見出し画像

僕とポケモンGOとAさんと


 
社会現象にもなったポケモンGOだが、徐々にアクティブユーザーが減少し、今も続けている人のほうが珍しいかもしれない。
その珍しいうちの一人が僕で、そして仕事で知り合ったAさんだった。
 
そのAさんが先日、急逝した。
 
病を患っていたのは聞いていたが、治療が一段落して快方に向かったと言っていたので、安心していたところだった。
数年前、最後に秋葉原で会ったとき、Aさんは、息子さんと一緒に遊んでいてゲットしたポケモンを見せてくれた。そのポケモンを、今は事情があって別々に暮らしている息子さんだと思って大切にしていたようだった。
周囲にはポケモンGO仲間はほとんどいないので、どこに珍しいポケモンが出るとか、次のイベントはいつだとか、そんな話をして別れた。
次に直接会ってポケモン交換する日を楽しみにしていたのに、その日は永遠に失われた。
 
訃報から二日後の葬儀に、前後の用事をなんとか調整し参加することができた。
Aさんは、最後に会った時と全く変わらない顔で眠っていた。
ニュートラルでも笑っているように見える人だったので、苦しんで逝ったようには見えなかった。
 
葬儀には息子さんも参列していた。
まだあどけない顔立ちだったが、すでにポケモンGOに夢中になっているような年齢ではないように見えた。
 
ご遺族に了承をとって、息子さんに声をかけた。
ポケモンGOでは、ポケモン一匹ごとに、ゲットした場所と時間が記録されている。
息子さんがAさんのスマホを開けば、Aさんと息子さんの思い出のポケモンを見つけることや、その後、AさんがポケモンGOをどんな場所で遊んでいたかなどがわかるはずだ。
また、ゲーム内でAさんをフレンド登録している僕も、非常に断片的ではあるが、Aさんの遊んでいる場所や時間を推測できた。
Aさんは、少なくとも去年まではポケモンを探してあちこち歩いていたようだった。レベルは39。初期最高の40まであと一歩。たまに催されるイベント日のためにパワーアップアイテムを貯めていた様子だった。
 
息子さんにはそんな話をした。彼は涙を流した。
伝えるべきだったかどうかわからないが、次の機会が僕にあるかもわからなかったから。
 
僕が子供の頃、ゲームは子供だけのもので、たかがゲームだった。
だけど今は、その子供が大人になり、自分の子供と遊ぶ、されどゲーム。
多くのソーシャルゲームは人気がなくなると運営終了となって遊べなくなるが、ポケモンGOはすでに7年目に突入した長寿コンテンツだ。
たまに数分だけでも、そして課金に応じなくとも、のんびり遊べるゲームで、まだ世界中の人が楽しんでいる。
僕もコツコツ7年間遊んでいるゲームというのは初めてで、そのぶん、ポケモンボックス内に長く残っているポケモンほど現実と結びついた思い出がある。Aさんとの思い出もそのひとつだ。
ラン仲間の旦那さんや仕事仲間の娘さんと、会ったこともないのにゲームの中ではフレンドになっていて、ギフト送付を続けたりしている。
今やゲームも、僕が描いている絵と同じく、言語や距離や年齢を越えて人と繋がれる手段なのだ。
  
斎場からの帰り道、ポケモンGOを起動したら、最寄り駅前で非常にレアなキバゴというポケモンをゲットすることができた。
それはAさんがくれたささやかな置き土産かもしれないので、間違って消さないようにお気に入りマークを付けておいた。
 
Aさん、どうか安らかに。
そのうちそちらで交換できるよう、珍しいポケモンを集めておきます。

この記事が参加している募集

親子で楽しめるゲーム

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?