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ジュエルペットと地球科学#1 「地学系アニメ」にハマろう

Twitterでジュエルペットについて簡単な解説をしたところ、もっと詳しくやって欲しいとのDMをいただきましたので、こちらにまとめます。

「ジュエルペット」シリーズとは、あのキティさんやポムポムプリンで有名なサンリオと、セガトイズがタッグを組んで展開するキャラクターシリーズで、2009年から2015年まではTVアニメシリーズも放送されていました。

最大の特徴は、鉱物名や宝石名を冠する40種類以上の動物キャラクターが登場する点でしょう。例えば主役の3人は二ホンウサギの「ルビー」、キャバリアの「サフィー」(サファイア)、ペルシャ猫の「ガーネット」と、どれも代表的な鉱物名が元になっています。

そのほかに、子熊の「ラブラ」(‎‎ラブラドライト(曹灰長石))、アルパカの「エンジェラ」(アンハイドライト(硬石膏)の宝石名であるエンジェライト)、パピヨンチワワの「ペリドット」(かんらん石の宝石名)など、動物のキャラクターに鉱物名あるいは宝石名*1がつく、というのが基本的なスタイルになっています。

*1 宝石として流通している鉱物には、元の鉱物名とは違った業界独自の名前がついていることがあり、本文ではそれらを「宝石名」と呼びます。

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2013年の「ジェルペット ハッピネス」では、アニメの放送と連動してデアゴスティーニから定期的にムック本が発売されており、その中で鉱物の解説も行われるなど、地学教育を意識した展開もされていました。

私がつくばの地質標本館に勤務していた2011年から2017年の期間 は、TVアニメと放送時期が重なっていたこともあり、アニメに登場する鉱物の質問が来館者の方々から寄せられる事が多かったため、強く印象に残っています。

もともとアニメはかなり見る方でしたので、というかまぁオタクですので、どんなもんだろうと思って視聴してみたところ、あまりのクオリティの高さにドはまりしました。いちおう「子供向け」を謳っているアニメのはずでしたが、上記のような鉱物ネタのみならず、あらゆる方面でマニアックなネタが詰まっており唸らされました。

例えば2011年放送の「ジュエルペット サンシャイン」では、いきなりビートルズの"A Hard Days Night" の映像をオマージュしたり、映画「フラッシュダンス」のダンスシーンを完コピしたり、挙句の果てには「ねるとん紅鯨団」の高精度なパロディをやったり等々…明らかに親世代あるいは祖父母世代を意識した大人向けのネタが満載でした*2。放送直後の2012年にオトナアニメ編集部から特集本が発売されたことを見ても、大人層からの人気のほどが伺えます。本作は一連のシリーズの中でも特に地学系のネタが多いため、別記事でじっくり解説していきます。

当時はマクドナルドのハッピーセットにジュエルペットのおまけがついてくるなど幅広い商品展開をしており、我が家も親子で楽しませて貰いましたが、残念ながら2015年の「ジュエルペット マジカルチェンジ」をもってTVシリーズは一旦終了となっています。

しかし2019年にTV放送10周年記念のアナウンスがあり、サンリオのYoutube公式チャンネルでTVアニメの一部が配信されていることなどから、復活の可能性も期待しています。

こうした例に限らず、90年代のセーラームーン、90年代後期から現在まで続くポケモンシリーズ、さらには2010年代後半の標本館が舞台となった「恋する小惑星」など、地学や天文学に関するマニアックなネタが織り込まれた漫画やアニメは枚挙にいとまがなく、私はこれらを勝手に「地学系アニメ」と呼んでいます。

こうした地学系アニメの動向は、博物館関係者として決して見逃せるものではありません。その時代の子供たち(あるいは大人ファン)がどういうバックグラウンドで地学に接しているかを知るための貴重な情報源であり、展示企画をする際にはそれらの知識を積極的に取り入れるべきと考えます。

今後も新しい地学系アニメが放送されてゆくことでしょう。あるいはジュエルペットの復権もあるかもしれません。その際には、ゆるく監修などのお仕事にも関われれば嬉しいなと考えています。

以上、ジュエルペットと地学についてまずは概要をお伝えしました。次回は未定ですが、どんどん掘り下げます。

*2 ビートルズをはじめとするオリジナル音源は版権の関係で円盤には収録されていないようですが、地上波やCATVの再放送では視聴できる場合があります。とにかく再現度が素晴らしいのでぜひご視聴を。

*3 トップの写真は地質標本館所蔵のルビー標本(インド産)。地質標本館所蔵。政府標準利用規約2.0に従って引用しました。


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