もらったはいいけど、どうする、食べきれない大量の魚!そこから、大切な気づきを得た話。
元々広告代理店の社長で、今はソーシャルグッドプロデューサーを名乗っている石川さんと、千葉の房総半島に行ってきました。
SDGsがブームになっていますが、環境問題が無視できないほどに深刻になっています。その中で企業も今までの経済成長一辺倒の価値観から地球環境に配慮する転換を迫られています。
無印良品はその問題にいち早く気づき、ソーシャルグッドなカンパニーへと変わろうとしています。千葉の房総半島で地域のコミュニティの拠点となるような施設を運営し、地元で採れた野菜を販売したり、駆除された獣を活用したカレーを考えたり。そのような様々な取り組みを視察に行ってきたのでした。
道中、まるい鮮魚店という人気の魚屋さんに寄り、石川さんが気前よく発泡スチロールいっぱいの魚の詰め合わせをプレゼントしてくれました。
その数15匹くらいでしょうか。嬉しいと同時に、「どうしよう、これ」です(笑)
僕は一人暮らしをしているし、友達も皆離れたところに住んでいますから、どう考えても食べきれない。
一晩中魚をさばき続ける覚悟しました。
その時、ひらめきました。近くの商店街に和食の料理屋があり、一流の料理人が切り盛りしています。いつもお昼にはそこに行って、ボリュームたっぷりの魚定食を食べるのですが、そのお店のことを思い出したのです。
さっそく閉まる前のお店に飛んでいって、「たくさんの魚があるんだけど使ってくれないか」と掛け合うと、ちょうど明日の魚の仕入れが少なくて困っていたところだとか。
いい魚も入っているから好きなものを使ってくれというと、では、すべての魚をさばいて調理しやすいように冷凍しておいてあげますとのこと。さらに、無料でその場でさばいてもらい、定食にして出していただきました。
持ち込んだ魚を調理してもらい食べるというのは、なかなかプレミアムな体験でした。
そしてふと気がついたんです。
魚は腐ってしまうので溜めて取っておくことができません。消費するには食べる以外ないのですが、人の胃袋には限界があります。すると、自然に余った食材は人に分け与えることになるわけです。
分け与えるというのは、人間にとってとても大切な行為だと思います。分け与えるとそこにコミュニケーションが生まれ、受け取ったことに対する感謝の感情と、相手に喜んでもらえたことが嬉しいという感情が生まれます。
都会で生活する人にとって、人に分け与える機会というのは本当にありません。お金であらゆるものを交換するだけの生活では、そのような感情を育てることは難しい。
感情の劣化は深刻な問題です。自分の感情もわからず、他人の気持ちも考えられない、生きていることに対するワクワクも感じられず、そのような人々が営む社会は殺伐とするでしょう。現実に日本社会は格差が拡大し、人々にその背景を想像する想像力がなくなって自己責任論が蔓延しています。
その根本的な原因の一つは、分け与えるほどの食材を自分で作れないことなのかもしれません。
僕はお金も大好きなのですが(笑)、お金の外の世界も作り出していくことが心の豊かさにつながるだろうとやっぱり思います。
そう考えると、あえて食べきれないほどの食材を配るというのは、石川さんからのお題だったのかもしれませんね。
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