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定年教師の独り言 Vol.12「雨の日は雨の中を…」

 6月…。お天気アプリの週間予報に☂️が並ぶようになった。自分が暮らす地域でも、そろそろ梅雨入りが宣言されるだろう。どんよりとした空と気分がリンクしてしまう。

 デイキャンパーとしても気の滅入る頃。出かけることが億劫になりがちだ。だが、今の自分なら、少々の雨であれば出かけない理由にならない。現役の頃、宿泊学習で自然の家の先生に教えてもらったことがきっかけだ。

 そもそも学校行事(とりわけ屋外行事)は、天候に振り回される。その年の宿泊学習も曇天の中スタートしたが、いよいよメインイベントのウォークラリーというところで雨が降り出してしまった。ああ、屋内用プログラムに切り替えなきゃ…と思っていたところに「これくらいの雨なら問題ないですよ。」と職員。小学生を引率する身としては躊躇したが、自信満々の笑顔に絆され、持ってきた雨具の力を信じて、予定通り行うことにした。

 実際、林の中に入ってみれば、雨具さえ必要ないほど。雨のほとんどは枝葉が凌いでくれるし、微かな雨音と霞のかかった薄暗い林は、むしろ神秘的でさえあった。もちろん、足元が滑りやすいことに気をつける必要はあるが、かえって子どもたちは慎重に行動するし、勝手な行動を取る子は一人もいなかった。

 「先生」なんて呼ばれる身でありながら、恥ずかしながら知らないことだらけ。実際にこの身で味わって初めて、判断に生かされるというものだ。以来、泊まりキャンプに出かける日に雨予報となっても、逆に楽しみにさえなった。テントやタープを叩く雨音はかえって心地よく、俗界から切り離された気分にしてくれる。車中泊に目覚めた今となっては、鉄のテントに守られているのだから余裕すら感じるほど。ガラスを伝う雨粒の軌跡も、ひとつの芸術。

 ことわっておくが、もちろん自然を侮ってなどいない。あくまで少々の雨であれば…の話だ。

 「雨の日は雨の中を…」
 集めていた相田みつを氏の詩集にあるこの言葉が、経験を通して体の中に入ってきた。それまでは、「雨だから」を、できない言い訳にしてきたが、雨だからこその過ごし方や楽しみがある。日本人は昔からそうやって、自然と付き合ってきていたはず。

 自宅近くにも職場にも、色とりどりの紫陽花が咲く頃。そういえば、紫陽花や菖蒲って、雨に濡れてこそ、花の色が輝くように思える。そんなふうに風情を感じられるようになってきたのも、歳をとったということなのかな…。



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