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AIが従業員の行動を最適化する#『AIが真の同僚となる日』より

柴井伶太です。


本日は、AIの浸透によって従業員の行動を最適化するのではないか、もう少し申し上げると、リーダーシップ理論における行動理論が再興するのではないかということについて話していきます。今回の記事はハーバード・ビジネス・レビュー(HBR)に掲載されていた『AIが真の同僚となる日』(ボリス・バビッチ, ダニエル L. チェン, テオドロス・エフゲニュー, アン=ロール・ファヤール)を前提として書きますので、興味を持たれた方はぜひ本文をお読みください。


(知り合い・友人と、毎月朝イチでHBRの読書会をはじめました。積読解消にはおすすめです。もしご興味がある方はお伝えください。)


まず、『AIが真の同僚となる日』では、AIを企業に導入するために4つの段階があると説明されています。

①アシスタント
新人にいくつかの基本的なルールを教え、教育者の行動を学習し、質問を通して学習すること。AIのアシスタントに置き換えると、データの分類と表現できる。社員の仕事を実際に行うというよりは、判断を加速させるイメージである。

②モニター
AIシステムが、リアルタイムのフィードバックを返すよう設定することである。所定の状況で、ユーザーが下す判断を正確に学習し、予測するように訓練する。それによって、その人の過去の判断と合致しない場合にアラートを鳴らすことができる。

③コーチ
人間は、自分のパフォーマンスに関するフィードバックを毎週のように得たいと考えている(PWC調査)。AIは簡単にフィードバックを生成する能力があり、人間はそれを行動改善に生かすことができる

④チームメート
エドウィン・ハッチンスは「分散認知」(distributed cognition)を提示した。これは人間は必ずしも脳や身体にさえ縛られることなく、適切な状況下においては、外部のツールや手段が認知処理を行う「結合システム」(coupled system)を構築できるという考え方である。AIが完全に統合された組織では、AIがユーザーとの関係によって成長し、専門家の過去の判断によってモデリングする。そして、専門家から成るコミュニティが組織内に発生し、AIと人間が完全に統合する

以上の4段階が説明されました。

ここで特に重要となるのが、③コーチ以降の段階です。この段階では「人間+機械」の環境となることで、人間は自分の行動に対する即時のフィードバックを受けることが可能になります。例えばアクティブファンドのトレーダーは自分の投資スタイルや咄嗟の判断に対して、フィードバックを受け、改善行動を取ることができます。


これは、育成活動に対して大きな影響を及ぼします。新人は業務の型を早く習得することにつながりますし、育成担当者は心理面の組織社会化に対して業務のリソースを割くことができます。早期離職の削減や、育成行動の効率化によって、より質の高い組織を構築することにつながります


またそれだけでなく、AIの浸透は1940年代に勃興したリーダーシップの行動理論を再興し、評価項目(育成・採用)の再定義につながり、組織で是とされている人の定義が変わる可能性があります。リーダーシップ理論の変遷において、パフォーマンスが高い人の行動を分析する試みは早くから行われていましたが、扱う行動や外部環境の変数の広さを理由に、後の条件適合理論に道を譲りました。しかし、AIでは広い要因の分析は、むしろ得意領域であり、分析が可能になる可能性が高いと考えられます。要は「成果を出す人は、どんな状況の時に、どんな行動をとっている」かという点がわかるようになる可能性あるということです。


これによって、リーダシップ論的な展開も予想されますし、企業で優秀とされている人材の定義もガラッと変わることになるかもしれません。

以上、本日はここらで終わります。

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