神性(佐々波美月『きみには歩きにくい星』より)

やけに抽象的で
だれも傷付ける気になれない
さみしい病気のような夜は
忘れられない匂いや
きみばかりをめぐらせて
わざと、ひとつなくしてみせたりする

だれを愛したこともないのに
世界平和のことばかり考える間抜けさに
(どれだけ痣ができても)
(すべて忘れてしまうかのように)
(まっしろに治るその肌に)
引き合わされて
くみあわせていた指で
どうしようもなく
祈っていた
祈っている
祈りつづけていた
のは
きみの中のまぼろし

幸せになってください、きっと、僕のしらないところで。
ふれたら、すりぬけてください。
きみのこと、なにも、知らないままで
どうか……。
下手くそな和訳みたいな愛だ
僕は
きみの純潔な街



佐々波美月『きみには歩きにくい星』収録
発行:七月堂

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