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【初心者向け】スナック入門心得5ヶ条

昨晩行きつけのスナックでイケすかないお客さんがいたので、備忘録としてスナックへ行く際の心得をまとめておく。

※下記の心得は個人の思想信条によります。個人差、店舗差はありますのでご了承ください。


①店構えのカッコよさで選ぼう


好きな小説に山田詠美著『ぼくは勉強ができない』がある。
17歳男子高校生の恋愛譚で、ショットバーで働く22歳とお付き合いできるくらいにモテる。学年一のマドンナに告白されるほどモテる。相当モテる。

そんな彼は本を読む際に、著者がどんな顔をしているのか必ず見る。

ぼくは、桜井先生の影響で、色々な哲学の本やら小説やらを読むようになったが、そういう時、必ず著者の顔写真を探し出して来て、それとてらし合わせて文章を読む。いい顔をしていないやつの書くものは、どうも信用がならないのだ。へっ、こーんな難しいこと言っちゃって、でもおまえ女にもてないだろ。

文春文庫『ぼくは勉強ができない』山田詠美著


おもしろい文章を書く著者の顔はたいてい「いい」顔をしているらしい。

お店にとっての顔は「店構え」である。「いい店構え」のお店は、たいていおいしいし、居心地が良い。何より店員さんが素敵だ

スナックに入る際もこの店構えを見よう。次の3点をチェックして「良さそうだな」と思ったりピン!ときたら扉を開けてみよう。

・看板の有無
・料金提示の有無
・小窓の有無

ボクの好きなスナックの1つである渋谷・円山町の「ふじ」を掲載しておく。看板の色味が綺麗、料金が店頭で明示してある。小窓はないが歓迎ムードの暖簾があり、扉に耳をつければ楽しげな音が漏れ聞こえる。

スナックふじのママと、友人のT嶋くん

②初めてのお店は2人で行こう


スナックにはまずは2人で行こう。
1人で行けるなら良いが、おそらく初めて入るお店だと勇気が出ないかもしれない。
2人なら勇気が出る。ノリと勢いもある。お酒を片手に打ち明け話をしても良いし、マイク片手に歌っても良い。好きなお店になればまた行く理由になる。合わないお店だったら笑い話になる。

行きつけではない限り、スナックへ3人以上で行ってはいけない。広いスナックは少ない。大抵3人入ると他のお客さんが物理的にも精神的にも入りづらくなる。お店側にとっても、どんなお客さん達なのか把握できず、サービス提供しづらい。何よりうるさい。飲んで騒ぎたければ居酒屋かカラオケに行けば良い。

恋人同士や結ばれる直前のカップルで行くのも趣深い。お相手の品定めの場にもなるし、何より経験豊富なママたちが良いアシストをしてくれる。

何で出会ったかは知らないが、アラフォー既婚男性2人が20代前半女の子2人と計4人でカウンターを陣取っていた。男達はくだらない恋愛論を振りかざしては訓戒めいたことを女の子たちに教え、あげく男同士で己の結婚観を議論していた。酒がまずくなる。女の子達の空返事はもちろん、ママはカウンター内で煙草ふかしながら虚空を見つめていた。

スナックはお客さんが酒を飲んで楽しむ場所じゃない。あくまでもママが主役だ。お客さんがママを楽しませるのである。ママが楽しんでなかったら、それはお客さん側が悪いのである。詳しくは後述する。

③スナックは「ママ」が主役である

楽しくないのは自分自身が原因


「客は神様である」という戯言がある。
飲食や接客業を経験したことのない無知な人間による傲慢・強欲が結晶化した一文だ。声に出さずに忘却したい日本語だ。

スナックにおいて神様はママである。ママが主役である。なぜか?

理由は単純明快で、ママがお店を開けてくれているからだ。客が楽しい時間を過ごしに来店できるのは、ママがお店を守り、続け、今宵もOPENしてくれているからだ。今日までスナックが継続してあるのは、ママやキャストさんの努力の積み重ねに成り立っている。

そんな方々に「私たち客を楽しませろ」なんて言語道断だ。何様だ。客を楽しませられないくらい、ママが楽しめていないのである。お客さんが楽しめていないとすれば、それは自分自身が原因である。

ママを楽しませる方法

スナックで第一にするべきは「ママを楽しませる」ことだ。ではどうやって?

