オカベテツヤ|Tetsuya Okabe

50歳からの熟成ライフスタイル考。神戸出身、東京在住。/ 教育と学習/ 呑み喰い/ フ…

オカベテツヤ|Tetsuya Okabe

50歳からの熟成ライフスタイル考。神戸出身、東京在住。/ 教育と学習/ 呑み喰い/ フライフィッシング/ フットパス/ ハードSF/ ディクスン・カー/ 岡部伊都子/etc

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最近の記事

【中国SF】 陳楸帆『荒潮』に読む、絶望

見ましたか? 先月の第3回世界S F作家会議。 なんだろう、コロナ禍で3回目なんだけど、続いているのが素直に嬉しい。そして今回は、会議そのものにチェン氏が登場したので、昨年読んだ本だが陳楸帆(チェン・チウファン)『荒潮(あらしお)』を紹介しておく。 日本では去年に書籍化されたが、作品そのものは7年前、2013年の長編デビュー作だ。著者である英名スタンリー・チェンこと陳楸帆氏は、1981年広東省(中華人民共和国)生まれで、なんと米国Googleでのキャリアもあり、しかもイケ

    • 渋沢栄一『雨夜譚』の解説の件

      『青天を衝け』のオープンセットがすごいらしいが、岩波文庫の渋沢栄一自伝『雨夜譚』は、うしろの解説がすごいよ、とおすすめしておく。ちょっと引用多めで。 言うまでもなく、“青淵先生”こと渋沢栄一の口伝パートは 最初農商の身からにわかに浪人となり、浪人から一橋家に仕官してついにヨーロッパに行き、やむを得ざる事から帰って来て、静岡に幽棲する意念であったが、朝命辞すること能わず現政府に奉職した のようにすごい。詳しくはないが、これを読む限り、渋沢栄一って 熟ら将来日本の経済を考

      • 追悼。ジャックさん

        「嗚呼、これで今年の夏は法善寺祭り行けるかな」と思った。東京でも感染者数が減りつつあった2021年の立春、ジャックさんの急逝を知った。一月だったらしい。LINEで連絡をくれた大阪の後輩が、法善寺を訪れてビデオ通話でつないでくれた。こっちも一杯やりつつバーテンダーのトモさんに詳しい話しをきいた。 30年も前の話しだ。20歳のころ、バイト先の先輩に連れられて初めて訪れた大阪ミナミ、法善寺横丁のバー『JACK'S INN』のマスターがジャックさんだ。(実はトモさんも当時はバイト先

        • 歩くことと、人流

          コロナ禍になって、歩くことが多くなった。 去年は『地球の歩き方 東京』が売れたらしいし、世の中的にもウォーキングが見直されているのかな? そんな折に文庫化された『英国流 旅の作法 グランド・ツアーから庭園文化まで』を読んだ。ざっくりいうと、18世紀、産業革命のころのイギリスで流行ったロマン主義的な「徒歩旅行」について興味深い歴史と文化を教えてくれる、みたいな内容だ。 もともとイギリス発祥の「フットパス」を知ってはいたが、どちらかというと自然嗜好の印象だった。この本を読む

        【中国SF】 陳楸帆『荒潮』に読む、絶望

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        • SFとは希望である
          3本
        • ふつうのSTEAM教育
          0本

        記事

          漫画『チェンソーマン』の感想

          春から大学生の息子のススメで読んでみた。 日常の恐怖や不安といかに向き合うかについて考えさせられた。コロナ禍で世界中が不安とかそういう負の感情と戦っているさなかに。 とある悪魔と契約することで魔人と化す、みたいなことが物語の設定。 そんで悪魔は「〜の悪魔」という風にいろいろ出てくる。たとえば主人公なら「チェンソーの悪魔」と契約したわけ。 そして、ここがポイント。「〜の悪魔」の力、その悪魔と契約した魔人の強さは「〜」に対して人々が抱いている恐怖や不安の大小に比例している

          漫画『チェンソーマン』の感想

          【米国SF】 ロバート・アンスン・ハインライン『夏への扉』に読む、労働

          コロナ禍で『夏への扉』が公開延期になったらしい。 原作は、何を今さらというアメリカの有名SF作家による名作。なんと1956年に発表された作品である。ロバート・アンスン・ハインライン『夏への扉(The Door into Summer)』だ。物語の舞台は、1970年と、その30年後の2000年。時間旅行で行き来する。いわゆる”タイムトラベルもの”のはしりである。SF映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』や、日本SFの『時をかける少女』など後世の作品に大きな影響を与えた。しかし

          【米国SF】 ロバート・アンスン・ハインライン『夏への扉』に読む、労働

          【米国ミステリ】 ディーリア・オーエンズ『ザリガニの鳴くところ』に読む、現実

          ザリガニといえばアメリカザリガニだ。 先日、はじめてのnoteへの投稿では、とある中国SF作品を紹介した。ここでは、それととても対称的なアメリカの作品について、SFでもなく、今年でもなく去年の本なのだが、忘れないうちにおすすめしておきたいと思う。 ディーリア・オーエンズ『ザリガニの鳴くところ(Where the Crawdads Sing)』だ。一昨年のアメリカ国内でのベストセラーの邦訳であり、昨年、話題となった。なんと70歳の女性動物学者によるデビュー作というのだから驚

          【米国ミステリ】 ディーリア・オーエンズ『ザリガニの鳴くところ』に読む、現実

          【中国SF】 郝景芳『人之彼岸』に読む、希望

          「SFとは希望である」は、高校の大先輩の言葉らしい。 ここ数年、いわゆる中国SFを読むことが多くなった。実証産業組織論などで研究が進む現代中国は、もちろん清濁はあるけれど、いま世界中が何かを学ぼうとしている対象だろう。これから世界のヘゲモニーの行方は定かではないけれど、コロナショックを経て、まるで第二次世界大戦後のようなリスタートの時期であることは間違いない。 そのようななか現代中国のSF小説に、ドキドキしながらページをめくるのは僕だけではないだろう。 2021年の一冊

          【中国SF】 郝景芳『人之彼岸』に読む、希望