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余った糸から生まれる羊毛紙|cucumuのニットができるまで 4/4

こんにちは、シフトブレイン広報の坂です。

“cucumuのニットができるまで”は、シフトブレインとクライアントの寺田ニットさんとで立ち上げたオリジナルのニットブランド『cucumu』を掘り下げる全4回のシリーズ記事です。

今回は第2回で触れたコンセプトカードについて、深掘りしていきます。

もし、本記事で初めて“cucumuのニットができるまで”をご覧になっている場合は、連載1回目から読んでいただくのがおすすめです!


山梨県市川三郷町に行ってきました!

商品と共にcucumuの世界観をお届けするコンセプトカード。このカードには手漉きの羊毛紙が使われています。羊毛紙は原料に羊毛が使われているため、独特の風合いと手触りにも特徴がある紙です。羊毛紙をご存じない方は和紙をイメージしていただけると、雰囲気が近く想像がしやすいかもしれません。

羊毛紙でできたカードは柔らかく、ふわっとした手触りです

cucumuで使用している羊毛紙は、寺田ニットさんの本社がある山梨県市川三郷町の市川手漉き和紙 夢工房さんで作られています。

▼市川手漉き和紙 夢工房さんのご紹介

『紙漉き体験』を通じて、和紙について楽しく学ぶことができる工房です。地域の文化を学ぶ機会として、毎年小学生を対象に手漉き卒業証書作り体験も実施しており、文化を継承する取り組みも行っています。自分の卒業証書を手漉きで作れるなんて素敵ですね。


『市川三郷町』は2005年に3つの町が合併して誕生しましたが、寺田ニットさんや夢工房さんがある地域は合併前までは『市川大門町』と呼ばれていました。『市川大門町』は、和紙と花火の町として発展した町だったそうです。

旧町名は最寄り駅の『市川大門』に今も残されています

そのなかでも『市川手漉き和紙』は千年の歴史を持ちますが、現在では機械化が進み紙漉き職人も大幅に減少しました。後継者の育成と紙漉きができる場所を確保するため、製紙試験場の倉庫をリニューアルした施設、夢工房さんがつくられたそうです。

今回はcucumuチームで夢工房さんにお邪魔して、後継者のひとりである渡邉さんに羊毛紙の手漉きを実演していただきました!見学した内容をまとめましたので、みなさんにもお伝えできればと思います。

手漉きを実演していただいた渡邉さん(夢工房)
地元出身で、市川手漉き和紙の後継者として工房を管理されています

手漉きの羊毛紙ができるまで

cucumuの羊毛紙は、羊毛とパルプから出来ています。羊毛は寺田ニットさんで余ったり中途半端に残ってしまった廃棄される予定の糸(残糸)も利用しています。
まずは、この2つの原料を5:5で水に投入。羊毛、パルプ、水を混ぜる作業からはじまります。

羊毛は5色使用しています

混ぜるのは漉き舟(すきふね)と呼ばれる箱の中。漉き舟にはクシのような形状の器具がついていて、それを前後に動かすことで原料と水を混ぜることができます。

ベーシックな原料であるパルプはすぐに水となじみますが、羊毛は油分が多いのでとっても混ざりにくい!混ざるまでにかなりの時間と労力が必要でしたが、この混ざり具合が羊毛紙の出来を大きく左右します。大変な力仕事ですが1番大切な工程なので、羊毛が均一になじむまで何度も何度もかき混ぜていきます。

何度も混ぜて、ようやく羊毛も均一に混ざりました

原料が混ざったら粘剤(※)を追加し、手漉きがはじまります。手漉きには簀桁(すけた)と呼ばれるカードサイズに仕切られた道具を使用。複数回にわたって原料液を流し込み、漉いていきます。職人渡邉さんによる繊細な手仕事が続きます。

(※)粘剤(ネリ)
繊維やパルプを均等に拡散し、沈澱を防ぐためのもの。粘剤を利用することで紙を均一に漉くことができます。紙漉きには粘剤の代わりに、トロロアオイという植物の根を原料にしたネリを使用することもあるそうです。

手漉きが完了すると簀桁から羊毛紙(になるもの)を外します。掃除機を利用した吸引式アイロン台のような器具や布を使って、水気がなくなるまで水分を飛ばします。ここまでくれば、あとは乾燥させるだけ。乾燥機(熱した鉄板)に貼り付けて、20分ほどで完成です!

60〜70度程度の熱さがある鉄板に貼り付けて乾燥させます。
昔は天日干しで乾かしていたので、時間がかかる工程だったそうです

カードにも自然に優しい素材を

完成した羊毛紙はこちら!

出来立ての羊毛紙はあたたかく柔らさもありながらパリッとしていて、まるで焼きたてのパンのような手触りでした。(なんだかいい匂いがする気もしました!)
ふわふわした独特の紙質は、写真からでも伝わるのではないでしょうか。混ぜるときに手強かった羊毛については、色つきのものが目視でわずかに「これかな?」とわかる程度になじんでいて、気にならなくなっていました。

渡邉さんはcucumuチームが納得する羊毛紙が完成するまでに、何度も試行錯誤を重ねて沢山の試作品を作ってくださったそうです。最初の羊毛のちぎり具合や、残す羊毛の大きさなど……羊毛紙としての“ちょうどよさ”を追求していただいた結果、cucumuらしいコンセプトカードが出来上がりました。

印刷は町の印刷屋さんにお願いしています

実際に羊毛紙の手漉きを見学したcucumuチームは、原料に対して興味津々!

  • 羊毛の割合は増やせるか?

  • パルプをミツマタやコウゾ(どちらも古くから使用されてきた和紙の原料)に変えると紙色に変化はあるか?

  • 粘剤にトロロアオイを使用できるか?

などなど。今後、羊毛紙の原料もより自然に優しい素材に変えていければいいねと盛り上がりました。

渡邉さん&cucumuチームで、工房の前で記念撮影。
ありがとうございました!

おわりに

これまで全4回にわたってご紹介してきた連載企画“cucumuのニットができるまで”、楽しんでいただけましたか?記事を通して寺田ニットさんとシフトブレイン、それぞれの想いが伝わっていたら嬉しいです。

cucumuはこれからも全方向に対して『つねにやさしく』を考えながら、大切にブランドを育てていきます。近日2023SSの商品も追加予定なので、そちらもお楽しみに!

▼ cucumu ECサイト

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▼ 【連載企画 】cucumuのニットができるまで


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Photographer: FUJIYOSHI Masashi