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デザイナーズ団地~東雲キャナルコートCODAN~

団地にもデザイナーズ賃貸があるのをご存じでしょうか?
団地の古いイメージと、デザイナーズのオシャレなイメージがいまいち結びつきませんよね。笑
今回は有名建築家たちが設計したデザイナーズ団地「東雲キャナルコートCODAN」を紹介いたします。

東雲キャナルコートCODANは、東京都江東区の湾岸エリアにUR都市機構が整備したデザイナーズ賃貸住宅です。
タワーマンションが林立するエリアの中で、あえて建物の高さを抑えて配置されているのが特徴です。このデザイナーズ団地は「住むことを、デザインする。」をコンセプトに、建築家とランドスケープデザイナー、UR都市機構の コラボレーションによる新しい「暮らし」の提案をしています。

東雲キャナルコートCODANは6街区に分かれており、それぞれの街区で各建築家が設計を担当しています。
各街区ごとに異なる住まいの提案が行われています。1街区から順に見ていきましょう。

1街区の設計は山本理顕氏です。最近、建築界のノーベル賞とも呼ばれる「プリツカー賞」に受賞したことでも有名ですよね。
住宅を閉鎖的な住宅としてではなく、できるだけ「外に対して開いていく」ことをテーマにしています。
建物のところどころにコモンヴォイドと呼ばれる開口があけられています。この空間は2層吹き抜けの共用空間「コモンテラス」となっており、居住者の身近な広場として活用できます。
コモンテラスに隣接する部屋は「f(ホワイエ)-ルーム」となっており、住居併用のオフィス、いわゆるSOHO的な使い方ができます。
こういった住居内だけに留まらない仕掛けをすることで、外に開いた暮らしを提案しています。

1街区:2層吹き抜けのコモンヴォイド
1街区:ウッドデッキとひと続きのコモンテラス

2街区の設計は伊東豊雄氏です。せんだいメディアテークやTOD’S表参道ビルなどを手掛けた世界的な建築家です。
都心型の賃貸住宅ということを意識し 「多様な住まい方」を大きなテーマにしています。
2街区のコモンヴォイドは1街区とは異なり「プライベートテラス」となっています。プライベートテラスをはさんだ位置には「アネックスルーム」(はなれ)や、プライバシーが守られた半屋外空間「コンサヴァトリー」を設けたりと従来の賃貸住宅にはない、贅沢な空間を使った暮らしを提案しています。
また、1階に保育施設があるところも嬉しいポイントですね。

2街区:1階の保育施設

3街区の設計は隈研吾氏です。新国立競技場を設計したことで有名ですよね。
1,2街区の雰囲気とは変わり、明るく開放感のある空間構成となっています。伝統的な日本建築の良さを生かした片廊下型を採用し、光や風を取り込んだ空間としています。
ガラスに囲まれた半屋外空間の「インナーバルコニー」や住棟間の吹抜け空間「コミュニケーション・アトリウム」などが設けられており、外部の環境を取り込んだ気持ちの良い空間を提案しています。

3街区:コミュニケーション・アトリウム

4街区の設計は山田正司氏です。タウンハウス諏訪などを設計し、都市型の低中層集合住宅を提案した方です。
居住者が共有できるコモンスペースのあり方について、重点をおいて計画されています。
団地の中央を貫く”パブリック”な通りS字アヴェニューと、通りに接している”動的なコモンスペース”2階中庭、住居に近い”静的なコモンスペース”3階中庭とパブリック〜コモンスペースへのつなぎが見事です。
高層高密な空間の中でもパブリック〜コモンスペースをうまくつなげることで、居住者同志が気軽にコミュニケーションを取れるようにしています。

4街区:静的なコモンスペース

5街区の設計はADHとWORKSTATIONの共同設計です。どちらの事務所も様々な賞を受賞しています。
5街区は自然環境と連続した都心型の住まいを提案しているのが特徴です。
低層棟と高層棟の間にガーデンを設けることで居住者間の庭的な”コモンスペース”を創出しています。また、高層棟に1階から最上階までの吹抜けと大きな開口を設けることで、水平・垂直方向から光と風が入り込む中廊下となっています。

5街区:住棟間のガーデンスペース

6街区の設計はスタジオ建築計画と山本・堀アーキテクツの共同設計です。どちらも団地設計に実績のある事務所です。
半屋外空間から人の動きを伝えることで活気あふれる立体都市の風景を作っています。
共用廊下を南側に持つ階と北側に持つ階とどちらにも混在させたり、S字アベニューに面して大きな芝生の斜面を設けたりすることによって、外に向けて人の動きを伝える試みをしています。

6街区:南側の共用廊下

1〜6街区の試みを見ますと、どの街区でも住居内で完結させないというところが共通していますね。開口を設けて光と風を取り込んだり、コモンスペースを設けることで居住者間のコミュニティ創出を図っています。当時の時代背景として、「一住宅一家族」の暮らしがもたらしたコミュニティの希薄をハードの面で解決しようと取り込んでいた時期だったのでしょうね。

デザイナーズ団地はいかがだったでしょうか。ただおしゃれなだけではなく、住宅の課題に建築家が挑んだ面白い事例ではなかったでしょうか?
ご興味あったらぜひ足を運んでみてください!


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