失われた部分(ピエール・ルヴェルディ 著 / 佐々木洋 訳『死者たちの歌』より)

私たちをほとんど進入させない回り道の中の
微笑みの献呈
決して失われることのない もうひとつの絆の網目が
息づく肉体をかきたて
君の手の中で 吐息をこらえている
一枚の翼が私のこめかみで閃く
明日 私は出て行こう
そして 脱輪した蒼い汽車の中には
想い出の葉という葉
夜よりも低いランプ
癒すことのできない恨み
すべては夢想の数を数えあげることに
気に入られるための嘘
気弱になりもせずに
二人が互いの死を知るための回り道には
もはや 誰一人として居はしないだろう



ピエール・ルヴェルディ 著 / 佐々木洋 訳『死者たちの歌』収録
発行:七月堂

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