日本に古来伝わる植物オイル
中東には気候に適したナッツ系の植物が多く自生しているため、古くからナッツ系植物オイルが美容目的で使用されてきました。代表的なものだと、肌馴染みの良いヘーゼルナッツや保湿力の高いアーモンドがあります。
では、日本ではどのような植物オイルが使われてきたのでしょう。
本州から九州にかけて自生している椿は、古くから身近な植物として親しまれてきました。椿オイルは食品としてだけでなく、美容目的に使われていました。最も古い記録では、7世紀初期に中国へ派遣されていた遣唐使が、唐の皇帝に椿油を献上していたと言われています。金や絹に並ぶ献上品なので高価で貴重なものだったことがうかがえます。
当時の椿油は、「海石榴」油と記されていました。見た目が石榴(ざくろ)に似ていたのでしょうか。日本書記や万葉集には海石榴と書かれており、源氏物語や枕草子には椿と記されています。ツバキの学名は Camellia japonica と言われ、日本原産であることが分かります。
平安時代(8世紀後半)には、貴族の女性の髪形は大垂髪(おすべらかし)と言い、百人一首に描かれているような髪を長く垂らしたロングヘアでした。艶のある黒髪が美人の条件とも言われていたため、ヘアケアアイテムとして椿油を髪につけていたそうです。
椿オイルは、椿の種子から抽出されるオイルで、酸化しにくいオレイン酸が多く含まれることから抗酸化作用があり、肌の老化を防ぐ効果があります。不老不死の薬と言われ大切にされてきました。長寿で知られる徳川家康は椿油であげたてんぷらを食べていたと言われています。
椿油は現代でも、ヘアケアだけでなく、スキンケアにも使用されています。保湿効果が高く、肌の乾燥を防いだり、肌を柔らかくしたりする効果があります。古くから日本人に愛用されてきたことから椿油は、日本人の肌に一番合うのかもしれませんね。