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TKA患者のKneeling Ability

人工膝関節置換術:TKA患者の改善しにくい動作に 膝つき(kneeling)があります。患者さんからも『膝がつけない』といった話を聞きくことがあります。膝つき動作に絞って理学療法を行うことってあまりないのは私だけでしょうか…?そんな膝つき動作に関して調べてみました。

どれくらいのTKA患者が膝をつけるの?


下記の論文では、TKA患者の膝つき動作に関してメタ解析を行っています。

Nadeem et al. “Surgery-related predictors of kneeling ability following total knee arthroplasty: a systematic review and meta-analysis” in the Knee Surg & Relat Res (2021) 33:36

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結果、報告によって割合は様々なようですが、術後1年経過したあとも40%前後の方しか膝がつけないみたいです。地域差や性別、kneelingの定義の仕方によっても変わりそうですが。皆さんの印象と比べてどうでしょうか…?個人的な印象としては、こんなにできない人が多いとは思っていませんでした。

TKA後に膝を付けない理由は?

それでは、なぜ膝をつく動作ができないのでしょうか?Smithらの報告では、術後1年が経過したTKA患者に膝を付けない理由を聴取し、下記の結果となっています。

J. R. A. Smith et al. “Why do patients not kneel after total knee replacement? Is neuropathic pain a contributing factor?” in the Knee 26 (2019) 427-434

・違和感がある
・術創部の痛みのため
・術創部にしびれがあるため
・膝が硬いから
・立ち上がることができないから
・人工関節の感触があるため
・人工関節のノイズのため
・その他の関節や背中の痛みのため
・膝をつかないように言われたから

痛みやしびれの持続、可動域、筋力、それぞれに問題があるようですが、意外にも私達医療職が理由で膝を付けない人も一定数存在するみたいです。手術者によっては膝を付いてほしくないと考える医師もいると思いますので、各病院単位で医師に確認する必要があります。

膝つき困難さと痛み、可動域の関係は?

またSmithらの論文では、膝つき困難さと膝関節屈曲可動域およびpainDETECTの関係についても調査しています。painDETECTは患者記入式の神経障害性疼痛のスクリーニングツールです。痛みの声質によってカットオフ値を設けており、−1〜12点を侵害受容性疼痛、13−18点を神経障害性疼痛の可能性、19点以上を神経障害性疼痛と判断します。

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膝屈曲制限があると膝つきが困難になるのは私の印象と一緒です。ただ、膝つきが困難な人は創部周囲のしびれや違和感を主訴とする印象が強かったので…膝前面痛について深堀りして対応する必要性を感じます。ちなみに、上記の膝をつけない理由とpainDETECTの関係も調査されていますが、創部周囲のしびれを有した対象においても平均12点となっており、painDETECT上は神経障害性疼痛に該当していません。TKA後の膝前面痛に関しては、今後の記事で紹介できればと思います。

膝つき動作に対する対応策(私の考え)

今回調べた内容をもとに、膝つき動作に関する対応策として私の考えをまとめました。

✓症状………膝前面の痛み、しびれの改善
✓可動域……屈曲可動域の拡大
✓動作………立ち上がり能力の向上(筋力・動作練習)
✓患者教育…医師とコメディカルの情報共有、パンフレットなどを用いて情報提供

一つずつコツコツ取り組まないといけないですね...


5年後くらいの論文では、膝つき動作が出来る人の割合が増えていくと嬉しいですね。今回の記事でTKA後の膝つき動作に興味を持って頂けると幸いです。

最後までお読み頂きありがとうございました!

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