水平線 仙台名取閖上(千石英世『地図と夢』より)

まず液状のセメントのなかに
空気の立方体が生まれた
そのなかに
翼のない鳥が泳ぐ

ひらたい海があって
うねる砂の波がある

つぎに
沈没して行く子どもたち
沈没して行く太陽
海が沈む

砂の波に風が吹きわたり
風が波になる
波が風になる
砂が消えた

つぎに
ひらたい海がたたまれて
折り込まれて
ひらかれて
水の立方体を目指す
鳥に翼が生えてくる

濡れたまま透きとおって行く
その奥に
セメント色の液状平野が見えてくる



千石英世『地図と夢』収録
発行:七月堂

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