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社会人と演劇の持続可能な付き合い方(税金編)

どうもしばいいぬです。このシリーズでは社会人としての演劇との関わり方について書いてみようと思います。
今回はサラリーマンの人向けの税金の話です。ここに書いてることを実践することで、演劇事業の頻度によりますが年間数万の節税ができます。しばいいぬの近くのサラリーマン俳優や社会人演出家に言っても、ほとんどの人がやっていない方法なので、記事化してみます。

なお、しばいいぬは税理士ではないため、実際に確定申告しようという人は自分でちゃんと調べていただけるとトラブルを避けられます。

(この記事は無料ですが、ご支援いただける方は購入いただけると泣いて喜びます)

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【忙しい人向け要旨】
・演劇は基本的に赤字事業である
・サラリーマンの人は、演劇を事業として考えると節税になる
・報酬を雑所得ではなく事業所得であると認識し、損失申告用の確定申告を行うと、演劇で出た赤字分の税金が返ってくる(かも)
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○ 演劇は基本的に絶対赤字になる

しばいいぬは、公演予算の考え方という連載をしてきました。それをみてもらえば演劇は正規の報酬を支払おうとする場合、赤字を克服できないということがわかりました。

 時代を見てみても演劇を作る仕組みはどんどん変化しています。小演劇黎明期からの劇団制から、フリーランスを束ねるプロデュース公演が中心となり、公演を行うプロデュース主体も複数の劇団員から1人の演出家だけになりました。この組織変化は劇団の経済に2つの事を齎しました。

一つは、主催者の減少によって一人当たりに負担する出資の増加
一つは、俳優などの外注化によって報酬体系が変化し、支出が増加

 演劇公演で生じる負債が50万円だったとしても、劇団制が主流だった時代なら劇団員5人が10万円ずつ負担する事で乗り越えられましたが、現在のプロデュース公演の場合主宰者が1人で50万円を負担しなければなりません。

 また、主催者側の人数が減るということは、それと同時に外部の出演者が増加することを意味しています。今までの劇団制だと支払わなくてよかった劇団員への報酬*も、些少とはいえ事前に契約した内容で支払う必要が生じました。劇団員が5人から、劇団員1名+外部の俳優4名に変化したとすると、それだけでも4万円ほどの支出が増えるということになります。

 また、もともと利益が期待できない日本の演劇制作体制からみても、演劇を専業として考える人は減少し、副業化が進んでゆくことは今後の流れになるでしょう。これらの副業演劇人の地位がいまだ低いことは問題ではありますが、副業演劇人自身としても持続可能な演劇との付き合い方を考えていく必要があるでしょう。

なのでこの記事では特に経済面について考えていきましょう。

(* ここの是非について、そもそも疑いを持つ考えもありましょうが、ここでは主催者の負担する金額が増加したという点に焦点を置き、こういう書き方になっています。また、主催者の給与というのはその劇が利益化した暁にそれを劇団なりの比率で配分すると考えるのが妥当ですので、赤字公演になった場合は出資している劇団費が回収できないのも自然と考えます。)

○サラリーマンであればあるほど、演劇を趣味ではなく副業と捉えるべきである

結論から言います。

自分がやっている演劇行為を事業として考え、その事業の赤字を確定申告して、その赤字分の税金の還付をもらいましょう。

こういうとたぶん次のような反応が考えられます。
A「あくまで趣味だから問題ない」
B「確定申告面倒だからやってない」
C「利益化してないから副業とは言えないんじゃ」
D「確定申告して収入言ったら納税金額増えるんじゃね」
E「納税は国民の義務。それふつうに脱税だから」
F「毎年1回しかやってないから事業所得じゃなくて雑所得じゃね?」

こういった人も、これから下の記事を読んでもらえば考え方が変わるはずです。実際の書類などは個々人によって全く事情が異なるため、ここでは考え方だけをまとめるに留めます。
ちなみにEの人はおちついてください。適性に支払うべき税金をきちんと計算して納税するだけなので、これは節税行為であって脱税ではありません。
Fの人は非常に税金リテラシー高い人ですね。事業所得と雑所得についての考え方についても下にまとめていきます。

○演劇事業を確定申告すると節税になる(かも)

 サラリーマンでいながら、演劇を毎年やっていたり、定期的にチケットの料金を取ってやっている場合、その演劇を事業として考えることができます。そうした場合はきちんと確定申告すると節税になることがあります。そのロジックを説明します。

① まず、確定申告とは「1月1日から12月31日までを課税期間として、その期間内の収入・支出、医療費や扶養親族の状況等から所得を計算した申告書を税務署へ提出し、納付すべき所得税額を確定すること」である(wikiより)

