「光る手」より抜粋(山田亮太『誕生祭』より)

声を合わせて、
あるいは各々のタイミングで、
ひとつのことを、別々のことを、叫んでいる人々がいる。マイクを持って、あるいは持たずに、歌っている人々がいる。青い、赤い、黄色い、バルーンが舞っている。太鼓を叩いている人がいる。輪になっている人々がいる。音楽が鳴っている。踊っている人がいる。私はそこで何をするでもなくただいる人だった。十分にいたので、もう帰ろうと思うその帰り道、地下鉄の入り口の前の歩道に並んで立っている人々がいた。人と人との間はすべて同じ間隔が保たれていた。全員が同じ方向を向いていた。まっすぐに前を向いて、無言で立っていた。全員が同じ旗を持っていた。




山田亮太『誕生祭』収録
発行:七月堂

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