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IT未経験者が異世界に飛び込んでスクラムマスターになった話

はじめに

株式会社SHIFT アジャイル推進2グループの杉山です。
実は去年の今頃は学童保育の先生をしていました。
それ以前にIT業務に関わった経験は全くありませんが、新しいことを勉強するのが好きで、ずっと学び続けられる環境に身を置いてみたいと思いSHIFTへ転職しました。

そんな私ですが、異世界(SHIFTのアジャイル人材育成プログラムである 「スクラムグローアップ」)に飛び込み、半年で以下のような成長ができたと思っています。

  • IT未経験の状態から、アジャイル開発やスクラムの知識を身に着けられた

  • 社内案件でスクラムマスターとしての実務経験を積めた

  • 社外案件にスクラムマスターとしてジョインした

この記事では、「スクラムグローアップ」がどんな育成の場なのか、その中で私が経験したことについてお伝えしたいと思います。

この記事で出てくる用語について

本記事の内容は私の体験にフォーカスしているため、詳細な説明は省略させていただきます。

アジャイル開発

ソフトウェア開発手法のひとつです。
「アジャイル(agile)」には「素早い」「機敏な」という意味があります。
顧客の要望に臨機応変に対応しながら、よりよいプロダクトを素早く開発することを目指します。

スクラム

アジャイル開発手法のひとつです。
複数ある手法の中で最も採用率が高く、以下のような特徴があります。

  • 経験主義とリーン思考(ムダを抑え、価値を最大化する)に基づき、最低限のルールとセットで構成されている

  • 「スプリント」と呼ばれる一定の期間ごとに動作する成果物を作り、顧客からフィードバックを得る

  • 現在の状況や問題点を常に可視化し、継続して改善する

スクラムマスター

スクラムを理解し、チームに対して効果的な実践を促し、確立させることに責任を持つ人を指します。

IT未経験から一転、スクラムマスターに転生

スクラムグローアップとは

SHIFTにはアジャイル開発に関する社内育成の場が二つあります。

ひとつが「SHIFT Agile Academy(SAA)」です。
アジャイルに関わる部署の社員全員が対象で、2か月程度に渡りアジャイル開発に関する講義やワークを受講します。
初心者でもアジャイル開発やスクラムの基礎をじっくりと学び、体験することができました。

そして、もうひとつが「スクラムグローアップ」です。
こちらは上長と面談の上で受講者を決定します。経験豊富なアジャイルコーチ(アジャイル開発の組織内定着や拡大に向けた支援、スクラムマスター支援を行う人)と連携しながら、社内案件で4か月程度スクラムマスター業務をします。
実際の現場で活動することにより、より実践的にスクラムマスターとしての実力を身に着けられました。

初めてアジャイル開発について学び、感じたこと

元々「効率化」というワードが好きな私は、アジャイル開発のスピードの速さや柔軟性に魅力を感じました。
一方で、実現は困難であるとも感じました。先述のSAAではスクラム開発の手法を模して絵本を作ったり、折り紙の動物園を作ったりといった体験をしたのですが、どれもつまずいた場面があったからです。

特に難しかったのは「まず見せられる成果物を作ること」です。
スクラム開発では、

  • 決まった期間内に動作するものを作る

  • 顧客からのフィードバックを得る

  • 上記を元にさらに改善していく

という流れを繰り返し行います。
それによって顧客の要望や仕様の変更に柔軟に対応し、最終的に製品の価値を最大化させます。

例えば絵本を作るときは、最初のページから順々に作成していくのではなく、決まった時間内に顧客に見せられるような「ある程度の完成品」を作らなければなりません。
私はチーム内でうまく連携が取れず、つい時間をオーバーしたり中途半端なものを作ったりしては講師の方から指摘を頂いていました。

「理屈は理解できるし、うまく実現できれば効果的だが、そこが難しい」
これが私のアジャイル開発に対する率直な感想でした。

スクラムグローアップ参加までの経緯

上長からスクラムグローアップのお話を頂いたとき、興味を持った反面、自分には難しいのではと感じました。

というのも、アジャイル開発に携わったことがない私が知識だけで挑戦できるポジションではないと考えていたからです。
深く理解していないものを他者に教えるのは非常に困難です。
社内交流会では「スクラムマスターになりたいと思ったら最初はアジャイル開発に関わったり、既にスクラムマスターとして動いている人と同じチームで一緒に仕事したりするといい」という話を耳にしていました。

しかしながら、最初から実務に携われる機会はそうそうあるものではありません。そして、この開発手法が実際の現場でどう作用するのか見てみたいという気持ちもありました。
それであればとりあえずやってみようと、半ば勢いで飛び込むことにしました。

私がスクラムマスターになるまでの経緯

1か月目:ここは異世界?

