僕は金木犀の香りを知らない

 新年明けましておめでとうございます。
 さて、年始の挨拶も早々に、読者諸兄ならば、僕が普段は箸にも棒にもかからない字書きをしていることは存じている次第だと思うが(知らなければここで知っていってもらう)、本を読んでいるとたまに、『金木犀の香りがした。』なんて一文が出てくるのだ。そんな時、知っている人間なら一瞬でどんな匂いが思い出せるのだろう。きっとそれほどまでに印象的な香りだろうから。だが、僕はそれを知らない。それがこんな邦ロックバンドの名前見たいな記事タイトルになった理由だ。と、言うのも。最近ドラッグストアに行った時に、柔軟剤だか芳香剤だかのテスターでその金木犀の香りというのがあったのだ。だけど、それを手に取る事は憚られた。まるでぶどうを食べたことがないのにグレープ味を知っているような、そんなちぐはぐな状態になるのが嫌だった。そんな理由だったと思う。だから僕は『これが金木犀の香りか』と知り、『この香りは金木犀だな』といったふうに反応できるようになるまでは金木犀の香りを封じることにした。

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