【邦画】コーヒーが冷めないうちに(2018)
監督:塚原あゆ子
出演:有村架純、伊藤健太郎、波留、林遣都、深水元基、吉田羊、薬師丸ひろ子、松重豊、石田ゆり子など
上映時間:1時間56分
2018年公開の映画「コーヒーが冷めないうちに」鑑賞しました。当時公開になっていたことはうっすら覚えています。インドで所属している劇団の友達から勧められて観ることに。インド人に日本の映画を紹介される日本人って・・・(笑)
日本のとある町の喫茶店では、ある席に座ってコーヒーを飲むと、タイムスリップできるといわれている。
ただしタイムスリップにはいくつかのルールがある。一つは過去に戻ることはできても未来は変えられないということ。もう一つはコーヒーが冷めないうちに飲み干さねばならず、もし飲み切る前に冷めてしまったら、その時間に一生とどまることになってしまう。
この喫茶店でタイムスリップのきっかけとなるコーヒーを淹れることができるのは、古くから店を営んでいる時田家の女性のみと決まっている。現在のウェイトレスは五代目の時田数(有村架純)。彼女は生まれてすぐに父親を亡くし、母親も幼少期に亡くしているので、若い時分からこの店でコーヒーを淹れ続けている。
設定が良い。特にコーヒーが冷めないうちに飲まないといけないという時間制限のルールが、タイムスリップ中にいい緊張感を演出しています。他にも喫茶店以外の場所には戻れないという制限、未来は変えられないという制限など、ルールで縛りを設けることにより、悪い意味で自由すぎる展開になるのを防いでいます。
役者陣も各々いい味を出しています。吉田羊のやさぐれ姉さん感も素晴らしいですし、波留の恋する明るい女子感も。ただ圧倒的な存在感を示していたのはやはり薬師丸ひろ子&松重豊。彼が過去に戻って手紙を受け取るシーンは、もはやこの映画のピークでした。夫は妻が自分のことを忘れてしまったことを伏せるのですが、その事実は涙を浮かべる彼の目で妻に伝わってしまう。そして妻が事実を察したのも、彼女の涙目で伝わってしまう。こんなの泣いてしまいます。
自分が愛する人のことを忘れてしまう辛さって、なかなか考えたことがありませんでした。でも認知症は普通にあり得る病気で、この恐怖は思っているよりも身近なものです。そういう意味でもこのシーンは深く刺さります。妻から夫への手紙も良かったですし、それを受けて変わっていく夫の姿も感動的です。
ただ引っかかる部分も結構あります。一つはタイムスリップ席に居座る人を無理やり退かそうとすると息が詰まり死にかけてしまうところ。このルール自体はいいのですが、それを「呪い」という言葉で片づけてほしくなかった。ちょっと安易すぎるというか。
あとは前述の松重豊のシーン。手紙は持って帰れちゃうんだっていう(笑)。過去の手紙を現代に持ち帰って読むというのは、時間制限に対するチート行為に感じてしまいました。
数がタイムスリップをする流れも一瞬おもしろいとは思ったのですが、そうなると未来での行動が帳尻合わせ的になってしまうし、成功したからこそ未来があるわけで、未来で失敗するという緊張感がないというか。若干成立していない気がします。
タイムトラベルは未来に行くことも可能という説明も、タイミングが悪すぎると個人的には思ってしまいました。あそこで言ったらその後の展開が必然的に読めてしまうでしょー。
「コーヒーが冷めないうちに」はタイムスリップものながら、独自のルールを設けることでファンタジーになりすぎず、ヒューマンドラマとしてしっかり泣ける作品。特に薬師丸ひろ子と松重豊のシーンは圧巻。ただ脚本の粗が感じられる部分が多々あるのは否めません。