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「九州の前川建築をめぐる旅(1日目)」2022年3月29日の日記

・前回(3/20)の日記で、わたしが日本における近代建築の第一人者、前川國男の建築に興味を持ったことを書いた。

・そして全国の前川建築、とりわけ、自分の母校の講堂(こちらも前川建築)とそっくりな雰囲気を持つ熊本県立美術館と、同じく九州の前川建築、福岡市美術館に行きたいと思っていたので、この前日(3/28)の夜22:47に、29日朝の福岡行きの飛行機をとった。
・わたしの旅行はいつもこう。去年の11月、京都に行った時も前日にホテルをとった思う。これが衝動のなせる技だ。


・朝の8時40分に出るピーチ航空に乗るためかなり早い時間に起きて成田に行き、朝うどんを食べた。


・2時間ほどで福岡空港につき、地下鉄で福岡市美術館へ。
・ちょうど展示中らしいミロの作品が駅の柱でも見られた。


・福岡市美術館は大濠(おおほり)公園という大きな公園に隣接しており、公園の入り口とその中も、ちょうど桜をはじめ春の花々が満開だった。これだけでも九州に来た価値がある。


・公園は、中心にある大きな池を囲むように遊歩道が整備されていて、まさに「憩いの場」という言葉をメタバース国語辞典で引いたらこんな世界に飛ばされるであろうと言うとても雰囲気の良い場所だった。


・遊歩道をしばらく進むと見えてくる階段。
・一見するとどこへつながるのかわからないこの入り口こそ、

・福岡市美術館への入り口です。


・階段を上がった先には草間彌生のカボチャがある。

・常滑焼(とこなめやき)の磁器質タイルが斜めに重なり、角合わせはそれ専用のタイルで長さが一定になるよう重なっている。写真右側の建物では、前川建築ではお馴染みの打ち込みタイルが見られる。


・これは館内から撮った写真。
・館の外と中で同じタイルを使うので、来館者は違和感なく外の世界から館内へ入ることができる。でも福岡市美術館における前川のタイルへのこだわりの強さは、使う場所だけでなく、サイズも徹底している。


・館内に入ったらぜひ柱の足元を見てほしいのだけど、どの柱を見ても、柱の角がぴったりタイルの真ん中にくるよう設計されている。ここまでくると正直、この寸法と設計に付き合わされた建築設計事務所の所員や工事の際の担当者に同情すら覚える。
・ちなみに柱のでこぼことした質感は、これもまた前川建築ではよく見られる「はつり」と呼ばれる工法の結果あらわれる質感。
・柱や壁を削った際のでこぼこをそのまま残す手法で、手作業のぬくもりが残る。(実際には手作業”風”に機械ででこぼこを作ったものも前川建築では見られる)

・ちょうどお昼時だったので、展示室に入る前にレストランでお昼を食べることにした。


・福岡市美術館にはレストランとカフェがあり、それぞれホテルニューオータニ博多が運営しているので、どちらもとても美味しい。わたしはお昼のコースを頼んだ。

・そして前川建築の特徴として、やはり食事どころは人の動きが見える、その建物の中で一番景色の良いところに設置されているので、開放感があり座っているだけで気持ちが良い。

・レストランの天井ではアーチ型の「かまぼこ天井」が見られる。


・それではいよいよ本日のメイン、福岡市美術館への展示室に入る。
・福岡市美術館は近現代の作品を中心に所蔵しており、特に福岡県久留米市出身の版画家、吉田博の作品はそのコレクションの一角をなしている。
・吉田博は去年東京都美術館でも吉田博展が開催され、わたしはそれをきっかけに大好きになったので、ここで再開できることを楽しみにしていた。

入口


・写真撮影が可能な作品があった。
・《桜を放つ女性》

・「かいけつゾロリとなぞのまほう少女」の回で、ゾロリがまほう少女ネリーに「どうして魔法を勉強してるんだ」と聞いたときに、ネリーが「世界を平和にしたい」という意図のことを言っていて、その時のイラストが、兵士が向ける銃口から一輪の花が撃たれているという絵だったことを思い出した。

・確かなぞのまほう少女の回だったと思うんだけど、、、おまじないとかまほうとかはかいけつゾロリでは度々出てくるので、わたしの思い違いだったらすみません。ただ拳銃から弾丸じゃなくて花が出てきたらみんな幸せになると思うの、と言う内容の発言と絵は確かにあった。