私が転生したのは、フルリモートで開発を進めているチームです。
以前スクラム開発をしていた時期があったそうなのですが、私が入ったときにはスクラムを実施する上で必要な取り組みや会議があまり行われていないといった状態でした。
そのため、まずはスクラム導入の準備をするところから始めました。

  • チームメンバーに協力を仰ぎながら、バックログ(チームで実現することの一覧)を作成する

  • 必要な会議のスケジュールや体制、他運用ルールを策定する

  • スクラムの理解度を揃えるため、研修を企画する

他にもやることが山積みな上に、会議で飛び交う会話がまるで異世界で話される言葉のように思えて、全身がパンクしそうな毎日でした。
そんな中で、私が意識していた点は以下2つです。

  • 不明点はその場でメモしてその日のうちに解消する

  • 書籍や社内外の勉強会を通してなるべく多くインプット・アウトプットする

スクラムグローアップではアジャイルコーチとの1on1を毎日設けていただいていたので、困ったときにはすぐに相談でき、何度もアドバイスをいただきました。
その上で「難しくても、不安でもとりあえずやってみる」を続けた結果、何とか会議の進行はこなせるようになり、チームにも少しずつスクラムが浸透していきました。

2か月目:形だけのスクラムマスター

実務の中で、私にとってとりわけネックになったのが観察力でした。
チームの課題を課題と認識できず、アジャイルコーチに指摘されて初めて気が付くケースが多かったのですが、認識できた(あるいはチームメンバーから直接意見が上がった)としてもどうしたら解決できるのか分からないことばかりでした。

なぜ課題を認識できないのか?
リモート業務だからこそTeamsやSlackなどのコミュニケーションツールは広く目を通していましたし、会議ではメンバーの話によく耳を傾けるようにしていたつもりでした。

そんな折、チームメンバーに言われた「寄り添ってもらっている感じがしない」という言葉が強く刺さりました。

このときの私はチームメンバーに遠慮をしていました。
私に開発やマネジメントの経験があれば、そういった観点からもっとチームの課題に気が付けるのだろうか、と感じたり、「やはり初心者に務まる仕事ではないのではないか」と、若干自棄になった期間でもありました…。

自分にできることはやっているつもりでいましたが、今思えば自分に実務経験がないことを積極的に行動しない言い訳にしていたのだと思います。
つまり「忙しそうだから自分のために時間を取ってもらうわけにはいかない」「なるべく手間を取らせないように」と思って動いた結果、コミュニケーションが少なくなってしまっていたのです。

そもそも、課題はスクラムマスターが解決するものではなくて、チームで解決していくものです。
今の自分はとりあえずスクラムという型にチームを当てはめているだけで、チームのために自発的に動けていないと分かったのは大きな気付きでした。


3か月目・4か月目:自身の強みを生かしたスクラムマスターへ

2か月目の経験を糧に、月に一回開発メンバーと面談をしたり、二週間のサイクル毎にリーダーポジションのメンバーと会議をしたりと、積極的にコミュニケーションを取る機会を設けるようにしました。
特に面談は雑談をするようなカジュアルな雰囲気で話していましたが、そうしていく中で全員の会議では出てこないようなチームメンバー個人の意見や、チームで抱えている課題などがいくつか見えてきました。

そのうちの一つが心理的安全性が低いことです。
会議内で発言する人が限られており、どこか空気が固く、意見を上げづらい雰囲気がありました。

「心理的安全性が低い」とは、一般的に以下のような状態を指します。

  • メンバーがチーム内で発言や提案することを遠慮している

  • 失敗することを恐れ、リスクを取ることができない

  • チームメンバー同士が信頼しあっていない

メンバーから話を聞いてみると「自分より難しい仕事をしている人の時間を奪ってしまうことが心配」「初歩的なミスをしたらどうしようという不安がある」との意見が出てきました。
2か月目の私もそうでしたが、忙しそうなメンバーの時間を割いてもらうのはためらいが生じるものです。会議の進行も力量のあるメンバーに任せた方がかかる時間は最短で済みます。
しかしながら、スクラムを実施していく上ではメンバーが対等に意見を出し合い、製品やチームをよりよくしていくことが必要です。

では、「発言しても大丈夫」という雰囲気を作るためにはどうすればよいか?

