『結婚のあいさつ』

「おいしかったね ありがとね」

「はい」

「こんなクルーズディナー、彼女とくるやつでしょ?」

「そうですかね?」

「あんなケーキのサプライズまでしてくれて」

「はい」

「ワインもすごかったね 僕の生まれ年の用意してくれて」

「はい」

「楽しい誕生日になったよ ありがとう」

「お父さん (ひざまずいて)娘さんを僕に下さい」

「やりすぎじゃない?」

「え?」

「やりすぎだよ」 「結婚のあいさつに力入れすぎだろ」

「え?」

「プロポーズでやれや 彼女の父親とクルーズディナーなんて行かないよ」

「お義父さん 僕は本気です」

「それは伝わってる お金かけすぎだもん おじさんがサプライズのケーキもらってどんな顔すればいいんだよ 部屋が暗くなった時震えたよ」

「どうしても娘さんと結婚したくて」

「愛してくれてありがとうな うちの娘を でも大丈夫か? 
結婚のあいさつにこんなにお金かけて、プロポーズ大変だっただろ?」

「僕は、プロポーズは日常に溶け込ませたいタイプなんです」

「ん? どういうこと?」

「風呂上がりのドライヤー中に かましました」

「ばかかよ こいつ うちの娘かわいそうだろ」

「は?」

「お前、プロポーズにかけるお金、結婚のあいさつにかけてんだよ 
逆なんだよ  全部プロポーズでやれや あれか? 結婚のあいさつにお金かけすぎて、プロポーズにお金かけられなくなったのか?」

「違いますよ 彼女がそんなにお金かけなくていいよって言ってくれたんです」

「そりゃ、建前だよ」

「はぁ?」

「お前はきっと、非正規雇用だな? そんだけバカだったら、正規雇用なはずないよ」

「なんでそんなこと言うんですか?」

「非正規のやつにお金求められないだろ お前みたいなやつに娘はやれないよ」

「はぁ?」

「娘に一番金かけないやつ、信用できないよ」

「ふっざけんなよ 今日、17万使ってんだぞ」

「なんでキレてんだよ プロポーズでやれや 17万も」

「このフレンチ、割り勘ね」

「最低!! お前みたいなやつと結婚しても幸せになれないよ」

「あんたの娘と結婚したくて、めっちゃお金かけたんだぞ 
この後、スカイツリーに(please me,your daughter?)って写し出される予定なんだぞ」

「プロポーズでやれや 消せ消せ 恥ずかしい そんなの」

「花火だってあがるし」

「プロポーズでやれや」

「ハートの形だよ」

「恥ずかしいわ」

「ほら、指輪にお義父さんの誕生日が刻印したんだぞ」

「プロポーズでやれや 結婚記念日を指輪に刻印しろ」

「あと10分でフラッシュモブ始まるから」

「プロポーズでやれや」

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