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思春期の中学生:覚醒に必要な条件?!

反抗? わがまま?


思春期のお子さんから「やっぱり勉強は嫌いだ。やる気起きない。なんでこんなことやらないといけないの?」などと言われることはありませんか?


私も塾をやっているので、毎年毎年、常に子供たちから突きつけられる質問の1つです。


そして、うちの子も中2になり、御多分に洩れず「勉強なんて、なんでやらないといけないんだー!」とブツブツ言うような年齢になりました。「やりたくないならやらなくてもいいんじゃない?」と言うと「でも入試があるし。いい点数は取りたいし。」などといいながらも、テスト前なのに家の中をあっちをうろうろ、こっちをうろうろ。嫌だけど少しはやるか、なんて少し机に座ったと思えば、寝てしまったり。


我々はこのような状態の子供達に、どのように接するのがいいのでしょうか?


実は私も、勉強のメリットをいろいろ考えては話して、なんとか説得しようとしていました。しかし、子供達はなかなかすんなり納得しないものです。


これに対するヒントは、応用神経科学者の青砥瑞人先生から得ました。



葛藤という名の蛹状態


「葛藤」という高次脳機能があります。


私たちの脳にはさまざまな経験や知識から善悪や最善の策についての判断を瞬時に行えるようになっています。


そこで、「自分が大切にしていること」や「やってきたこと」と一致しているのかを常にモニタリングしています。


違和感を感じるような情報を得ると、「感情的にはこっちだけど、頭がついていかない。」「頭ではわかっても、感情がついていかない。」という葛藤状態に陥るわけです。


しかし、このような葛藤の状態が生まれるのは、その対象に興味があるからだというのです。どうでもいいことに対しては、葛藤状態にならないというのですね。


子供達は、もし本当に勉強など必要ないと決めているなら、「なんで勉強しなきゃいけないの?」などと問わず、ただ飄々と低い点数に甘んじているはずです。でもしなければならないと感じているから葛藤をしているのですね。


興味があるから葛藤しているんだ、葛藤の中でなんとか自分の解を見つけようとしてもがいてるんだ、と思ったら「同志だな」と微笑ましく、愛おしく感じたのです。



葛藤を超えて覚醒が始まる


うちの塾では、宿題も出さず、無理やり勉強もさせず、少ない拘束時間で、本人の自立をうながすスタイルでやっています。


にもかかわらず、1年で内申を8つも上げる子は毎年いますし、周囲からは絶対に受からないと言われる格上の高校にチャレンジして、大逆転で第一志望に受かる子たちがたびたび出てきます。どこもそんなものなのかもしれませんが、ある年などは4分の3の子が、内申点が大きく足りない中、逆転合格を果たしたので、さすがにびっくりしました。明らかに覚醒が起こったとしかいえないような状況です。


そして、思い返せば「塾長、なんで勉強なんかしないといけないの?」「英語なんてこの世からなくなればいいのに。」なんてブツブツ言っていた子ほど、そういう覚醒が起こりやすいのではないかと感じるのです。つまり葛藤を乗り越えて自分なりの意志を決めて取り組んだことが、大きな成長につながったのではないかということです。


さらにいえば、これは、葛藤の中で意思決定をする練習でもあるわけです。


大人になったら葛藤のない仕事などありません。葛藤状態の中で意思決定をする練習をたくさん積んでいないと、自分では何もできなくなるかもしれません。



子供達は何を求めているのか?


こういった葛藤状態の時、子供達は何を求めているのでしょうか? 我々は何をしてあげられるのでしょうか?


個々の性格にもよるので、一概にはいえないと思いますが、私の考えでは以下の通りです。


それは、「そんな大変な状態にいる、ということをわかってほしい」ということではないかと思います。


なぜそう思うかというと、塾に来るなり「塾長聞いてよ〜。今日さぁ〜」なんて話してくることがたびたびあるためです。


葛藤の中、解決策も見つからず、もがき続けるのは大人でもしんどいものです。


そんな状態で頑張っていることを(無意識に)わかって欲しいのだろうと思います。


もちろん、表に出てくる表現は、そんなわかりやすいものではないため、反抗をしているように見えたり、単にわがままを言っているだけのように感じるかもしれません。


しかし、単にわがままを言ってるのでもなく、本当に勉強をしなくてもいいと思っているわけでもなく、「これでも大変な中もがいているんだ。」ということを訴えているのかもしれません。



我々大人ができること


そのようなことがわかってくると、我々大人ができることが見えてきます。


解答を与えたり、葛藤の経験をうばう方向でないことは間違いありません。


私としては3つあると考えます。


1つ目は、「会話に付き合う」ということです。


「そっか、勉強したくないんだ。どうしてそう思ったの?」など理由を聞いたり、「お母さんもやらなければいけないからやったけど、勉強は嫌いだったなぁ。」などと共感してもいいかもしれません。母性的なアプローチですね。


「余計なこと考えず勉強しなさい。」と言いたくなりますが、これはある意味会話をシャットアウトする行為でもあります。子供達からすると「自分で考えるのではなく、思考停止して、権威に従いなさい。」というメッセージに聞こえるわけです。


子供達も、頭ではわかっているけど、感情がついてこないから文句を言うわけです。行き場のない感情を満たしてあげるために、会話をするというのは大切なことかもしれません。


2つ目は、大人しか持っていない判断材料となる情報を冷静に伝える、ということです。


勉強しなければならない理由はたくさんあります。でも、納得できる情報は一人一人違うものです。


「お父さんはこういう時勉強しておいてよかったと思ったな」というのを(イライラや怒りの感情を交えずに)伝える、ということです。処世術を子供に継承するのは主に父性(お母さんにも父性はあります)の役目ですよね。


葛藤状態の経験をうばわないよう、過保護にならないよう、あくまで子供達が知り得ないことを、感情を交えず情報として伝えるだけがいいと思います。どうしても感情的になってしまうものなので、大人にしかできない難しいことなのですが。


葛藤の中で、自分を納得させるために必要な情報なので、すぐに納得しなくてもいいと思います。逆に、勉強する必要がない理由もあれば伝えてもいいかもしれません。先生や親戚のおじさん、友達からの情報など、さまざまな情報をふまえて自分の道を見つけられるといいのでしょう。


そして「判断するのは君だよ。」という形にするのは、自発的な行動を支援するのと同時に、子供達から見てフェアに感じるだろうと思います。


そして3つ目は、「その子を信じて成長を楽しむ。」ということです。精神論に聞こえるかもしれませんが、心理学的には多くの研究で証明されています。


大人ですら渦中にいるのが大変な「葛藤」を乗り越え、自分で決意し、迷いのない強い眼をもって孤独な受験勉強に挑む。我が子のそういう姿を想像したら、目頭が熱くなるのではないでしょうか?


うちも夫婦でよく話すのですが、中学生(特に中2)って大変だと思っていたけど、案外おもしろい時期かもしれません。


もう2度と訪れない思春期のこの時期を一緒に楽しんでいけたらいいですね。



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