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#スベり高等学校 ②

 向かい合わせの座席に乗り合わせて男は女子高生らしき少女に話しかけた。
「あんた、スベ高の生徒かい?」
少女が言い返す。
「失礼な略称はやめていただけませんか。わたくしの学舎の名はソールズベリ学院日本校はまたの名を百日紅さるすべりの園ですわ」
男は鼻で笑う。
「世間の呼び方さ。何もスベタだのズベ公とは言っとらん」
女の目が冷たく光る。
「そんな言葉、サッパリわかりませんわ」
「だから、誰もドブスとかヤリマンとは言ってねえと、」
女がギラリと目を剥いた。
「上等だぜ。てめえの一言一句とその汚えツラしっかり撮影したぜ、ネットに上げてやろうじゃねえか」
「そんなことしたら訴えてやる。降りろ!」

「ふざけんなこの変態野郎が! サツに突き出してやる」
ホームで罵り合う二人に駅員が近づいてきた。「どうしましたか?」

「実はさっきの車両にクマが乗っていたのです。どうすれば穏便に下車できるかと色々考えた結果こうなったわけです」

400字

駅員は驚いた。
「アレに乗ってたのですか? 乗車口が山中のスライダーからつながっていて車内のエサに導かれるしくみですよ?」 
すると女子高生はオホホホと口に手を当てた。
「わたくし『スベリスト』ですのよ? スライダーくらいどうってことありませんわ」

どうやら、それが正式な呼び方なのだった。


たらはかに様のお題に参加しています。

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