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我が家に来た方法がクレイジーな猫

 それは高校2年生の11月上旬だった。私は当時、高校の寮で暮らしていたが、人間関係、美味しくないご飯に苦しみ、よく寮から逃げ出していた。(ちゃんと帰省届書いて帰っていたので、無断で帰ってはない)
 寮暮らしをしていたものの、家から高校まで50分ぐらいの距離にあったので、通えなくはないが、田舎であるため電車やバスなど交通手段がなかった。帰る分には、バスや電車があったが、都会に比べると利用する人が少ないため料金が高い。なので、バス停の近くのセブンイレブンで、母と待ち合わせをし、高速道路に乗って家に帰った。ほぼ毎日送り迎えをしてくれた母には感謝だ。

 家に帰って、荷物を置いて手洗いうがいをした後は、明日の小テストに向けて、自分の部屋で勉強を始める。

 15分後、猫の鳴き声がする。その当時、家によくご飯を食べに訪れる黒猫がいたのだが、鳴き声は違う。今では猫が、家猫3匹、外猫1匹といるのだが、その時は猫を飼っていなかった。じゃあ、え、誰?となる。勉強していた手を止め、鳴き声のする方へ、足を進める。
 両親がよく乗り回している車、アルファードに辿り着いた。子猫がよくボンネットに入るのを耳にしたことがあったが、ボンネットより先に、下にいるのではないかと下を見るがいない。

 やはり、ボンネットなのか…
 ボンネットいない。
 ボンネットじゃないってことは、下!?

 よく目を凝らしてみると、エンジンルームに茶トラ柄の子猫がいるではないか。
 体操服ズボンに、制服のシャツ姿で、車の下に潜り、子猫を助けようとするが、子猫は勢いよく飛び出して逃げ出してしまった。
 追いかけると、玉ねぎが吊された草っ原にいて、石垣を登ろうとした。このまま放っておけば、この子の好きにさせてあげればという考えが頭を過ぎるが、子猫は一人で生きていくのは難しい、山奥に住んでいるから、猪や鹿、カラスにまで狙われてしまう、この子を放っておいたらダメだと思い、逃げようとする子猫を捕まえ、保護する。

 保護して、冷静に考えてみる。
⚫︎考察1. 3,40分ぐらいかかる高速道路に乗って、隣の市から来た
⚫︎考察2. 母が、私を迎えに来る前に寄った自分たちが住んでいる町の薬局で、子猫がエンジンルームに入り、そのまま隣の市の待ち合わせをしているセブンイレブンまで来たのか。

 薬局の人に母が聞いても、近所に猫はいないと言ってたし、もちろん家付近にも、子猫を産んだ猫がいるとは聞いたことがなかった。真相はまだ霧の中ではっきりしてはいないが、どっちにしろ、高速道路を乗って、我が家にやってきたことになる。80、90ぐらいのスピード出していたはずなのに、よく落ちなかったなと思う。

 保護をしたものの、当初はこの子を飼う予定はなかった。なぜかというと、家にすでに犬が4匹いたからだ。だから、猫を飼っている友達に声をかけたり、親も飼い主探しをしてくれたが、見つからなかった。時間が経つにつれて、懐き始め、手放せなくなり、最終的に飼うことに。

 保護した日、子猫は風邪をひいていたので、その日ちょうど飲み終わったホットのレモンティーのペットボトルにお湯と水をいい具合に入れて、タオルで巻き、小さなゲージみたいなところにブランケットと一緒に入れた。あと、かなり汚れていたので、桶に入れて洗っていた。かぐれながらも、何とか洗い、乾かすことができた。それから、ご飯をあげたら、ぐっすり寝てくれ、風邪も数日で回復した。


保護して2、3日。フードの中に入って寝ている。

 先住犬とは、別々に隔離して、飼い続けている。喧嘩して怪我したら大変だからだ。 

我が家のチワワ家族。上が親。下が子。

 この子の名前を紹介していなかった。名前はきなこ。



 さて、問題です。この子はメス、オスどっちでしょうか?



 答えはオスです。

 保護した日、この子の性別、どっちだろうと言う話になり、親と弟がメスだろうってことで、弟が「きなこ」って言う名前をつけたのだけど、3,4日目ぐらいで、違和感が……
「この子、オスじゃない?」
 当時この子と一緒に寝ていた私が、家族の前で抱いた疑問をぶつける。
「どれどれ、あ……」
 親はきなこを触って、声を漏らす。
「この子、自分がきなこと認識してしまっているからな」
「まぁ、いいじゃん、きなこで」
 弟が、腕を組みながら、仕方ないみたいな表情を浮かべて言う。

 それから、名前を変えずに、「きなこ」で、生きている。家族は皆、「きなこちゃん」と呼んでいる。オスだけど、「くん」付で呼んだことは一度もない。

 きなこちゃんは、日中は外で日向ぼっこをしていることが多い。家に閉じ込めてしまうと、家に来てから6カ月後、ニャーニャー(=外に出せ、このヤロ―)といいながら、部屋をぐるぐるカーレースのように回っていたので、去勢手術をして、お散歩用のハーネスに、長めのロープを柱に巻き付け、外に出すことにした。それがないと脱走してしまう恐れもあるし、家の周りには、猪対策用の電流が流れる柵が設置されていて危険である。それでも、庭を駆け回れるほどのスペースがあるため、窮屈な家にいるよりは満足しているようだ。

 約2年後、そんなきなこちゃんに相棒ができる。その相棒の名は三毛猫のくまこちゃん。

 彼女は、大阪にいた母の亡き妹が飼っていた猫である。くまこちゃんは、3年前に家にやってきた。最初は、脱走をしたり、きなこちゃんともギスギスしていたが、今では一緒に寝たり遊んだりするほど仲良しに。

何か話しているようだ

 衝撃的な登場をしたきなこちゃん。出会った時は、手のひらサイズだったのにいつの間にか大きくなっていたことに、驚きを隠せないが、元気に走り回っている様子や洗濯物に紛れて寝ている様子は愛おしい。たまに、蛇やネズミを追いかけていて、ヒヤヒヤさせられることも少なくはない。昔は甘えん坊だったが、今ではツンデレになってしまった。塩らしいのも猫らしい。

洗濯物に紛れている❶
洗濯物に紛れてる❷
ハイテンション期で、台所の棚に登り、私たちの日常を見渡している

 高速道路を乗り越えて我が家にやってきたきなこちゃん。これからも一緒に、道が続くまで、高速で走るのではなく、速度を出さずゆっくりと穏やかな日々を1日でも長く過ごせたらと思う。

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