No.99 「ニュートン」500号 大全史 雑感

 この程, 「ニュートン (Newton)」が2023年3月号で500号を迎えたらしい(本屋に行ったら, 結構な数が並んでいて, それで気が付いた). 「ニュートン」とも随分ご無沙汰しているが, ナントカ大全的特集の時は色々とまとまっていて便利なので, 気付いたら購入するようにはしていた. ただ, それも5, 6年に1度くらいでここ20年くらいは多分5, 6冊くらいしか買っていないと思う(それこそ竹内均も亡くなって20年くらい経つのではないか). そんな私でも, 流石に500号記念号は買わざるを得ないので, 随分と久しぶりに購入してみた.

 まず驚いたのが, 

「まだ500号に行っていなかった」

ということ. 「ニュートン」なんかはとうの昔に500号(41年と8か月)くらい行っている気がしていたが, やはり存外「新しい雑誌」であるということを改めて思い知った. 確かに「ニュートン」といえば, (今はどうかは知らないが少なくとも昔は)「コンビニに並んでいる雑誌」というイメージだったので, コンビニの勃興と軌を一にしているイメージがあり, そういう意味でも今500号というのは頷ける. 

 次いで「安さ」である. 私の知っている雑誌はここ2, 30年で値上げを何度かしているが, 「ニュートン」は全ページカラーで144ページもあるのに, 今でも税込み 1,190 円は信じ難いほど安い. 未だにこのカラクリ(それなりに需要も供給も高い?)はわかっていないが, 驚くべきことであることに違いない. 

 「安さ」(つまり需要の高さ)とも関係しているのだろうが, 扱う topics の広さも改めて驚かされる. 「ニュートン」の上位互換(?)にあたる「日経サイエンス」は『「ニュートン」より「狭く深く」』した感じがあるが, 歳を取ると, 「広く浅く」サッと読める方が需要があるような気がする(「狭く深く」やりたい場合は今は自分で調べた方がはやい). 

 topics といえば, 今回の500号記念号の500号の特集一覧を眺めて気付いたが, 編集部の変遷なのか, 時代ごとに色々な傾向が見て取れる. たとえば40年前の創刊当時は編集長の竹内均の専門が地球科学だったことや, まだ冷戦が終わっておらず(更にはチャレンジャー号事件の前で)宇宙開発(探査機ラッシュの時代)もまだ熱かった時代ゆえか, 地学系や宇宙系の特集が多かったような気がする(実際, 創刊100号と200号, 10周年と20周年の特集は地学系だった). これに加え, 21世紀前後からはゲノム等の生物系が増えてきて, 20年前に竹内均が亡くなったあたりが一つの節目, 折り返しだったように思う.

 私個人としてもこの辺からは「ご無沙汰」でよく知らないのだが, ここから taste が少し変わって, 更にここ5, 6年は物理の基本, あるいは数学系の特集が, 文字通り目に見えて増えてまた雰囲気がガラッと変わった印象を受ける. 時代が進むごとに, 却って基礎科学系へと回帰していく様はまた色々と興味深い. 「オトナの事情」的なことをいえば, こういうのは誰かひとり適当な人( advisor )を捕まえておけば, 適当に使いまわせるので, 制作が楽になるという実際上のメリットが大きいのだろうが, それに加えてビッグデータとか, AIとかの「トレンド」(需要)ともマッチして, 「味を占めている」のだと推察する. ただ同時に「昔の味」も, 忘れずに時折混ぜてくるのは流石だと思う. 

 しかし何にせよ, よく40年以上ももったものである. 昔, 何かで

『(自分の教え子たちに?)竹内先生がやるなら「ニュートン」は1年で潰れる, と言われたが幸いにも(幸か不幸か?)そうならなかった』

的なことを竹内均本人がどこかに書いていたような気がするが, それこそ良くも悪くも「ヴィジュアル系!?(グラフィック系)」である特色を生かしながら, ツッコミどころは(今月も)多々あるものの絶妙な匙加減(アレではあるが, デタラメ, インチキとは言い難いライン)で, 潰れずによくもったのは事実である(まぁ, 何度か「騒動」もあったようだが). しかもそれが「コンビニで買える」(少なくとも昔は買えた)のだから, どうして中々大したものであろう. 実際, 「ニュートン」は果たしてきた役割, 貢献はこの40年で積分すると, このテのどの雑誌よりも大きいかもしれない. 

 そんなわけで今後も「ニュートン」には頑張ってほしいが, 一つ気になったのは

「最近は別冊とかはどうなっているのか」

ということ. 昔だったら, 人気の特集や人気の記事は, taste が近い物同士をパッケージにして別冊で出し直していた(ようは再販)が, 最近はその辺の仕組みはどうなっているのだろう. せっかく500号も続いたのだから, 「あの記事をもう一度」的な特集, 企画, 再販も定期的に行って行って欲しいものである. 

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