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着やせするタイプ

Sミットストアのペットボトル破砕機に先客がいた。
順番待ちをしながらなんとなくその女性の動きを観察していたのだが、すぐにムズムズしてきた。
キャップを外し、ペットボトルをそっと破砕機の投入口へ。
ボトルが奥へ吸い込まれてガラガラと破砕音がするまで待ってから、外したキャップを左手の専用容器にポン。
そして腕にかけた紙袋から次のペットボトルを取り出してキャップを……。

私はひどく急いでいたわけではないし、
時間を1秒もムダにしてはいけない! なんて考えの持ち主でもない。
でも、目の前の女性に共感するのは難しい。
だって、破砕機はいったん起動してしまえば全自動なのだ。
だから、投入後の動きをじっくり見守る必要なんてない。
1本入れたらすぐに、次の1本の準備にとりかかればいいのだ。

彼女の座右の銘は、「早くやるよりちゃんとやる」のような気がする。
その考え方を否定するつもりはない。
でも、いま行っている作業に限っていえば、
「ちゃんとやる」べきなのは、ボトルを投入するところまでてよいのではないか。
その後のことは、機械の仕事なんだから。

彼女が持つ紙袋には、まだかなりの量のペットボトルが入っていそうだ。
とりあえず背後から「もうちょっと早く~」「少し急ぎませんか~」と念を送ってみた。
もちろん、作業のペースはまったくかわらなかった。

彼女と私は、おそらく別の時間を生きているのだろう。
同じとき、同じ場所にいるけれど、流れる時間の速さは違うのだ。
そういえば、「ゾウの時間とネズミの時間」なんて言葉がある。
ゾウが感じる時間はネズミよりずっとゆっくりなんですよ、というやつだ。
でも、それってなぜ?
破砕機待ちの退屈しのぎに、スマホで検索してみた。

私が見たサイトによると、ゾウの時間はネズミの18倍もゆっくりらしい。
そして、こうした違いは体のサイズに応じているのだそうだ。
数字に弱いので計算法は理解できそうにないけれど、
「体重が10倍になると、時間が1.8倍遅くなる」とあった。

ん? ちょっと待て。
ペットボトル破砕作業を続けている女性と私の時間の速さは
まさに1.8倍ぐらい違う気がする。
……ってことは?
彼女の体重は、私の10倍あるわけだ。
ふ~ん。そうなのか。
ごく普通の体形に見えるけど。
彼女はきっと、着やせするタイプなのだろう。極端に。


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