・ちなみにその絵のとなりには大砲のイラストも描かれていて、大砲からは大きな花束が発射されていた。

・続いて福岡を拠点にするアーティストKYNEさんによる《Untitled(無題)》

・壁一面を覆う作品はインパクトがあった。
・この作品のポストカードがあったらほしいなと思っていたのだけど、わたしがショップを見たところでは見当たらなかった。

・わたしが一番楽しみにしていた吉田博の作品たちは導線の中盤にあり、去年東京で観た作品たちがたくさん並んでいたので懐かしい気持ちになった。
・でもやっぱり東京にあるよりも、地元福岡にあったほうが、吉田博の作品は作品から感じる雰囲気の手触りが合っている気がする。


・衝撃を受けた作品もあった。
・導線の終盤に展示されていた、アニッシュ・カプーアの《虚ろなる母》。

https://www.fukuoka-art-museum.jp/archives/modern_arts/6254?title=&name=%E3%82%AB%E3%8

・真っ白な展示室で視線の先に突然、空間に巨大な「虚ろ」な穴が出現して思わず平衡感覚がバグる。

・俗な表現をすればガンツの黒い球体と同じような恐怖感と好奇心を覚える。
・これはもし展示されていたら、福岡市美術館に行った際にはぜひ観てほしい。


・さて、展示室を出て美術館のロビーに戻ってきた。

・ここは1階部分。先ほど入ってきた入り口の反対側、公園の池方面から入っていた入り口あたりの場所。右手側にはミュージアムショップがある。天井が低いように感じるけれど、ここから数歩進めば、


・2階部分とつながる吹き抜けにあたる。「やってんな〜〜〜〜」と思う。低い天井で制限された視界、からの、吹き抜けと大きな窓を使った視覚のカタルシスは前川國男のおとくいで、前川自身の自邸をはじめ、あらゆる建築で実践している。


・竹筒のようなこのブロンズの照明も多くの前川建築で見られる。ここ福岡市美術館でも活かされていて、単なる照明としてだけではなく、美術館全体の雰囲気を作るのに一役買っている。


・先ほどの吹き抜けから見えた中庭。岡山県の前川建築、林原美術館でも似た雰囲気の小さな中庭を見ることができるけど、こちらはひと回りくらい広い気がする。


・中庭を2階の外から見るとこんな感じ。
・福岡市美術館には、最初に入ってきた長い階段からこの2階部分までの入口あたりまでにあたる「エスプラナード」と呼ばれるエリアが特有の解放感を作り出している。

・前川建築におけるエスプラナードとは、人によって「憩いの広場」だったり「遊歩道」だったり、いくつか解釈があるように思うけど、それらが指し示すものは、人々が思い思いに過ごすことができる空間、という感じがする。

・福岡市美術館のエスプラナード、それから反対側の出入り口には彫刻作品も複数展示されており、市民が気軽に作品と日常を過ごすことができるようになっている。日常の風景の中に芸術作品が溶け込んでいる風景はとても良い。


大濠公園の池方面からのアプローチ

・パチパチ写真を撮っていると次第に紐傾いてきたので、ホテルへ戻る前に美術館のカフェへ行った。


・カフェの雰囲気もとても良い。

・大濠公園のトラックには距離を示す表示が池にいるアヒルのイラストで描かれているのだけど、なんだか体長2000mのアヒルみたいでとても良い。


・福岡駅にやってきた。
・駅のすぐ近くのホテルで少し休んでから、夕飯は大学時代に一緒に学芸員課程を取っていて、今は福岡で働いている友達(九州に来たときはいつも会う)とご飯を食べた。

・楽しい〜〜〜〜〜〜。

・数年に1回〜数回しか会わない友達との話題はいつも決まっている。仕事どう?学生時代のあれ楽しかったね、他の友達は今こんな感じらしいよ、ということ。

・ご飯を食べて、お茶して、ひとしきり話してから、「じゃあまた今度、おんなじ話しようね」とお互いに言って別れた。

・お互いが話してる内容をお互いにメタに認知するんじゃない。
・良い友達です。


・明日は熊本へ。

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