私はお互いがどんな人かを知り、意見交換の機会を増やすことで改善に繋がるのではないかと考えました。
職場勤務の場合は顔を合わせて話したり、隙間時間で雑談をしたりするなどしてメンバー同士を知ることができますが、リモートワークではなかなかそういった機会が作りづらいです。
それであれば機会を意図的に設けてみようということで、週1で雑談会を実施しました。

良かった点は、この取り組みを通してチームメンバーから「これまで話したことのない人と関われた」「相談しやすくなった」と声が上がったことです。
これだけが要因ではないかもしれませんが、以前より会議内で発言するメンバーが増えました。

スクラムの安定実施だけに囚われるのではなく、スクラムの中で見えてきたチームの現状をもとに「チームのために何ができるか」を自分なりに考えて起こした行動がよい結果に繋がったのは、私にとって嬉しい経験となりました。

レベルアップを実感

自部署では一定期間ごとに自身のスキルマップを作成しています。
スクラムグローアップに参加する前後で変化を比較してみたところ、想像以上に成長している自分に気が付きました。

スクラムグローアップ参加前は、スクラムの基本的な用語を知識として知っている程度でした。
今はある程度理解できていますし、まだまだ助言を頂くことも多いですが一人で会議を実施することもできます。スクラムに関して説明することもできるようになりました。

「知っている」だけの知識は、人に説明することで理解が深まるといいます。
今回の取り組みの中で、チームメンバーにスクラムを説明できるよう必死に調べたり、その知識を活かして実際の現場で支援活動を行ったりしてきたことが、自身の成長に繋がったのだと感じました。

社内の経験は社外で通用するのか?

スクラムグローアップでの実務を終えていよいよお客様先にジョインしたのですが、実のところ不安でいっぱいでした。

  • 社内案件ではチームメンバーが私を理解してくれていたから何とかなっていたのではないか?

  • 今の実力でお客様に価値を感じていただけるようなご支援ができるのか?

自信が持てないまま臨みましたが、しばらく業務を進めてみると気が付いたことが2つありました。

1つ目は自分に余裕ができたこと。
初期は、すべての会議において台本を書かないとまともに進行できないぐらい緊張していましたが、じょじょに落ち着いて進行できるようになり、思わぬ展開にも冷静に対応できるようになりました。

2つ目は「ここ大丈夫かな?」「ここが改善できたらもっとよくなりそう」と思う頻度が増えたことです。
チーム内で共通で使用しているツールの運用方法から、スケジュール全体に関わる内容まで、チームの状況が見えるようになりました。

スクラムグローアップでは、ここには書ききれないぐらいたくさん失敗しましたが、そのつまずきのひとつひとつが今に活きていて、自分が思っていたより力がついている。
それが分かったとき、初めて「スクラムマスターになれたんだな」という実感を得られました。

また、社内では一定のサイクルでお客様からのフィードバック調査とレポーティングを行っているのですが、その結果お客様からご評価いただいているとお聞きしました。(嬉しい!!)

スクラムグローアップでの実務を通して、私自身がスクラムの考え方である「経験」から学び、たくさん失敗して、成長することができました。

私の冒険は始まったばかり

実はこの研修に参加するまで、スクラムマスターは私には向いていないだろうと思っていました。
というのも、私がチームをまとめたり、導いたりするのがあまり得意ではないのと、これまでの経験で活かせそうなところが特に無さそうだと考えていたからです。
しかしながら、研修を進めていくうちに既視感を感じた場面がありました。

学童保育施設で働いていたとき、毎日のように子ども同士のケンカやトラブルが起きていました。
そういうとき、私は必ず子どもたちひとりひとりの話を聞いて、事実やお互いの気持ちを共有し、どうしたらお互い納得する形で解決できるか話し合ってもらっていました。

事実を可視化し、共有して、どうしたらもっとよくなるか探っていく。
そういう意味では、学童保育の先生とスクラムマスターってちょっと似ているのかもしれません。
私は180°違う仕事に転職したつもりでしたが、今は意外とそうでもないのかもしれないと感じています。

正直なところスクラムマスターが私に向いているかどうかはまだ分かりません。ただ、今後も挑戦し続けたい、とても面白い仕事だと思います。
今後もスクラムへの理解を深めながら、私なりのスクラムマスター道を追求していきたいです!


執筆者プロフィール:杉山早希
教育・福祉業界での経験を経て、2022年にSHIFTに入社。
現在はアジャイル推進に奮闘している。

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