め、表紙は押さえたいなど......最初に見通しを立てることはとても重要です。
このようにして、僕は今回11枚の写真を撮影することに決めました。

✍️Step1 ポイント
・モチーフ(対象物)をよく観察する。
・心が動く部分やデザイン上の工夫など、チャームポイントを探る。
・それらを伝えるために必要な写真枚数や納品枚数をふまえ、簡単な撮影カットリストを作る。

Step2 - 撮影の際に意識すること

・背景
物撮りの場合、大前提として撮影するモチーフをシンプルに見せるために“背景に気をつかうこと”が重要です。特別な意図がないのに、写真に別の要素が入っているのはおかしなことだと思ってください。
背景紙があると理想的ですが、初めは部屋のなんでもないフラットな壁を背景にしたり画用紙を利用してもいいと思います。クリ部のメンバーには、白い天板のデスクを普段使いと撮影用で兼用している人もいます。

・モチーフと自分の距離や角度
頭の中で常にモチーフと自分との距離や角度を計り、考えながら撮影をしてください。
例えば、iPhone(レンズ)を斜めの卓上カレンダーに対して水平に当てているのか。それとも地面に対して垂直に当てているのか。上から撮影している場合、構えているiPhoneの角度、モチーフの角度は何度かなど......これは意識していない方が多いポイントです。この感覚を意識していない方は、普段の生活で料理などを撮る時も「おいしそ〜(パシャパシャ)」と適当に撮影をしてしまっています。撮りたい画が頭に入っていると、被写体との距離や角度が想像の画と比べ歪んでいる場合に、違和感を持つことができます。たとえ感覚で気づくことができなくても、撮る際に自分とモチーフの角度まで意識して撮影ができれば、理想の画に近づけることができます。

・レンズの歪み
実はiPhoneのカメラは広角すぎて、物撮りにはやや不向き。最近のiPhoneは望遠カメラも搭載されているProモデルがあるので、Proを持っている方は物撮りの際には望遠カメラを利用しましょう。
望遠レンズのほうが歪みが少なく、物撮りに適しています。

・光の角度
今回のように自然光で撮影をする場合は、どの角度からどういう風に光が入っているのかにも意識を向けましょう。
例えば、順光(光が正面から当たっている場合)では素直な絵になります。がっつりではないけれど少し逆光に被写体を置く場合は、コントラストを利用して紙の質感を出すことができます。

極端な話ですが、風景のポートレートなどは逆光で撮影すると“思い出の風景”のような画になります。そのような雰囲気を作りたい場合は、逆光で撮ることが多いです。物の質感を出したい時や料理を撮る時も基本逆光です。360度、どの角度から当たったらどういう印象を出せるかは、何度も撮影するとだんだんわかってきます。横から当たると立体感が出るなど、自分が撮りたい絵に近づけるために光の角度にも注意を向けて、色々と試しながら撮影をしてください。

・撮影時間
晴れの日、10時から14時ごろの自然光で撮影しましょう。沢山の自然光を取り込むために極力大きな窓際を選び、撮影の際には部屋の電気を消すことを推奨します。

✍️Step2 ポイント
・撮影時は、被写体(モチーフ)とレンズの距離と角度に意識を向ける。
・光の当たる角度、影の出方にも意識を向ける。

Step3 - VSCOで加工する

iPhoneでモチーフを撮影したら、最後は加工です。
ここからは、スキル(手順)の話になります。加工に使うアプリはこちら。

VSCO
写真加工・動画編集アプリ。シンプルでわかりやすく、フィルターを使って簡単に加工ができます。有料のメンバーシップがありますが、無料でも利用可能。ただし、無料で利用する場合もアカウント登録は必要です。

アプリ内に元々あるフィルターを利用してもいいですが、自分専用のプリセットも作れるのでトーンを揃えたい時などにうまく活用しましょう。

僕は「LV1」の有料フィルターをベースに調整を加えたものをレシピとして3種類登録しています。加工する場合は一度その3つのどれかをかけた上で、微調整を行っています。

・よく調整するツール
露出
ホワイトバランス:色温度
彩度
サイズ(用途に合わせて適宜)

・レシピの保存
写真にかけたフィルターやツールの内容を「レシピ」としてアプリに保存できます。※無料版のレシピ登録は1種類までなので注意。

Step1で計画した11枚が完成しました。

✍️Step3 ポイント
・iPhone撮影時はVSCOでトーン作りを行う。
・納品用のサイズや比率にトリミングし、書き出す。

まとめ

今回お伝えしたポイントを意識しながら撮影してみると、不要な物の映り込みが気になったり、フラットな背景や台などの撮影スペースが欲しくなる方も多いのではと思います。
まずはA3のコピー用紙などでもいいので、撮影ができる環境を準備をしておくことが大切です。自分の部屋で光が一番当たる場所に、フラットな背景と台を用意できると上達が早まります。こだわりはじめると「テーブルを新調するときは撮影もできる天板にしよう」とか「布や大きい紙を用意しよう」など欲が出てくるかもしれませんね。

自分の場合は、カッターマットの裏面を利用しています。表は作業用、裏は撮影用で使い分けています。マットな質感が気に入っているのと、手軽に移動ができるのでとても楽です。実は、FOURDIGIT Inc.さんの冊子もカッターマットの裏で撮影したものです。

このように、自分の部屋の中にベストな環境を用意して、いつでも合格ラインを出せるようにしていきましょう。

✍️自宅で物撮り Tips
・自宅でいつでも撮影できる様にフラットな背景を用意する。
 水平用であれば壁。垂直用であればフラットな天板、A3コピー用紙など。
・自分の部屋の光の好条件を把握しておく。
 午前中にこの位置で撮影するとうまくいく、ライトを購入するなど。
・VSCOは自分好みのフィルターを複数用意しておくと便利。
 時短とクオリティーの担保に繋がる。LightroomやPhotoshop利用時も同様。

以上、藤吉でした。


おわりに

いかがでしたか?初回なので、広報の私にも理解できるようにライトなテーマでわかりやすく説明してくれました。

実際に私も自宅でiPhoneの物撮りにチャレンジしましたが、Step2の項目を意識しながらの撮影はとても大変でした。そして、やはりフラットな背景や台も欲しくなってしまいます。
日常のiPhoneでの撮影も、藤吉さんのお話を聞いた後はベストな環境を探すようになり、個人的にも大きな変化がありました。
みなさんもiPhoneでの物撮り、是非試してみてください!

さて、次回は撮影機材をiPhoneからデジタル一眼レフカメラへ変え、モチーフも色々なものに変えて……本格的な物撮りをご紹介する予定です。

Vol.2もお楽しみに!


【お知らせ】藤吉さんデザイン オリジナル卓上カレンダー
今回、撮影の見本モチーフになった卓上カレンダーは、愛媛県の印刷加工会社マジカルプレスさんと藤吉さんがコラボレーションされたものです。
モチーフは昨年2021年のカレンダーですが、2022年のカレンダーがこちらで購入いただけます。2022年は活版印刷のカレンダーです。(特殊印刷の年もあるそうで、毎年印刷方法は変わるようです!)

イラストの担当は、嶽まいこさん。2021年のカレンダーと同じです。

モチーフにも興味を持たれた方は、マジカルプレスさんのオンラインショップも覗いてみてくださいね!


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