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過度な計算練習が思考力を邪魔することがある?!

小学生の時は80点とか90点とかそこそこできていたのに、中学でつまづく子が一定数います。


一般には、小学校の内容が理解できていないからとか、計算が苦手だからとか、いろいろ言われています。


それで、「もっとたくさん繰り返し計算練習をしなさい」という指導をするケースも多いでしょう。もちろんこれが当てはまる場合もあります。


でも、小学校の内容が理解できていないからでも、計算ができないからでもないのに、理解できないということがあるのですね。


例えば中学で学ぶ文字式「x円の3割引は?」のような問題がよくわからないというケースです。


でも「300円の3割引は?」という問題はさっと暗算でできるのです。むしろ計算は早いわけです。具体的な数字だとできる。


x円の3割だから、3/10で、それをx円にかけるから、0.3x

それをもとのx円から引くから、xー0.3x=(1ー0.3)x=0.7x


割合の概念や仕組みの理解があいまいで、この一つ一つのステップがあやしいのですね。


つまり、反射的に計算しているので、どのような計算方法で解いたかに気づかなくなっているのです。


このようなタイプの子は、パターン演習に強く、たくさん演習をすればテストでは点数が取れることもあるのですが、数学の背景にある概念や仕組みが理解できておらず、ちょっと心配なところがあります。


社会に出てから使えないだけではありません。受験でパターンと違う問題が出たらお手上げになるかもしれないためです。難関大学をねらうならなおさらでしょう。


この場合、「3割引とあったら、0.7をかけるんだよ。」と、できるパターンを増やす方向で指導しても、さらに別のパターンが出たら手が出ないという点では同じです。


できるパターンを増やすアプローチは、ある意味たくさん手を動かして、すべてのパターンを暗記するというアプローチです。あまり深く考えず取り組めるので、合っている子もいるかもしれません。でも、初見の問題にも取り組める思考力をつけるためには、邪魔になることがあると思うのです。


さらに、すべてのパターンを覚えるには膨大な時間が必要です。子供たちが本来経験すべきことの中で、何か大切な時間を失うことになるのではないでしょうか。


中学以降は、文章問題や関数と図形の融合問題など、思考力が必要な問題が出るようになります。神奈川県立の入試問題でも、複数分野にわたる問題が出ています。それは2020年以降の教育制度改革により、さらに進むでしょう。傾向が変われば、初めて見るような問題も多くなります。


過去の傾向を分析して対策をとる、というやり方が厳しいのは、なにも受験だけではありません。社会では、特に変化の激しい時代においてはパターン認識が通用しないためです。


そのため、私は仕組みを理解し「ゆっくり考える」ということが大切と考えています。


ここでいう「ゆっくり」というのは、「長い時間をかけて」という意味ではなく、背景にある仕組みを一つ一つおさえ、解き方を自分で考える練習をする、という意味です。既知の情報から未知の情報にアプローチするやり方ともいえます。


「本質を知り、その活用力、応用力をつける」


それが最も勉強の効率化につながると考えています。


そして、きちんと仕組みを理解した上で、すばやく解くための演習をするといいでしょう。


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