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鋼こむらがえり シロガネ診療室編

「どうです。これうちの帳簿です。景気が良くて赤がねえぜ」
と銅山さんが胸を張る。ここはキンゾク年数を誇る場なのだが黒鉄さんはちょうど退職したところだ。
「うちはまあ貯金もあるし退職金と年金でも苦労クロがねえぜ」
とうなずく。
「族内の英雄Auといわれる私だが老後のネックと言われる出来が良くても悪くても面倒で金がかかる子がねえぜ」
自分も何か言わねばと口を開きかけると

「次の方どうぞ」
診察室から声がかかる。
「どうしましたか」
「足がつるんです」
「なるほどこむら返りですね。最近ここに来る方にも多いです。過労と冷えとストレスが原因と言われています。安静にして身体を冷やさないようにね」
 ああやってみんな幸せそうに見えて実は色々あるんだろうな、と、『ワシは歯がねえぜ』と用意していた寒い駄洒落2℃以下※を思わず引っ込める鋼さんであった。蛇足ですがこの整形外科の所在地はフィクションで実在の地名と無関係です。
※鋼は炭素2%以下

410文字

たらはかに様の裏お題に参加しています。

なおこちらのセレクションで拙作「三分豚足」を紹介していただきました。ありがとうございます😭

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