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探究的学びの可能性に改めて気づく

今年から学習指導要領が改定され、2022年には高校で探究的な学びが全面的に取り入れられます。


そのためか、世の中の変化のためか、今や小学生向けの探究学習が花盛りと感じます。


探究学習は、うまく取り組めれば、読む力、考える力、表現する力など総合的な力が身につくため、非常にいいことと思います。


でも、私としてはちょっとしっくりこない点がありました。それは、テーマを学校や塾が決めることがまだまだ多いようだという点です。一律の学びを提供するという点では、算数などの教科と結局変わらないのではないだろうか、と感じていたのです。


また、一律のテーマで楽しい課題を他人から提供してもらうというのはエンタメ的、外発的です。内から湧き上がるような内発的な学ぶ愉しさを得られるのだろうか、とも感じていました。子供たちの興味はもう少し多様性があるのではないか、と思うのです。


例えば、恐竜に興味がある子もいれば、小説を読むことが好きな子、体を動かすことが好きな子、音楽や絵を書くことに興味がある子、ゲームやマンガに興味がある子、多岐に渡ります。


さらに同じものに興味があっても、興味のあるテーマは違います。


恐竜の姿かたちに興味がある子がいる一方で、恐竜の進化の過程に興味がある子もいるかもしれません。恐竜の生活に興味があり、どんな暮らしをしていたのか、どうやって子育てをしていたのかに興味がある子もいるでしょう。ティラノサウルスの噛む力やアンキロサウルスのしっぽのハンマーがどのくらいの衝撃を生み出すのかに興味がある子もいるかもしれません。


もちろん一律のテーマでも少数の計算や漢字練習よりは面白いと思いますし、いくつかあるテーマの中から好きなものを選べるならさらにいいのかもしれません。そのテーマに興味がある子が集まるなら、問題ないのかもしれません。そのため、世の中にそういったサービスがあるのは、利用者にとって選択肢がたくさんあることなので、いいことと考えています。


しかし、個人塾としてやるのであればもう少し別のスタイルにしたいと思っていたのです。


テーマが一律でない探求的な学びにこだわるもう一つの理由は、自分なりのテーマを探すというのは、人生をかけてやりたいことを探すプロセスと同じだからです。


自分で好きなテーマを探し、それを掘り下げてみる。ちょっと違うと感じてまた別のことにチャレンジする。その中で生涯をかけて取り組みたいテーマが見つかってくると思います。


もちろん簡単に見つかるものではないと思います。私がはっきりと意識したのは40歳になってからです。それまでは「これだ!」と思ってやってみてはなんか違う、「ではこれか?」と考えてやってみてはちょっと違うというのを繰り返してきたのです。若いうちから「自分はデザインをやる」などと自分のテーマを見つけ、それをずっと楽しそうに続けている人を見ると、うらやましく感じていました。


このようなことは、就職活動を前にして考えはじめてもいいのですが、小学校高学年くらいから考え始めるのがいいのではないでしょうか? めざすものが見つかれば、学校の勉強にも力が入るはずだからです。


最近探究的な学びに興味のある子達が入塾してくれたのを機に、個々に興味のあるテーマをもとに探究的な学びを取り入れています。ある子は恐竜、ある子はお金のこと、ある子は毒蛇といった形です。


今来てくれている小6の子の例をご紹介します。


恐竜が好きというので、最初は絵本を使って恐竜の性質などを調べていました。しかし恐竜学の進歩は近年すさまじく「恐竜は絶滅しておらず、鳥として生き残っているということではないか。」と言う人もいます。ロマンがありますよね。それで、恐竜と鳥の違いについてに興味が出てきたようです。


恐竜に最も近いといわれるツメバケイを調べてまとめてみたり、タチヨタカというちょっと変わった鳥について調べたりしました。タチヨタカってなんだろう、となり、宮沢賢治の「よだかの星」を読んでまとめてみたり。


さらに、鳥の肺のつくりや呼吸のしかたを調べたり、恐竜と鳥の脳の大きさの違いに着目し、恐竜と哺乳類、鳥類の脳の作りについて調べたりしました。(冒頭の写真)


脳の話が出てきたため、今後は感情がどこから生まれるのか、思考との関係について調べてみたいと言っています。


調べる本も、最初は絵本や図鑑から始まったのですが、あまり詳しいことが書かれていないため、恐竜学者が書いた恐竜学の入門書を紹介しました。なかなかの難易度です。


しかしそれを読んで、自分で疑問に思ったテーマについて1枚の紙にまとめ、簡潔に説明することもあっさりやってしまう。本当に子供たちの能力はすごいと感じています。


よく、そのようなことをしていて「学校の勉強は大丈夫でしょうか?」というご質問をいただきます。


でも、恐竜学の入門書を読めるようになれば、中学の教科書も、読んでまとめることができるわけです。実際に、中1の子たちはさらっと教科書をまとめてテスト勉強をしています。


また、最近の高校入試の問題は長文化しています。さらに県立の難関高に課せられる特色検査では、さまざまなテーマの長文を読みこなす必要があります。図表がたくさん入っている恐竜学の入門書を読むことは、その対策にもなります。


そもそも学ぶ姿勢や基本的な学ぶ力が身についていれば、ガツガツ問題集を解くのは中学からでも十分間に合うと思うのです。


一人一人の興味に合わせていろいろな本を読んでおかないといけないため、準備はなかなか大変です。一律ではない探究的な学びの可能性を試行錯誤しながら私自身探究している感じです。


でもこれは私の生涯を通じてやりたいテーマとも一致しており、とても楽しく充実した取り組みです。一人でも多くの子が、目的意識をもって自分の勉強に取り組めるようになってもらえたらと思います。



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