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【短歌日記】触ったら泥水になる雪のごと善行と思う善行は消ゆ 2023/07/23-2023/07/29



2023/07/23 爪の間に詰まった土が取れなくて指先だけがマンガの住人

小さい頃、マンガや絵本ではすべてに輪郭線が付いているのに現実ではそうでもないこと、マンガの人の鼻はスラっとしていて格好いいのにリアルの人間のそれには不格好な穴が2個も開いていることなどに納得しかねていた。

今となっては、こういう事項は心の地中に深く埋まっていて普段意識しないけれど、短歌を詠んでいると、たまにそれらが発掘される。

2023/07/24 会議には出ないし電話も取らないし旅行者みたくアルバイテンす

筋肉短歌「アルバイト」。
正社員時代なら、謎の会議に出なくていいのも外線取らなくていいのも福音に感じられたはずなのに、いざバイトの立場になると、会議室に向かう人々の姿を見ながら身の置き所の無さを感じる。


2023/07/25 クローンの街をつないだ海ほたる両岸ともにコストコが建つ

うたの日「海ほたる」。
勝手な先入観だが、「コストコがある」という事実は街のアイデンティティの大半を占めるように思う。

2023/07/26 触ったら泥水になる雪のごと善行と思う善行は消ゆ

うたの日「行」。

通勤経路の暑さとオフィスの寒さを1日で何度も繰り返し、夏なのに雪の歌を詠んでしまう。

2023/07/27 ふるさとは「あざ」がついてた いのししとしかとばきゅーむかーがいるむら

うたの日「字」。
あざ」が付いた住所は格好いいという、これもまた勝手な先入観を抱いている。

2023/07/28 違和感のダイヤが乱れ遅れます  いつもその場で言い返せない

うたの日「違」。
毎日、職場の人との会話に少しずつズレた回答をし続けているなあと思う。仕事に関わるクリティカルな面も、緊急性はないけど人間関係構築に影響があるスモールトーク面も。そしてズレに気付くのはいつだってオフィスを出た瞬間なのだ。


2023/07/29 挫けても支えて「あげる」「あげる」って何よ? それすら受け取れない日

うたの日「挫」。合唱曲「Believe」をイメージした。

友人と「エルマーとりゅう」の人形劇を観に行く。少年エルマーが凶暴な動物に囚われたりゅうの子を助けるべく冒険に乗り出す児童文学シリーズの第2作目を翻案したものだ。

成人してから人形劇を生で見るのは初めてだったけれど、子どもの頃何度も読んだおはなしは大人になっても楽しい。さらに、演者の人たち6人が代わる代わる人間からカナリアから果てには竜巻まで何役もこなす様子や舞台演出に圧倒された。大道具も6人で回せるように動かしやすく、でも一つ一つの存在感を大きく出せるよう造られていて、なんとなく「用の美」という言葉を連想した。

あと、最近マリオの映画を観に行った時も思ったけれど、子どもが多い場所で観劇すると結構たのしい。反応がすごい素直なのでライブ感があるのだ。うんちネタでどっと笑い声が起こったり、宝の暗号が出てきたら「あれなにー?」の声が上がったり……。

その後は立川PLAY! MUSEUMの「エルマーのぼうけん」展へ。原画がかなり小さいサイズで、柔らかそうな鉛筆の筆致にかかわらず繊細に輪郭がとられていて驚く。

移動時間や食事の間は、延々とホットヨガスタジオの資本主義的な面が怖いという話をしてしまった。最近の思考が「ホットヨガは楽しいが加齢の恐怖を煽るのはやめてほしい」・「仕事だるい」ばかりであることが如実に反映されている。「またか」と言わずに聞いてくれた友人、ありがとう。



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