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4-2 アロマの世界へいらっしゃーい

 そのスクールは、こじんまりとして、柔らかい雰囲気だった。母娘の二人で経営なさっていて、お二人とも人柄がいい。その上、日本では今ほどアロマがまだ当たり前ではなかった時代からアロマの勉強をしてきたそうで、とても経験豊かな方たちだった。場所は名古屋の中心地に近い所だったので、外は大変賑やかな場所だったが、そのスクール内は、まさに都会のオアシスだった。自分の波長と合っている感を受けた私は、一気にスクールにもアロマにもどっぷり浸かっていった。

 そのスクールでは二つの協会の資格試験とそのための講義を扱っていた。私はその内の一つ、精油を化学的に取り扱うことに長けた資格の勉強を申し込んだ。

 授業はとても楽しかった。先生にも「精油の化学に興味があって来る女性は珍しいですよ」と言われたが、頭の中文系なのに理系に行っちゃったり、農学部出身でIT企業に就職しちゃったり、珍獣扱いされることには慣れていた。

 週に一回、三か月に渡る授業を受け、無事に目標の資格試験には合格した。しかし、そこで終わる私ではない。「もっと勉強したい」


 それと同時に、私は再就職を目指して、とある試験を受けていた。ところが、そちらは落ちてしまった。周りからは「絶対受かるよ」と言われていたのに、落ちた。私は拍子抜けしたが、なぜか悔しくはなかった。落ちる予感、というか、「本当の本当は、そこには就職したくないんだよ」という本音の声を、心のどこかで察知していたからだろう。


 では、私は一体、どこに行ったらいいんだろう。不合格の通知をもらったその足で、私はアロマスクールに向かった。そこで先生に、「試験落ちちゃいましたー」と笑って言った。そうしたら、先生が微笑みながら言ってきた。「今日から、(私が試験を受けたのと別の方の協会の)前期日程の申し込みが始まったんですよ~。うふふ」

 「あぁ、これを受けるために、私は就職試験に落ちたのかもしれない」と私は直感。申込用紙をもらって帰る羽目になった。私は、ずぶずぶと見えない世界の方へ引き込まれていっていたが、まだこの時点では気づいていなかった。

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