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「柴さんって、遊んで来なかったんですね。」

私は今年27歳になる。紳士淑女の皆様は27歳という年齢にどういうイメージを持っているだろうか。私が思い描く27歳は、バリバリ仕事をやってプライベートも充実していて、とにかく表題のような事を言われるなんて事は万に一つも想像していなかった。20代男性が言われたくないセリフの中でもトップクラスだろう。しかも男の後輩に言われたものだから本当に忸怩たる思いである。もう次の日は有給を使いたかった。が、それはさまざまな事情を鑑み、実現しなかった。

そもそも「柴さんって、遊んで来なかったんですね。」とはどういう意味だろうか。「遊んで」に含まれるものが多すぎるのではないか。頼むから「”公園で”遊んで来なかった。」くらいの意味であってほしい。公園で遊んだ覚えは少ないから別に許せる。それなら後輩に心の右フックをお見舞いしなくても良い。だが世間というものはそんなに甘くないだろう。つまりは「”女性と”遊んで来なかった。」という意味だ。後輩の顔はとっくに左右腫れ上がっている。では”女性と”の場合の「遊んで来なかった」とはどういう意味か。そもそも一般に「女性で遊ぶ」は大変失礼ではないか。ここで指す遊ぶということが、不埒な思いを遂げる事を目的とする、ありとあらゆる行動、という事であれば、残念ながら私は必ずしも紳士ではない。そういう意味ではこれまでの女性との付き合いは結構真剣だったと思う。そう私は「女性で真剣」なのだ。自分、不器用なのだ。最後には幸せ手に入れちゃうよ、的なポジショニングなのだ。まだまだ幸せは遠そうだが。だからここからは便宜上、紳士柴崎として話を進める。

ではそんな紳士柴崎はなぜ表題のような成人男性を軽く殺せるような言葉を浴びてしまったのだろうか。(そもそも後輩はなぜそんな破壊力抜群のパンチを浴びせてきたのか。今度問いただしてみよう。)

その日は会社の若手飲み会であった。男二人、女性三人。2次会は女性が一人帰って男二人、女性二人。まずは言い訳をさせてほしい。その時私は結構しんどい仕事を進めていて、大変疲れていたのだ。これは重大な事である。これは本当に重要な事である。仕事に追われている時に皆さんはどうなるだろうか。あえて楽しい事をたくさん考える人、仕事のことしか考えられなくなってしまう人。他にもたくさんあるだろうが、私はその2択であれば仕事ばっかりになってしまうのだ。だからその日も私が混じる話は仕事ばかりになってしまった。会社の同僚だからそういう感じでもまあ良いかと思っていたのだ。そしていつも話す部署の人ではないのでそれなりに有意義な話ができたと思う。ところがだ。その数時間後に例の言葉を浴びて、路上にノックアウトするのだ。つまり仕事の話ばかりではダメだったということだ。実際に帰りがけに後輩はえっちい話をしたかったのかなと思わせるところもあった。なるほど、後輩にそう思われないためには適度な若手飲み会にありがちな浮ついた話題も出すべきだったのだろう。事実私は下ネタも好きである。好きであるというか、普通に話せるし興味もある。ありのままの柴崎で良かったのか。

だがどうだ、世間の紳士たちよ。このサラリーマン社会でセクハラだのなんだの言われる世の中で、男性を感じさせる行動は大変リスキーではないか。SNSに晒される痛いおじさんのLINEのような地獄はまっぴら御免だ。あまつさえ私は大柄でスキンヘッド、男性ホルモン強めの見た目をしている。そんな私が少しでもスケベ心を出してみろ。もはや筆舌に尽くし難い。歩くモザイクとなってしまう事は容易に想像できる。歩く男性ホルモンとしては、せめて人間でありたい。つまりいかに男性ホルモンを消すか出さないかを考えているのだ。嫌われたくないのだ。ああ神よ。こんなに弱い人間であることを許したまへ。

ただ、世の中には強者もいるもので。カラオケでとんでもなく下品な歌を歌う先輩たちには美人な奥さんや彼女がいたり、大学の時にモテていたやつもじっくり相談に乗るふりをしてしっかり性な話をしていた。一方の柴崎、彼女がいなかったわけではないが、基本真面目な面白みのない人間である。少し自信があるときはその辺緩くなっていた気もするが、残念ながら基本の柴崎の求愛行動は何かに打ち込みまくることであって、中学生から変わっていないのだ。ん?

という事は、飲み会で仕事の話ばかりというのはそういう行動だったということか・・・?無意識に求愛行動をとっていたのか・・・?

だとするとめちゃくちゃ気持ち悪いな!!!何が紳士柴崎だ!結局男性ホルモン野郎ではないか!!!!一番気持ち悪いむっつり野郎ではないか。

・・・大変ショッキングな事実に辿りついてしまった。考えなければ良かった。
だが信じてほしい。その時は本当によこしまな気持ちはなかったのだ。。でも世の中は理不尽で、そういう事をしていると「遊んで来なかったんですね」などと言ってくる輩がいるのだ。どちらとしても成人男性的な死である。この迷宮から誰か助けてくれ。

では次同じシチュエーションの時にどこまで突っ込めるか。うーん、多分ちょっとチャレンジして止めそうな気がする。そしてまたこのnoteに書くのだろう。こんな事を書く奴は・・・

ごめん。柴さん、多分遊んで来なかったみたいだ。


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