見出し画像

組織として成功(しなさい)

不知の自覚をせよ

「無知の知」はソクラテスの考え方として有名です。「無知の知」は「不知の自覚」とも言い換えられるそうですが、僕はこちらの方が直感的に理解できる気がします。

自分が知っている(知らない)範囲を明確に自覚することで、謙虚な知への向き合い方が生まれます。

私がこの不知を自覚したのは、23歳で起業に失敗した時でした。起業家はしばしば、「これは絶対に成功する」という思い込みにより、現実を見誤ります。私もその例に漏れず、失敗を通じて自分の無知を痛感しました。

新しい事業を立ち上げる際、何を知らないのかを明確にして仮説の検証を積み上げることが重要です。

とはいえ、不知の自覚は大切ですが、どんなに優秀な人間でも、人にはそれぞれに性格の違いや思考のクセがあり、視点の限界があります。客観的な判断を目指しても、完全に主観を排除することは不可能で、必ずどこかに見えていない落とし穴があるものです。


Netflixのカルチャー

僕は、企業のインナーブランディングに取り組むなかで、Netflixのカルチャーを研究することになりました。

そもそも企業の競争力・価値の源泉はどこにあるのか、ということですが、「ストーリーとしての競争戦略」によれば、企業の競争優位には2つのアプローチがあるといいます。SP(ポジショニング)と、OC(組織能力)の2つのアプローチです。

この違いのわかりやすい例えとして、著者は以下のように説明しています。「SPの違いがシェフのレシピであれば、OCの違いは、厨房に立つ料理人の腕や使用する包丁の切れ味といった企業の内部に蓄積された能力」である。

GAFAやNetflixのような企業は、その独自に定義されたカルチャーによって発揮される組織能力に競争力があるのだ、というのが一つの説です。

Netflixの大切にするカルチャーは以下のようなものです。

  1. 社員自身の意思決定を積極的に促す

  2. 情報は、広く、オープンかつ丁寧に共有する

  3. 率直かつ直接的なコミュニケーションをとる

  4. 優れた人材でチームを構成し続ける

  5. ルールをつくらない

私が採用ブランディングをサポートした会社には、Netflixにインスパイアされたカルチャーがありますが、3つに絞ってもう少しシンプルで覚えやすいものになっています。

  1. Be a pro(プロフェッショナルであれ)

  2. Freedom & Responsibility(自由と責任)

  3. Why no feedback(言いにくいことほど率直に伝える)

共通しているのは、まず素晴らしく優秀な人材のみをチームに入れることです。

そして、優秀な人材は自ら判断しアクションすることができるので、ルールをなるべく排除し、自由な意思決定を促します。自由な働き方は、社員のモチベーションを高めます。さらに承認のプロセスがシンプルなので、市場の変化に迅速に対応して、よりダイナミックな経営ができます。

ただ、個人が自由に意思決定することは、視野が狭くなり失敗を招くことがあります。そこで、忌憚のない相互のフィードバックを行うことで、意思決定の精度を高めます。その経験は蓄積され、組織としての能力密度が高まります。

情報の透明性はその前提として欠かせないものです。お互いのアクションが白日の下に晒されていることで、誰であってもお互いにフィードバックを出すことができるのです。

この3つのカルチャーは頭で覚えることは容易いですが、実践のためには深いカルチャー理解が必要です。そして、このカルチャーの本質はフィードバックにあるのではないか、その価値について考える必要があるのではないか、と考えました。

レイダリオの「成功の原則」

Netflixカルチャーを知るうちに、以前に読んだレイダリオの「成功の原則」という本の内容を思い出しました。レイダリオは、投資ファンドの運営で世界トップクラスの資産家になった投資家です。「成功の原則」には、彼がファンドを運営していくなかで気づいた、成功するために欠かせない考え方をまとめています。

この本とNetflixカルチャーには大きな共通点があるように感じられました。

レイダリオは成功に辿り着くステップには原則があると考えました。

①大胆な目標を持ち自分の頭で考えることができる人がいます。
②目標に近づくためのアイディアを模索します。
③原則に基づいてアイディアの中から最良のものを選び取る意思決定をします。
④アクションがうまくいけば成功します。
⑤ただし難しいことにチャレンジしている以上、成功がずっと続くわけではありません。
⑥失敗を受け入れ、何が失敗をもたらしたか学習をします。
⑦学びは最大の報酬です。次は同じ失敗をしません。
⑧失敗を乗り越えて、さらに大胆な目標にチャレンジすることができます。

さて、この本では失敗と学習について一人で行うのではなく、自分とは異なるものの見方をできる仲間に助けてもらいながら、失敗を克服することを薦めています。どれほど優秀な人間であっても必ず落とし穴はあるので、違う角度からものを見れる仲間と視線を補い合うことで、一人で行動するよりもはやく成功に辿り着くことができるのです。

組織で取り組むことの意味

ここに、個人ではなく組織として活動することの大きな意味があるのではないかと考えます。Netflixカルチャーもレイダリオも、個人の不知の問題を集団の多角的なものの見方によって、構造的に解決することで成功を目指している点で同じでした。

だから理想的な組織は、ただ仲良しこよしでつるんでいる集団ではありませんし、自由とは言ってもただバラバラの個人の集合でもありません。それぞれのプロフェッショナリズムを賭けて、激論を交わす組織こそ価値のある組織なのです。もはや成功を手に入れることよりも、その過程における仲間との激論こそが、最大の報酬です。

そして、その組織に所属する人間のあり方にも条件があります。それは、フィードバックを正しく受け入れるために、エゴ・プライドを捨てられることです。

「俺はジャズしか聞かない音楽センスに優れたイケてる人間だから、最近巷で流行ってる音楽センスのないパンピーが聴いてるJ-popなんて聴かねえ」という変なプライドが新しいイケてる音楽との出会いを妨げてしまいます。

エゴ・プライドは、無知をもたらしますが、よりタチの悪いものです。単に知らないのではなく、心を守るために、無知でいることを積極的に選択しているからです。自分の欠点を自覚して、恥ずかしさを感じる居心地の悪さは、成功に近づいている証拠です。


さあ、組織として成功を目指しませんか!

(サムネイルはChat GPTに作ってもらったのですが、なかなかスペルを正しく書いてくれません…)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?