まだ覚えている話

2012年の夏は暑かった。

私は当時推していたももクロの「夏の馬鹿騒ぎ2012」を観るために西武ドーム(当時)に居た。

その頃のももクロちゃんの勢いたるや凄まじく、まさに破竹の勢いでアイドルシーンを席巻しようとしていた。

私も元気な彼女らに好感を持ち、よく現場に通っていた。SNSはmixiの他、Twitterもユーザーがじわじわ増え始めていて、ファン同士の交流も活発になっていた。

その日の西武ドームの最寄り駅も大混雑で、私は近くのコンビニで水とアイスを買い、木陰に立って涼んでいた。

近くの木陰では、メンバーのコスプレをした女の子が居て、知り合いと仲良く話し込んでいた。どうやら、界隈ではそこそこ有名人のようだった。

そんな彼女に、ヒョロっとした男の子が話しかけていた。彼女は名前を聞いてとても驚いて、やっと会えたとかそんな話をして、仲良くスマホでツーショを撮っていた。

男の子はお世辞にも目立つタイプではなく、でも彼女とは(おそらく)SNSか何かでやり取りがあったのだろう。彼女が交流を喜んでいた事で、何だか私も安心していた。

いや、もっと言うと少し感動していた。非モテっぽい男の子が勇気を出してイケてる女の子に声を掛けて、暖かく迎えられた事に。

何だそれだけか、と思うかもしれない。ただ、私にはとても貴重で大切な瞬間に思えた。キラキラしていた。

この話にオチは無い。
その後二人はどうなったかは勿論知らない。

何処にでも転がっている話。
時間にすれば30秒もなかった話。
でも、まだ覚えている話。

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夏の思い出

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