(収入) - (経費) = (所得)であり、税金は所得に対してかかる

③ 一方サラリーマンで副業をする場合、全ての所得の合計で税金を計算する

④ サラリーマンで赤字の副業をもっている人は、会社で源泉徴収されている金額よりも納税金額が少ないため、差額分が還付される

⑤ とくに演劇の場合、公演で得られる収入よりも経費がかかっているため、所得としてはつねに赤字である。

⑥ よって、副業演劇人は演劇にまつわる収入と経費をしっかり計上することで納税の差額分がかえってくる

雑所得と事業所得の違い

 ここで問題になるのは、自分の演劇行為が、税務的に雑所得として計上されるのかそれとも事業所得として計上されるのかです。雑所得に比べて、事業所得のほうが様々なメリットがあるため、なるべくなら事業所得として計上したいのが、我々納税者としての欲です。

 残念ながら厳密な定義づけはなく、最終的には各税務署による裁量で決まることでもあるのですが、事業所得と雑所得の違いについて現在一定の指針と考えられるのは、平成26年9月1日の国税不服裁判所判例です。
 この事案は、大学准教授が執筆や講演などから得られる所得を事業所得として申告したところ雑所得であると認定されたというものです。その判決の法令解釈の箇所を引用します。

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(引用)
所得税法第27条第1項は、事業所得について、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業で政令で定めるものから生ずる所得である旨規定し、その委任を受けた所得税法施行令第63条において、事業所得の事業に当たるものとして、11項目にわたり業種を例示するとともに、その他対価を得て継続的に行う事業がこれに当たる旨規定している。
 このように、所得税法第27条第1項及び所得税法施行令第63条に規定する「事業」については、その意義自体について一般的な定義規定を置いていないところ、その意味するところは、自己の危険と計算において独立して行う業務であり、営利性・有償性を有し、かつ、反復継続して業務を遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められるものであると解される。
 そして、ある所得が事業所得に当たるか否かを判断するに当たっては、当該所得が社会通念上「事業」といえる程度の規模・態様においてなされる営利性、有償性、反復継続性をもった活動によって生じる所得か否かによって判断すべきであり、この場合において「事業」といえる程度の規模・態様においてなされる活動といえるかどうかは、自己の計算と危険においてする企画遂行性の有無、その者の精神的肉体的労務の投入の有無、人的・物的設備の有無、その者の職業・経験及び社会的地位等を総合的に勘案して判断すべきである。​

(解釈)
「事業所得」における「事業」は一般的な定義規定が法律上はないが、つぎのような条件が満たされた業務であると解釈できる。
・自己の危険と計算において独立して行う業務であるか
・営利性・有償性を有するか
・反復継続して業務を遂行する意思があるか
・社会的地位が客観的に認められるか

「事業所得」における「所得」は以下の基準に基づいて総合的に判断する。
・社会通念上「事業」といえる程度の規模・態様においてなされる営利性、有償性、反復継続性をもった活動によって生じる所得か否か
自己の計算と危険においてする企画遂行性の有無
・その者の精神的肉体的労務の投入の有無
人的・物的設備の有無
その者の職業・経験及び社会的地位

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演劇に携わる者にとってここで問題となるのはここでもやっぱり以下の問題です。つまり、
「営利性・有償性を有するか」
「反復継続して業務を遂行する意思があるか」
「社会的地位が客観的に認められるか」
です。

freeeによれば、事業所得として成立しているかの認定は難しいためしっかりとした材料をそろえる必要があると注意しています。演劇事業が上の条件に適合しているかを、最後は考えてみましょう。

事業所得としての演劇に携わる者の条件を考えてみる

 事業所得として認められるためにどういう説明ができるかを考えます。

・自己の危険と計算において独立して行う業務であるか
 ここで言わんとしているのは事業主がリスクや労力をかけてその業務を行っているかということです。つまり俳優としては、ボーカルトレーニングやジムなどに通う、あるいは稽古のためにどの程度の時間や金銭を割いているかを具体的に説明できるようにしましょう

・営利性・有償性を有するか
 もしその公演が入場料無料であったり、出演料がない場合は営利性があるとは認められません。一年を通して、どの程度の規模の公演に対し参加しており、どの程度の報酬が得られているのかを説明しましょう

・反復継続して業務を遂行する意思があるか
 もしもその公演が一回きりで、今後を考えていないようなものの場合、反復性はあるとは言えません。来年以降や今後の計画的な上演計画や俳優としてのヴィジョンなどをしっかりと説明し、継続している業務であると説明する必要があります。

・社会的地位が客観的に認められるか
 この条項については非常に曖昧ですが、最も説明しやすいのは業務の規模でしょう。たとえば1000万円規模の公演を回す演出家や制作、プロデューサーの場合は、社会的地位がないとは言えないと思います。またこの規模も、チケット代5000円×動員2000人ですので、わりとある規模です。
 もしそのような説明ができない場合でも、年間でどの程度の事業額か、あるいはどの程度の動員や社会的インパクト(WSを行うなどの福祉的行為)を行っているかを具体的に説明できれば問題ないと思います。



副業演劇人が事業として確定申告すべき理由と、その方法について書いてみました。もしも、実践したいと思う方のなかで疑問点などあればTwitterのほうのDMなどで質問下さればお答えします。

したっけ。


本文は以上ですが、もしも支援していただけたら今後のモチベーションにつながりますのでよろしくお願いします!


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