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戦争は女の顔をしていない

ロシアがウクライナに侵攻開始したという話を聞き、以前話題になったこの本を読もうと思った。

第二次世界大戦の時に、ソ連の兵士として前線で戦った女性たちの話だ。

私は祖父や祖母から戦時中の話はよく聞いていた。その話をまとめた同人誌もある。

だから、なんとなく、幼い頃から戦争とはどんなものかイメージしてきた。でもこの本に書かれていた話は、私が祖父母から聞いた話より衝撃的なことだった。

だって私の祖母は兵士ではない。日本で兵士は男性だけだったのだから、祖母が戦争で兵士として銃を持ったという人は聞いたこともなかった。

従軍看護婦として前線に行った女性はいただろうけど、「お国のために」銃を取り、敵を殺し、仲間が目の前で蜂の巣になった……なんて。

私の場合は、祖父は従軍はしたけど、ほぼ事務仕事をしていて、訓練にさえ参加していなかった。

だから生々しく語られる「女の戦争体験」は衝撃を受けたのだ。

私が特に印象に残ったのは作者が一旦、削除した話の中にある。

彼女は4年間の戦争を戦い抜いて、勲章を2つ、メダルをいくつも貰って家に帰った。けれどすぐに母親に「2人の妹のために出て行け」と言われた。

あんたの妹じゃ、だれもお嫁にもらってくれないよ。あんたが四年間というもの戦争に行っていた、男たちの中にいたってことをみんな知ってるんだよ

『戦争は女の顔をしていない』P35

彼女は「私の気持ちに触れないで、私の勲章の事だけを書いて」と言った。

きっと作者が書きたかったのは「気持ち」の部分なので、一度この話を取り下げたのだろう。でも、この本には書いた。気持ちを書かないことで、彼女の気持ちを余計に考えてしまう。

彼女たちは多くの少年たちがそうだったように、「お国のために」「意気揚々と」銃を取っていた。当時はそれに何も疑問を持っていなかったと語る。

お国のために前線に出るのが名誉なのだと。

それは戦前の日本人男性の意識そのものに感じた。中には徴兵されることを嫌がったという話もあるが、優秀な心身の持ち主とされて兵士として合格することが名誉だという話を日本の戦争体験の本でよく読んだ。

ソ連の女性の徴兵は強制では無いようだったけれども。それでも彼女たちは名誉のために志願した。

もしも日本が女性も兵士として受け入れていたとしたら、祖母も同じように志願したのだろうか。……それはわからない。

もしも私が、当時のソ連に生まれた少女だったら? 従軍をしない選択をしたのだろうか。それとも周りの熱気に浮かされて銃を取ったのだろうか。

わからない、わかりたくもないし、わからなくて良い日本がこれからも続けば良いと思う。


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