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人生に「おもしろがる」というスパイスを少々

海外の人に日本語を教えている。
しかし実際は、私が彼らから学んでいることが多い。

オーストラリア出身のTさんが、先日富士山に登頂した。
登りは通常6〜7時間かかると言われるらしいが、彼は4時間を切ったという。写真を見せてもらうと、フル装備の登山者に囲まれて、笑顔のTさんが映っていた。半袖短パン姿で。

「富士山、よかったよ!思ったより時間がかからなかった」

楽しそうに話すTさんは、驚異的なフットワークを持っている。私のジョーシキを軽々と蹴散らし、風を吹かせていく。体力、思考力、精神力、生きるために必要なものを体一つにすべて備えているような人だ。

下山の翌日に会い、まだ記憶に新しい経験を、臨場感たっぷりに話してくれた。日焼けで赤くなった彼の顔と手足が、日本最高峰の頂にいたことを物語る。

「お土産あるよ」
そう言って、かばんの中からガサゴソ何やら取り出した。
いたずらっぽく笑う。

笑った。
『青い富士山カレー』そのものにというより、それを選んだTさんの姿を想像して。

私はTさんのおもしろがる力に一目を置いている。

実際に富士登山を、青いカレーを、
目の前に起きることを、
素直におもしろがれる?

いつか富士山に登ってみたい、と思ったことはある。
ふんわり言葉にしたこともある。
でも、本気で実現させようと思ったことはない。
富士急ハイランドのFUJIYAMAには何度も楽しませてもらったけれど、本物の富士山を楽しめる気がしなかった。

さらにいうと、私はこのカレーを知っていた。
初めて見た時、「うえ〜。まずそう」と思った。

買うという選択肢も、「友達を驚かせたろ!」みたいな遊び心も浮かばなかった。むしろ私は「これを友達に渡したら、迷惑がられるだろうな」という心配タイプ。

富士山と青いカレーは私が今までスルーしてきたものだった。



日に焼けたTさんの手から、『青い富士山カレー』が渡される。
「(共通の友人)○○さんには秘密ね。同じお土産をあげるから」と一言添えて。無邪気な人だなぁ。逞しいなぁ。

さて、私はこのカレーをどうしようか。

感覚的にはアウトな色のカレーを、自分はおもしろいと思えるか。
試されている気がする。
「君はどう食べるか」

せっかくなら、楽しくおいしくいただきたい。
オクラを切って飾ろうかな。桜でんぶ買っちゃう?
小さい日本の旗を立てたいな。

心が勝手に遊びはじめる。
おもしろくなってきた。

そうだ、もっとおもしろがって生きよう。


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