大地の踊り(ピエール・ルヴェルディ『死者たちの歌』より)

彗星が夜の中を逆漕する
光の 鉄道
毎日 もう一つ
いつでも もう一つ
私の名前の想起を削除する
瞼の上で縁どられた 瞳の巻き毛
つややかな裸の貝殻の上を 刺繍された手
ボタン穴のような眼差したちの房べり
毎晩 もう一つ
毎夕 もう一つ
障害のない長い力業(ちからわざ)たちのリスト
何と人は悲嘆から存在へと進むことか
未来の前兆なく 待機の中に支えなく
またしても早すぎる 雷鳴
行くべき道は もはやない
人は決してスタートラインに到着しはしないだろう
日々は 郵便受けの中の手紙たちのように滑り込む
夜々は 棺(ひつぎ)たちの底にある
生温い風によってばらばらにされた花々よ さらば
樅の木の枝々のように丸まった指たち
地面を熊手で掃く強情な多足類
深刻な表情の気のふれた頭 樹木に覆われた国境
大声で 雷と暴動の歌
不運のしゃっくりに揺さぶられた牢獄
もはやドアも 閉じた手も ブラックリストもなく
むき出しの足跡 轍(わだち)のない砂漠
地獄の鏡面での
虚無の 自由


ピエール・ルヴェルディ 著 / 佐々木洋 訳『死者たちの歌』収録
発行:七月堂

七月堂HP通販はこちら
七月堂古書部オンラインショップはこちら

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?