結論「ママの話を聞く」だ。別に大道芸をしたり、マジックをしたりしろとは言わない。誰でもできることで、「このお客さん、いい人だな」と思ってもらえればいいのだ。

ママの話を聞くにはどうしたらよいか?
重要なことは、ママを主語にした会話を展開することだ。

スナックでの定番は恋愛話だ。
恋愛話はその人の人となりが分かり、自己紹介代わりにも話しやすいトークテーマだ。
だが、恋愛「相談」になると途端に堂々巡りになり楽しくなくなる。変なアドバイスや持論が出やすくなる。酒がまずくなる。なるべく恋愛相談は避けなくてはならない

そこで、自分の恋愛話をするのではなく、ママの恋愛話を聞くのだ。「ママ」を主語にすれば尋ねやすい。

【誤例】
客:最近さ、離婚しちゃって…。ぜんぜん出会いもないから…。ぼくはどうしたらいいですかね?
ママ:そうねえ…(無言)

【正例】
客:最近さ、離婚しちゃって…。ぜんぜん出会いもないから…。ママは結婚とか恋愛どうですか??
ママ:離婚しちゃったか~。私もバツイチでいまの夫は2人目なんだよね。

ママを主語にするだけで、ママの人となりもわかるし、質問の幅も広げやすい。相手を主語にすることで会話のキャッチボールが生まれる。

加えて語尾や表現をあいまいにすることもオススメする。スナックは基本夜のお仕事のため、なかなか素性を明かしづらかったり、言えなかったりすることもある。そのとき表現をあいまいにすることで、相手にどこまで言うか委ねるのだ。

あいまいな表現で「どうですか?」はその典型例だ。
「●●してますか?」「●●は何してますか?」といったように動詞やWHAT表現だとストレートすぎる場合は、「●●どうですか?」とHOWに語尾を変えるだけであいまいになる。●●に結婚・恋愛・浮気・仕事などの言葉を当て込んでみてほしい。実感できるのではなかろうか。

④バラードで3割増しうまく歌おう


スナックの定番といえばカラオケだ。カラオケをするにあたって、東京近郊のスナックは1曲200円程度とるお店もあるが、地方のスナックでは無料で歌い放題のお店がほとんどである。

歌い放題だからといって何でも・ずっと歌っていいわけではない。他のお客さんと譲り合う思いやりが必要だし、何より「ママが主役」だ。ママが楽しめることが一番大事だ。

歌を聴く

まずは歌う前に、歌を聴く側の心得を。

ママを楽しませるには、お客さん同士が仲良くしなくてはいけない。険悪だったらママは気を使ってしまうでしょう?

そのために忘れてはならないのが「拍手」だ。他のお客さんが歌っているとき、サビ直後・曲終了時に拍手をしよう。「あなたの曲を聴いていましたよ」「素敵でしたよ」という意思表明になる。拍手されてイやな気持ちになる人はいない。

あと最低なのは、他のお客さんの曲終了時に自分の番を回そうと強制終了することだ。昨日、この愚行をアラフォー男性陣がしていた。悪である。自分で歌っていた曲を強制終了するのはよいが、他人の曲を無理やり終わらせるのは絶対ダメだ。曲終了までが歌い手のオンステージなのだ

歌を歌う

では、いざ歌おう。
初めて入るお店では、デンモクの履歴を一覧しておこう。客層やお店での人気曲をつかめるはずだ。
ママの年齢層を鑑みながら、ママの青春時代に人気だった曲を選定することをオススメする。たとえば60代であれば青春時代20代前後に流行ったのは次のようなアーティストだ。

・松田聖子
・中森明菜
・松任谷由美
・渡辺美里
・井上陽水
・長渕剛
・オフコース
・チェッカーズ
・サザンオールスターズ
・安全地帯

カラオケ苦手だがスナックで歌いたい/歌わなきゃいけないと思っている方へ朗報だ。なんとスナックでは歌が3割増しでうまくなる。マイク音量が大きく、バラードが好まれるからだ。

カラオケが苦手・不得手だという方の主な理由に「音痴」「声がでない」がある。だが、スナックではマイク音量が大きめのお店がほとんどだ。声の小さなおじいちゃんでも歌って気持ちよくなれる音量だ。さらにスナックの雰囲気もあいまって、落ち着いたバラード曲が好まれやすい。音痴でも落ち着いたバラードなら、ゆっくり・しっかり音程を確認しながら発声できる。

まぁ実際のところ音痴でも構わないのだ。みんな酔っぱらっているから。

男女問わず歌いやすくて誰もが知っているバラードであれば、サザンオールスターズ『涙のキッス』『真夏の果実』の2曲を携えていこう。

⑤ありがとう・おやすみなさい・こんばんは


幼い頃こっぴどく「元気よく挨拶をしましょう」と大人に言われたのに、いざ大人になると挨拶しない/できない。大人は嘘つきである。

だが、少なくともスナックでは幼少期に舞い戻り、元気に挨拶をしよう。次の3つを言えれば充分だ。すがすがしく、はっきりとした表情で気持ちよく伝えよう。

「ありがとう」(ママ・お客さんへの感謝)
「おやすみなさい」(ママ・お客さんへの気遣い)
「こんばんは」(ママのもとへ再訪)

さいごに

以上、スナック入門の心得5か条をまとめた。

スナックは社交場だ。一歩踏み込むにはハードルが高いかもしれないけれど、一度入ってしまえば素敵な自分の居場所になる。全国10万軒、ママが出迎えてくれるだろう。

良いお店を探そう。
良いお店に入ろう。
良いお店で楽しい時間を過ごそう。
そして、良いお店に繰り返し行こう。

ぜひスナックを楽しんでいきましょう。

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